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デートで「いい店知ってるね」と言われたいZ世代男子に捧ぐ。創業129年、神田の鳥すき焼き名店『ぼたん』が超おすすめな理由

  • 2026.7.25

正直に言うと、いい歳になってくると店選びが難しい。

チェーン店だとなんとなく軽いし、かといって気取ったフレンチも肩がこる。相手にも喜んでほしいけど、こっちも背伸びしすぎたくない。そんな「ちょうどいい店ないかな」と思っている人に、神田・淡路町の「ぼたん」はかなりおすすめだ。鳥すき焼きの老舗で、味だけでなく、そこで体験できる食事が最高なのだ。

まず、神田って街がいい

神田は歩くと不思議な街だ。ビルとオフィスの合間に、ふと江戸や明治の名残が顔を出す。少し歩けば、1300年の歴史を持つ神田明神。朱塗りの社殿がビル街の中に堂々と建っている

その鳥居の横には、江戸時代からの甘酒屋「天野屋」。弘化3年、1846年の創業で、地下6メートルの糀室で今も甘酒を仕込んでいるらしい。

店内には夏を感じる風鈴もたくさん飾られている。

淡路町・須田町のあたりは戦火を免れた一角で、揚げまんじゅうで有名な甘味処「竹むら」なんかも、昔ながらの佇まいのまま残っている。

つまり、待ち合わせて少し散歩するだけで画になる街なのだ。デートの前後にちょっと歩くにはもってこい。そんな街にあって、今日の本命はその中の一軒、「ぼたん」だ

路地の奥に、白い提灯

駅を出て大通りから細い道に一本入る。そうすると、いきなり空気が変わる。

木造の建物、簾のかかった窓、塀の奥に坪庭……路地の突き当たりに白い提灯が灯っていて、「ぼたん」と書いてある。明治30年、1897年創業の鳥すき焼き屋。現在五代目で、129年続いているらしい。この時点で、連れがいたら確実に「ここ、何?」となるやつだ。掴みは完璧。

日本の様式をお腹いっぱいに感じる外観。「ぼたん」という店名もきっと花由来に違いない…!

入る前に名前の由来を知って、ちょっと笑った。

牡丹の花か、猪の牡丹鍋あたりを想像してたら、全然違った。初代がもともと洋服のボタンを扱う問屋出身で、当時ボタンは舶来のハイカラなアイテム。それをそのまま店名にしたらしい。ボタン屋が鳥すき焼き屋になる。不思議な発想だが、明治などの近代初期にありそうなお話で、逸話としても非常に気に入った。

ついでに言うと、この店はいまだにガスを使ってない。備長炭と鉄鍋だけで100年以上。今どきそれを貫いているだけですごい。建物も関東大震災のあと昭和4年に建て直したもので、東京都の歴史的建造物になっている

中に入ると、光まで違った

引き戸を開けて靴を預ける。それだけでもう別世界。

飴色の廊下、丸い意匠の障子、その奥に坪庭。神田という立地だけではない、日本のどこを探しても、日本の雰囲気を感じられる数少ない場所で、本当に明治時代でもこのようにみんな食事を楽しんでいたのかと思わせるほどだった。

いよいよ鳥すき焼き

まず食材が運ばれてきて、これがまたキレイだった。

その日の朝にさばいたという鶏肉が、モモ、ムネ、砂肝、ハツ、レバーと部位ごとにどっさり。隣にピンクのつくね、焼き目のついた豆腐、白滝、葱。あと、小さい器がふたつあって、食べるときにくぐらせる用の卵と2種類の割り下の用意をしてくれる。それぞれ濃口と薄口で別れており、好みで味の濃さを変えられるのも素敵なおもてなしだ。

火鉢に鉄鍋がのって、葱、豆腐、白滝、鳥肉が並べられていく。

炭火であぶられて割り下がふつふつとしてくると、甘辛い匂いと炭の香りが混ざって立ちのぼってくる。この時点で正直もう限界で、お店の雰囲気を楽しむのをそっちのけで鍋をのぞき込んでいた。

肝心の味はというと……最初の一切れはモモにした。炭火でじっくり火が入ったモモ肉、噛むとむっちりしていて、旨みがじわっと出てくる。煮込んでいるのに硬くならないのが不思議。砂肝はコリコリ、レバーは臭みがなくてねっとり濃厚。同じ鶏なのに、部位で全然違う料理のようだった。個人的に一番よかったのはつくねで、ふわっとしていて鳥の甘みが強い。

葱は火が通るととろとろに甘くなるし、豆腐は割り下を吸ってじゅわっと崩れる。そして、溶き卵にくぐらせた肉を食べた瞬間がピークだった。甘い割り下と濃厚な黄身と炭の香りの肉が全部一緒になって、思わず声が出た。「うまい」、しか言えなくなる。

〆の親子丼がずるい

もう満足、と思ったところに真打ちが来る。

鍋に残った割り下に卵を溶き入れて、半熟の親子丼にしてごはんにのせてくれる。

濃いめのたれが沁みたごはん、とろとろの半熟卵、そこに三つ葉の香り。ずるい。ここまでの鳥すきの旨みが全部この一杯に集まっている。足りないと思ったら、卵と鶏肉もそれぞれ追加で頼むこともできるので安心だ。

ただでさえ、ご飯はお代わりが無料なので申し訳なさもあったが、おひつで3回ほど白米をもらってしまった……。

デザートには愛知県産のとんでもなく甘いミカンをいただけて、最後の最後まで美味すぎるという感想しか出ない時間だった。

デートに使えるだけじゃない、大切な日にこそおすすめ

デート視点で言うと、まず店の雰囲気で確実に「おっ」と思わせられる。鍋を一緒につつきながら昔ながらの日本の雰囲気を感じながら楽しめる、〆の親子丼まであってちゃんと満腹になる。派手さで殴るタイプじゃなくて、静かに「この人いい店知っているな」と思わせる方向の店だ。しかし、想像通りだが、ここは座敷だ。美味しさや雰囲気をとるなら最高におすすめだが、座敷を避ける女性も多いので気を付けてほしい。

30歳前後で、ちょっと背伸びをしたいけど無理はしたくない、けどお祝いや大事な日に美味しいご飯と特別感を味わいたいという人におすすめだ。

食べ終わって外に出たら、また普通のビル街だった。でも、神田という街は、こういう店が路地の奥にまだ残っていて、それがなんかいい。暑い日には帰りに天野屋で美味しいかき氷を食べて、神田明神に手を合わせて、ぼたんで鳥すきをつつく。そんな一日が普通にできる。淡路町でデートをするなら、覚えておいて損はない一軒です。

鳥すきやき ぼたん/東京都千代田区神田須田町1-15/淡路町駅・小川町駅から徒歩2分

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