1. トップ
  2. エピソード
  3. 「大丈夫だから遊んどいで」子供が泣いても話に夢中だった母親。だが、ベンチにいた私が動いた瞬間

「大丈夫だから遊んどいで」子供が泣いても話に夢中だった母親。だが、ベンチにいた私が動いた瞬間

  • 2026.7.30
「大丈夫だから遊んどいで」子供が泣いても話に夢中だった母親。だが、ベンチにいた私が動いた瞬間

砂場の前のベンチで

昼を少し過ぎたころ、私は近所の公園のベンチで昼食を取っていました。

紙袋から出したサンドイッチと、買ったばかりのコーヒー。目の前の砂場では、3人の子どもたちが遊んでいます。

バケツに砂を詰めてはひっくり返し、いくつもの山を作っていました。

「もっと大きいの作ろう」

「こっちも掘っていい?」

楽しそうな声が聞こえてきます。

砂場から少し離れたところには、子どもたちの母親らしい女性が2人立っていました。

一人が身振りを交えて話し、もう一人が何度も笑っています。会話が弾んでいるようで、砂場を見る様子はありませんでした。

「大丈夫だから遊んどいで」

そのとき、一人の子どもがスコップですくった砂を勢いよく持ち上げました。

砂は山ではなく、隣にいた子どもの顔にかかってしまいます。

「痛い!」

砂をかけられた子どもは顔を押さえ、その場で泣き出しました。

泣き声を聞いた母親たちは、一度だけ砂場を振り返ります。

子どもは目をこすりながら立ち上がり、母親のもとへ駆けていきました。

「ママ、目が痛い……」

ところが母親は、子どもの顔をよく確認しないまま答えました。

「ちょっと砂がかかっただけでしょ?大丈夫だから遊んどいで」

背中を軽く押し、砂場のほうへ戻します。

「それでね、さっきの話なんだけど……」

母親はすぐに友人との会話を再開しました。

戻された子どもは砂場の縁に座り込みました。ほかの子どもたちが遊びを再開するなか、一人だけ目を押さえたままです。

何度もまばたきをしていますが、片方の目をうまく開けられないようでした。

私が立ち上がると

しばらく様子を見ていましたが、子どもはまだ泣いていました。

砂のついた手で目をこすろうとしているのも気になります。

私はサンドイッチを紙袋に戻し、ベンチから立ち上がりました。

そのまま子どものそばまで行き、少し離れた場所から声をかけます。

「目に砂が入ったの?」

子どもは片目を閉じたまま、こくりとうなずきました。

「手でこすらないほうがいいよ。お母さんを呼ぼうか」

私が母親のほうを振り返った瞬間、ようやくこちらの様子に気づいたようでした。

母親は会話を止め、慌てて駆け寄ってきます。

「どうしました?」

「目に砂が入ったみたいです。さっきから片方の目を開けられず、ずっとこすろうとしていたので」

その言葉を聞き、母親は初めて子どもの顔を正面からのぞき込みました。

「本当だ。目、開けられないの?」

子どもは泣きながら首を横に振ります。

先ほどまで一緒に話していた母親も、すぐ近くの水道を指さしました。

「水で流したほうがいいんじゃない?」

 

母親は子どもの手を取り、公園の水道へ連れていきました。

目をこすらせないようにしながら、きれいな水で砂を流します。

しばらくすると、子どもはゆっくり目を開けられるようになりました。

「もう痛くない?」

母親が尋ねると、子どもは涙を拭きながらうなずきます。

母親はほっとした表情を浮かべたあと、私のほうを向きました。

「ありがとうございました。大したことないって決めつけて、ちゃんと顔を見ていませんでした」

私は首を横に振りました。

「ずっと目をこすっていたので、少し気になっただけです」

母親は子どもの頭をなでながら、静かに言いました。

「痛かったね。ちゃんと見なくてごめんね」

子どもたちはその後、再び砂場で遊び始めました。

しかし母親2人は、先ほどまでいた離れた場所には戻りませんでした。砂場の縁に腰を下ろし、子どもたちの様子を見守っています。

私はベンチに戻り、紙袋からサンドイッチを取り出しました。

その横に置いていたコーヒーは、すっかりぬるくなっていました。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

元記事で読む
の記事をもっとみる

注目コンテンツ