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【ルームツアー】家族をつなぐプロヴァンスの緑と記憶

  • 2026.7.22
Nicolas Matheus

南仏に立つ石造りの邸宅を、建築家のジャン&アルチュール・ボスク兄弟が再生。地産の素材と土地の記憶を生かし、一族の新しい拠点として過去と現在をつなぐ住まいへと生まれ変わった。

『エル・デコ』2026年6月号より。

Nicolas Matheus

私たち一族にとって、この家は新たな楽園との出合いそのものでした

フランス南部アルピーユ地方の中心部に立つこの石造りのバスティード(南仏の伝統的邸宅)は、建築家のジャン&アルチュール・ボスク兄弟によって再生された、大家族のための新たな拠点である。長らく放置されていたこの邸宅は、彼らにとって単なる改修の対象ではなく、「呼び覚ますべき過去」として目に映った。ジャンは語る。

<写真>カニス(アシの覆い)のひさしの下には、赤と白のゼリージュタイルによってギンガムチェック柄のテーブルクロスを再解釈したテーブルが置かれている。椅子は栗材の薄い板で編まれた、リムーザン地方で製造されていた1950年代のモデルを復刻したもの。共にボスク・デザイン。

Nicolas Matheus

素材同士が語らうベッドルームへ

「かつてサン=レミにあった一族の拠点を離れた私たちにとって、この家は新たな楽園のように思えました。アルチュールと共に改修に取り組む過程で、一族全員の期待と熱意がその後押しとなりました」

<写真>オリジナルのテラコッタタイルが印象的な広い寝室。栗材のベンチと「ソサエティ・リモンタ」のウールブランケットが掛けられた奥の棚は共にボスク・デザイン。リネンを張り込んだヘッドボードはオーダーメイド、同じくリネンのシーツは「ラ・ルドゥット・アンテリユール」のアイテムだ。

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サンドカラーと同化する、アンティーク&モダンの妙

ボスク兄弟のアプローチは、彼らの父の代から続く思想に基づいている。建築とは新しくつくるものではなく、既にあるものを読み取り、再び意味を与える営みである。

彼らはリサイクルや修復を通じて、場所に宿るヴァナキュラーな魂を引き出す。この家では、屋根に用いられていたテラコッタは床に再利用、梁はリサイクルされ、石材は丁寧に修復された。建築は環境に寄り添い、過去と現在、手仕事と現代の暮らしに合わせたアップデートが共存する空間が生まれている。

<写真>地元のブロカント(古道具店)で見つけたアンティークのバスタブは、シャワーブースの隣にレイアウト。バス用品が置かれたニッチは大理石の端材を用いて製作された。棚の上にはジャック・プーシャンのカラフと共に、地下室で見つかったボトルやガラスドームが並んでいる。

Nicolas Matheus

鮮やかなグリーンを大開口から堪能

全体的な構成は南仏の邸宅らしい骨格を保ちながら再編された。連続する大きな部屋、石の階段、高い天井といった要素はそのまま生かされ、敷地内に残されていた幾つかの作業場は生活の中心となる空間へと大胆に転用された。

<写真>この大開口を擁する空間は現在、パーティや絵画教室、ヨガクラスなどに使われている。ブリジット・ガルニエによる木製のテーブルにはボスク・デザインが再解釈したプロヴァンスの伝統的な栗材の椅子を合わせた。1970〜80年代のクロード・モランのガラス器と、陶器の皿が並ぶ。

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さまざまな時代の個性が共鳴するリビング

かつての製粉所は、吹き抜けのあるキッチン兼リビングに。大人数での食事や集まりを受け入れる場として甦った。庭の奥に位置するアザミの加工場は「ラ・ネフ」と呼ばれる多目的空間へと生まれ変わり、ホームパーティやヨガ、創作活動などを支える場所となっている。

インテリアは、改修前から残っていた家具やオブジェに加え、ボスク・デザインによるアイテムが配置されている。栗材、麻、石といった室内で目にする素材は、土地の風土を映し出す。使い込まれた陶磁器や古道具はそれぞれが異なる時間の層を重ね、手仕事の痕跡や経年がもたらす変化が空間に時の厚みを与えている。

<写真>リビングには、オリジナルの床と19世紀の大理石製暖炉がそのまま残されている。暖炉の上にはアントワーヌ・ド・サン=ピエールによる金属製の彫刻と鳥の剥製をコーディネート。手前のチェアはウォーレン・プラトナー、テーブルはエーロ・サーリネンがデザインしたアイテム。

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陽光の恵みを享受する、サンラウンジャーが並ぶ

広大な敷地には庭と細長いプールが整えられ、木陰での食事や読書、休息といった穏やかな時間を受け止める。自然と建築、人の営みが緩やかに結びつき、この土地、プロヴァンスならではの生活のリズムが形づくられている。

この住まいは単なる修復ではなく、失われた拠点を取り戻し、家族と土地の記憶を現在へとつなぎ直す試みだ。一族が抱いてきた価値観を再認識し、新たな意味を重ねるという選択が、このプロジェクトを導いてきた。失われかけたものをすくい上げ、未来へと手渡していくという静かな意志が、石造りの空間に息づいている。

<写真>丁寧に、そして情熱をもって修復された「バスティード・デ・シャルドン(アザミの館)」。常に手入れの行き届いた広大な庭を擁し、繊細なブルーグレーに塗り直されたよろい戸と共にその美しい姿を際立たせている。淡いウォームグレーのセメントで仕上げた細長いプールの周囲には、レ・ボー産の石を用いたデッキを設えた。

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『エル・デコ』2026年6月号

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