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「生姜焼き、二人分で頼む」妻の分だけ注文を忘れた夫。だが、義父が店員を呼び戻すと顔面蒼白に

  • 2026.7.26

誘われた食事の席で

義父が「近くに旨い定食屋があるんだ」と、私たち夫婦をわざわざ誘ってくれた休日のことだ。

「お義父さん、今日はごちそうさまです」

私が礼を言うと、義父は照れたように手を振った。

夫も上機嫌で、義父の隣に座って昔話に花を咲かせている。

「親父の奢りなんて久しぶりだな」と夫は笑い、義父も満更でもない顔だ。

ここまでは、気持ちのいい席になるはずだった。

注文を決めるとき、夫が「俺がまとめて頼むよ」と店員を呼んだ。

「生姜焼き、二人分で頼む」

私の分はなかった。

「あなた、私は?」

思わず声が漏れたが、夫は「ん? ああ、後で頼めば」と気にも留めない。

後で、という一言に、私は小さく唇を噛んだ。

招いてくれた義父の手前、この場で騒ぐわけにもいかない。

義父が店員を呼び戻すと

ところが、それを聞いていた義父の表情が変わった。

下がろうとする店員を、義父がすかさず呼び止める。

「待って。生姜焼きをもう一皿、この子の分だ」

それから夫に、低い声で言った。

「自分のビールは忘れんのに、女房の飯は忘れるのか」

夫の顔が、みるみる青ざめていった。

「い、いや、わざとじゃ……」

「わざとじゃないから、なお悪い」。

義父はぴしゃりと遮った。夫は口を開きかけ、言葉が出ずに、そのまま顔面蒼白でうつむいた。

店員も気まずそうに「生姜焼き、追加で承りました」と小さく頭を下げる。

義父は私に向き直り、穏やかに言った。

「気が利かなくて、すまなかったね」

「いえ、お義父さんが言ってくださって、救われました」

謝るべきは私ではない。そう思ったから、卑屈にならず、はっきりとそう返した。

義父は満足そうにうなずくと、私のお茶が空なのを先に気にかけ、店員におかわりを頼んでくれた。

やがて三人分の生姜焼きが並ぶと、義父は「さあ食べよう」と場を和ませた。

食事のあいだ、義父はもう一度だけ、静かに言い添えた。

「間違えるなよ」

夫は「以後、気をつけます」と首をすくめる。

叱られてしょげる背中に、私は少しだけ溜飲を下げた。

あの日から、夫は外で頼むとき、必ず私の分を最初に告げるようになった。義父の前で青くなった顔を、もう二度と見せたくないのだろう。

先日は「お前、ビールいる?」と、私にまで聞いてきた。

忘れられていた席が、いちばん先に呼ばれる席に変わっていた。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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