1. トップ
  2. ビジネス・マネー
  3. 父の死後“6,000万円”を相続した50代兄妹→兄「遺留分の一部はいずれ渡す」口約束するが…1年後、妹を直撃した“予想外の事実”

父の死後“6,000万円”を相続した50代兄妹→兄「遺留分の一部はいずれ渡す」口約束するが…1年後、妹を直撃した“予想外の事実”

  • 2026.9.14
undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。金融機関勤務のおがわ163です。20年間、金融機関の窓口で資産運用や家計相談に携わってきた経験をもとに、お金にまつわるリアルなエピソードをお届けしています。

今回ご紹介するのは、父の遺言でほぼすべての遺産を兄が相続することになった50代女性Aさんの体験談です。兄との口約束を頼りに手続きを後回しにしていたAさんが、あとになって知った1年という重みとは。

「うちは長男がすべて継ぐもの」という父の考えと、兄との口約束

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

Aさんは52歳、会社員として長く働いています。夫と二人暮らしで、子供はいません。母は健在です。

自営業を営んでいた父は、昔ながらの考えの持ち主で、「うちは長男がすべて継ぐもの」というのが口ぐせでした。実際に家業を手伝っていたのは主に兄でしたが、繁忙期には年に2〜3回、Aさん夫婦も仕事を休んで手伝いに入っていました。

父が亡くなり、遺言書が見つかりました。中身は、遺産のほとんどを兄が相続するという内容でした。遺産総額はおよそ6,000万円。相続人は母と兄、Aさんの3人で、法定相続分は母が2分の1、兄とAさんがそれぞれ4分の1ずつです。遺留分はこの法定相続分の半分にあたるため、Aさんの遺留分は8分の1、金額にすると750万円ほどになる計算でした。

「今の時代は、家を継ぐ人がすべてもらう考え方じゃない。きょうだいで分け合うのが普通だと分かってはいたのですが、父に直接それを言うことはできませんでした」

遺言の内容を知ったあと、Aさんは兄に相談しました。幸い、兄妹の仲は良好で、兄からは「遺留分に相当する分の一部は、いずれ渡すよ」という口約束を得ることができました。

納得できないまま、月日が過ぎていった

「兄がそう言ってくれているから」と、Aさんは安心し、正式な手続きは後回しにしていました。夫婦とも仕事が忙しく、父を亡くした心の整理がつかないまま、日々に追われていたこともありました。

遺留分侵害額請求は、内容証明郵便などで正式に意思表示をする必要があります。しかしAさんは、兄との会話で気持ちが伝わっていると思い込み、書面での請求をしないまま時間だけが過ぎていきました。

「そのうち落ち着いたら、きちんと手続きしよう。そう思っているうちに、1年なんてあっという間でした」

気づけば1年、遺留分の請求権はすでに消えていた

undefined
出典元:photoAC(※画像はイメージです)

1年ほど経ったころ、Aさんは資産運用の相談で窓口を訪れ、この話を担当者にしました。ところが、思いがけない事実を知ることになります。

遺留分侵害額請求権には、相続の開始と、遺留分を侵害する遺言があったことを知った時から1年という時効があり、この期間内に請求の意思表示をしなければ、権利そのものが消滅してしまうというのです。Aさんの場合、すでにその1年を過ぎていました。

「兄との口約束はあっても、法律上の請求権はもう消えてしまっている、ということですね」とAさんは肩を落としました。

それでも兄妹の関係は良好だったため、その後兄から「約束していた分」として750万円が振り込まれました。ただし、これは法律上「遺留分の精算」ではなく、単なる兄から妹への贈与として扱われることになります。

担当者からは、贈与税の申告が必要になる可能性が高いこと、そして一般的に、こうしたケースでは贈与税のほうが相続税よりもかなり高くなる可能性があるので、ご自身でも金額を確認しておいたほうがよいとの案内がありました。

銀行を後にしたAさんは、家に帰ってから相続税と贈与税の速算表をインターネットで調べてみました。基礎控除110万円を差し引いた640万円に、きょうだい間の贈与に適用される税率を当てはめると、130万円ほどの贈与税がかかりそうだと分かりました。

一方、もし正式な遺留分侵害額請求として750万円を受け取っていた場合、相続税として計算すると15万円ほどで済んでいた可能性が高いことも分かりました。同じ750万円でも、受け取り方によって税負担が大きく変わることに、Aさんは言葉を失いました。

1年の時効を意識し、正当な手続きで権利を守る

「正式に請求していれば、もっと少ない税金で済んでいたはずなのに。1年で請求権が消えることも、その後の税金のことも、何も知りませんでした」とAさんは振り返ります。

遺留分侵害額請求は侵害を知った時から1年で時効消滅するため、口約束に頼らず内容証明郵便などで期限内に正式な意思表示を行うことが重要です。

時効成立後に相手から支払われたお金は、法律上「遺留分の精算」ではなく単なる「贈与」と判定され、想定外の重い贈与税が課されるリスクがあります。実際の税額は財産構成や相続人の状況により異なりますが、事前の手続き漏れが税負担の増大を招く点には注意が必要です。

不公平な遺言に納得がいかない際は放置せず、早めに弁護士や税理士などの専門家へ相談し、期限内に正しい手順を踏んで大切な資産と権利を守りましょう。


参考:
民法(相続法)改正 遺言書保管法の制定|法務省

執筆:おがわ163
金融機関勤務(勤続20年)。2級ファイナンシャル・プランニング技能士。窓口業務・資産運用相談の現場経験をもとに、生活に役立つお金の知識をわかりやすくお届けしています。

の記事をもっとみる

注目コンテンツ