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「あの服、8000円でお願いできる?」ママ友から貰ったはずの服。後日、突然の請求が届いた結果

  • 2026.7.29

寝かしつけのあとに届いた一行

子どもを寝かしつけたあと、スマートフォンが震えた。近所に住むママ友からだった。

「この前の服のことなんだけど」

次の一行を読んで、指が止まった。

「あの服、8000円でお願いできる?」

紙袋を渡されたのは、数日前のことだ。

公園で毎日のように顔を合わせる相手で、上着のお下がりをもらったこともあった。

だからその日も、同じ話だと思って玄関で袋を受け取った。

「子どもの服、間違えて違うサイズで買っちゃって」

「よかったら、もらってくれない?」

もらってくれない、という言い方だった。

使ってくれるなら譲る、という意味に受け取った。

「ありがとう、使わせてもらうね」

中身は、タグのついた長袖の上下だった。

丈を合わせてみて、来週から着せようと思っていた矢先だった。

その紙袋に、あとから値段がついた。

8000円は、店に並んでいる値札とほとんど変わらない。

買い取ってほしいと先に言われていれば、何も思わなかった。

ほしければ買ったし、要らなければその場で断っていた。

順番が入れ替わっただけで、返事の仕方が分からなくなる。

玄関先で止まった相手の指先

その晩、棚から紙袋を下ろした。

服は一度も着せていない。タグも、留めてある糸もそのままだった。

畳み直して袋に戻し、口を折って玄関に置いた。

翌朝、登園の前に相手の家のインターホンを押した。

「おはようございます。これ、お返しに来ました」

「え、なんで」

「買い取りだと分かっていたら、受け取らなかったので」

それだけ伝えて、袋を差し出した。相手は受け取ったまま、手を止めた。

「いや、そういうつもりじゃ」

「タグ、ついたままです」

中を確かめる指先が、途中で動かなくなった。

言いかけた言葉を飲み込んで、視線が袋に落ちる。

「……そうだね。こっちの言い方が悪かった」

玄関の内側から、子どもを呼ぶ声がした。

相手は袋を胸に抱えたまま、ドアを半分閉じかけて動きを止めていた。

私はうなずいただけで、責める言葉は足さなかった。

子どもの手を引いて、そのまま園へ歩き出した。

それ以来、曖昧な頼まれ方をされることはなくなった。

数か月後、公園で似た紙袋を差し出された。

「またサイズ間違えちゃって。買い取らない?」

条件が先に置かれていた。それなら、考えることは何もない。

「じゃあ、買いますね」

相手は少しだけ目を伏せ、それから小さくうなずいた。

紙袋はその場で受け取った。曖昧なままもらうより、値段を聞いてから決めるほうが、ずっと気楽だった。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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