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娘の好物を作るのをやめた私。あの子の何気ない一言が忘れられなくて

  • 2026.7.26
ハウコレ

冷凍庫の奥には、娘のために買った鶏もも肉が、封を切られないまま残っていました。あの子がまた帰ってきたくなる食卓にしたくて、慣れない料理もいくつも練習してきました。それでも、娘が大好きだった、いちばん出してあげたかった料理だけは、どうしても並べることができなかったのです。

娘の一言が、ずっと引っかかっていた

娘が1人暮らしを始めてから、帰ってくる日は必ずからあげを揚げてきました。生姜をきかせるのは、あの子が小さいころから好きだった味だからです。ある帰省のとき、娘が食卓を見て「お母さんの料理って、昔から変わらないよね。」と言いました。笑いながらの一言だとわかっていても、その言葉がなぜか忘れられませんでした。私の料理は古くて、あの子にはもう物足りないのかもしれない。そう思うと、いつもの皿を出すのがためらわれるようになったのです。

新しい料理をおぼえようとして

それからは、テレビやネットで見た手の込んだ料理を練習しました。あの子が帰ってきたくなるような食卓にしたかったのです。慣れない包丁の使い方に手間取りながら、私は必死でした。娘が話しかけてくれても、失敗しないように鍋から目を離せず、うまく顔を上げられませんでした。本当は、小さいころからあの子が好きだったからあげを出したい。でも、変わらないと言われた料理をまた並べる勇気が、どうしても出ませんでした。

思いがけない、あの子の言葉

その日も、私は新しく覚えた料理を娘の皿に取り分けていました。おいしいと言ってくれるのがうれしくて、それでも心のどこかは晴れませんでした。すると娘が、「お母さんのからあげ、また食べたいな。」と言いました。私は取り分けるのをやめました。てっきり、もうあの味には飽きたのだと思い込んでいました。「なんだ。作らないほうがいいのかと思ってた。」と、気づけばそう口にしていました。ずっと1人で決めつけて、あの子に聞くことすらしていなかったのだと、そのとき思い知りました。

そして...

あの封を切れなかった鶏もも肉は、次に娘が帰る日にからあげにするつもりです。隣で下ごしらえを教えてほしいと、娘は言ってくれました。同じ味を守り続けてもよかったのだと、今は思えるようになりました。

(60代女性・主婦)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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