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38歳男性「何かの間違いじゃ…」給料明細を見ると手取りが激減→急いで会社に確認すると…突きつけられた“15年前のツケ”

  • 2026.8.19
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。アディーレ法律事務所の弁護士・正木です。

「借金の時効は5年」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。

インターネットで「借金 時効」と検索すると、「借金は原則5年で時効になる」といった情報も出てきますが、単純に考えるのは危険です。今回は、「もう5年以上たっているから大丈夫」と思い込み、裁判を放置した結果、給与を差し押さえられてしまったケースをご紹介します。

社会人になれば、何とかなる

男性会社員のAさん(仮名)は、22歳の春、就職をきっかけに上京しました。初めての一人暮らし。新しいスーツやビジネスバッグ、家具や家電、敷金、礼金、引っ越し代……。学生時代には使ったことのないようなまとまったお金が、次々と出ていきました。貯金は、あっという間になくなりました。

それでもAさんは、「社会人になったんだから、給料が入れば何とかなる」と考えていました。

ところが2年目になると、仕事は忙しくなり、帰宅は毎晩遅くなりました。食事はコンビニや外食。友人との付き合いも増えました。さらに住民税の負担も始まり、思っていたほど手取りは増えません。

そんなとき、スマートフォンに消費者金融の広告が表示されました。
「初めての方でも簡単申込み」
Aさんは少し迷いました。

「10万円くらいなら大丈夫。毎月少しずつ返せばいい」
そう考え、10万円を借りました。それが借金の始まりでした。

「今月だけ」が100万円に

最初は10万円だけのつもりでした。ところが、その後も仕事の付き合い、友人の結婚式、旅行、交際費など、予定外の出費が続きます。

「今月だけ」「ボーナスが出れば返せる」「給料が上がれば大丈夫」
そう自分に言い聞かせ、少しずつ借金を増やしました。気がつけば、借金は100万円近くに膨らんでいました。そして、ついに返済できなくなりました。

最初は、電話や郵便が来るたびに不安になりました。しかし、次第に「今は払えない。来月なら何とかなる」と先延ばしするようになり、電話には出ず、郵便も開けなくなりました。やがて、封筒を見るだけで嫌な気持ちになり、そのまま捨てるようになりました。

5年以上たっているから時効だろう

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

それから6年が過ぎました。Aさんは仕事も安定し、交際相手との結婚を考えるようになっていました。

そんなある日、自宅の郵便受けに、裁判所から一通の封筒が届きました。
「……裁判所?」
嫌な予感がしました。封筒を開けると、昔の借金の返済を求める「訴状」という書類が入っています。

Aさんは不安になり、「借金 時効」と検索しました。すると、「借金は原則5年で時効になる」という説明が目に入りました。
「やっぱりそうだ。5年以上たっている。だから、もう時効だ」
そう思ったAさんは、書類を詳しく確認しないまま、捨ててしまいました。「今さら昔の借金なんて、もう終わった話だ」そう思ったのです。

その後も何度か裁判所からの封筒がAさん宛に届きましたが、だんだんと感覚が麻痺してきたAさんは、中身も確認せずに封筒を捨ててしまうようになりました。

そして、突然の給与差押え

さらに9年経ったある日、給料明細を見たAさんは、いつもより手取り額が少ないことに気付きました。
「何かの間違いじゃ…」
そう思って会社に確認したところ、裁判所から給与の差押命令が届いていることを知らされたのです。Aさんは頭が真っ白になりました。

「でも、それは昔の借金ですよ。もう時効になっているはずです」
そう言うAさんに、担当者は答えました。
「私たちでは判断できません。裁判所からの命令ですから」
子どもが生まれ、これからお金が必要になるタイミングで、突然の給与差押え。Aさんは慌てて弁護士に相談しました。

確定判決が出ています

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

「15年以上前の借金で、5年以上返済もしていなかったんですが…ネットにも『借金は5年で時効』と書いてありました。どうして今さら差押えなんですか?」

弁護士が調べたところ、驚くべき事実が分かりました。以前Aさんが訴状を捨ててしまった消費者金融が起こした裁判では、Aさんに借金の返済を命じる確定判決が出ていたのです。

弁護士の言葉は意外なものでした。

「確かに、消費者金融からの借金なので、一般には、最後に返済した日や約束の返済期日の翌日から5年が経過すると消滅時効にかかりますが、状況によって時効を数え始めるスタート時点(起算点)は変わります。

また、確定判決によって確定した権利については、それまでの時効期間がリセットされ、ゼロから再スタートになります。しかも、時効期間は10年間に延びるのですが、Aさんの場合、判決が確定してから10年経っていないので、借金の時効が完成していません。

でも、Aさんは、『返済しなくなってから5年以上たった』という事実だけを見て、時効だと思い込んでいた。
さらに、消滅時効は、期間が経過すれば自動的に裁判所が『支払わなくてよい』と判断してくれるものでもありません。時効の利益を受けるためには、『援用』といって、時効にかかっているから払わないと自分で主張することが必要だったんです。」

あの封筒を捨てなければ……

結局、Aさんの借金は消えませんでした。今も給料の一部を差し押さえられながら、残った借金の返済を続けています。今回のことを知った妻からは「知っていたら結婚しなかった」と言われてしまったそうです。

Aさんにとって一番の失敗は、「昔の借金だから、もう時効だろう」と決めつけ、裁判所から届いた書類を確認せず、弁護士への相談もしなかったことでした。

借金について突然請求が来たときは、いつ借りたのか、その後どのようなやり取りがあったのか、裁判を起こされていないか、確定判決や支払督促などが出ていないか、そして届いた書類は何なのかを確認すること、そして、正しい事実関係に基づいて専門家の判断を仰ぐことが、Aさんの失敗から学ぶ、消滅時効をめぐる大切なポイントなのです。


※実際の事例を参考に構成したストーリーです。

執筆・監修:弁護士 正木 裕美(アディーレ法律事務所)
南山大学法学部、及び同大法科大学院卒。一児のシングルマザーとしての経験を活かし、不倫問題やDV、離婚などの男女問題に精通。テレビの情報番組などにもコメンテーターや法律解説者として多く出演し、悩みを抱えた方に寄り添いながら、難しい法律もわかりやすく的確に解説することに定評がある。愛知県弁護士会所属。

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