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「見つかったよ、本当に助かりました」彼のボイスメッセージは、私宛のものではありませんでした

  • 2026.7.25
ハウコレ

彼が頻繁にやり取りしていた相手が誰なのか、私はずっと確かめきれずにいました。その日、彼が差し出した紙袋に入っていたのは、半年前に欠けたあのマグカップだったのです。

スマホから流れ出したのは、知らない店内のざわめきと、私宛ての用件が一言も入っていない彼の声でした。

誰に向けた言葉か、わからない

何度聞いても、彼が誰に向けて話しているのかわかりませんでした。残っているのは店の物音と、「見つかったよ、本当に助かりました」と弾んだ声を上げる彼の言葉だけ。

気になったのは、ここ半年の彼が、出かけ先を聞いても「ちょっと用事」とだけ返すことが増えていた点です。ボイスメッセージの向こうにあるものが、その用事の正体に思えて、彼がそのメッセージを取り消すまで、再生を止められないままでいました。

その声は、私に向いていなかった

もう1つ気がかりがありました。テーブルに置いた彼のスマホが短く震えるたび、彼は画面を下に向けていたのです。相手がだれか聞いても「仕事の知り合い」と返すだけで、誤魔化されるだけでした。

私と話すときよりずっと親しげなあのボイスメッセージと、こちらに見せたくないという彼の動きが結びついて、自分だけが蚊帳の外に置かれた気がしました。「さっき、なんか送った?」と送ってみると、返ってきたのは「ごめん、間違えた」の一言。聞きたいことはたくさんあるのに、確かめるのが怖くて、私はそこで質問を引っ込めました。

彼が差し出した紙袋

その日帰ってきた彼は、小さな紙袋を私に差し出しました。中から出てきたのは、ずっと前に欠けてしまい、もう手に入らないと諦めていたお気に入りのマグカップでした。

彼が洗い物のときに欠けさせてから、私が残念がっていたのを、彼は気にし続けていました。陶器に詳しい姉に頼んで、半年近く一緒に探していたのだと、彼はぽつりと打ち明けてくれました。お姉さんが見つけた店から品物を受け取った帰り道、彼はお礼のボイスメッセージを送りました。しかし、トーク履歴の1つ上にいた私へ誤送信してしまったそうです。スマホを伏せていた相手も、「ちょっと用事」の中身も、すべてお姉さんだったのです。

そして...

後から思えば、まっすぐ聞けばよかっただけのことでした。知らない誰かのためだと思い込んで、1人で不安を募らせていたのが、今は少し恥ずかしくもあります。次に彼が出かけるときは、遠回りに探らず、行き先をそのままたずねるつもりです。棚に戻ってきたマグカップに、2人分のコーヒーを注ぎました。

(20代女性・事務職)

本記事は、ハウコレ読者への独自アンケートに寄せられた実体験をもとに制作していますが、個人が特定されないよう、一部設定を変更しています。

(ハウコレ編集部)

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