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「これ、うちはもう使わないから」色鉛筆をくれたご近所さん。だが、挨拶に伺った日に見せた別の顔に絶句

  • 2026.7.24

玄関先で受け取った缶

引っ越して一月ほどたった頃です。同じ時期に越してきたお宅にうちと同じくらいの年の子がいて、家の前でよく一緒に遊ばせていました。

夕方、チャイムが鳴りました。長く住んでいる方が、缶を抱えて立っています。

どうぞお上がりくださいと言いかけたところで、首を振られました。

「玄関先でいいわ、これ、うちはもう使わないから」

缶の中は色鉛筆でした。使いかけですが本数は揃い、削り口も整えられています。

子どもたちが道の端にしゃがんでいるのを、その方は目を細めて見ていました。元気でいいわね、と言われて、私も同じほうを見ました。

「優しい方でよかったね」

夜、夫にそう話しました。缶は子どもが机に並べて、さっそく使っています。

食い違っている、という言葉

班長さんが来たのは、数日後です。回覧板を渡しながら、少し言いにくそうにしていました。

「あちらのお宅と、お話が食い違っているみたいで」

何がどう食い違っているのか、聞いても要領を得ません。ただ、一度ご挨拶に伺われたほうがいいと思います、とだけ何度も繰り返されました。

「うちが何か、しましたか」

班長さんは答えず、回覧板の受け取り欄を指さして帰っていきました。心当たりを探しても、思い当たるのは色鉛筆をいただいたことくらいです。

伺った日の声

菓子折りを持って伺ったのは、週の終わりです。出てきたのは、色鉛筆をくださった日と同じ穏やかな顔でした。

「何時ごろまで、外で遊んでるのかしら」

世間話のあいだに、そういう言葉が挟まりました。子どもの声って響くのよね、とも続きます。はっきりとは言われませんが、遊び声のことだと分かりました。

「ご迷惑になるほどだったとは思わず、申し訳ありませんでした」

頭を下げた、その途端です。

「じゃあ今まで、ずっと知らなかったのね」

声の高さが変わりました。穏やかだった目が動かなくなり、言葉が途切れずに出てきます。

私は下げた頭を上げるきっかけを失って、三和土の一点を見ていました。

何をどう詫びたのかは覚えていません。気がつくと戸が閉まっていて、菓子折りだけが手に残ります。

帰り道で思い出したのは、缶を渡されたときの、目を細めたあの顔です。あのときにはもう、何か思っていたのでしょうか。

子どもたちの声が大きかったのかどうかは、いまも分かりません。分からないまま、その方の家の前を通るときだけ、足が早くなります。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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