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「働いてやってるのは、誰だと思ってる」母に全部を押し付け続けた父。だが、最後に待っていた自業自得の結末とは

  • 2026.7.21

玄関の靴を数える癖

父が家にいる時間は、いつも空気が固かった。

小学生だった私は、ランドセルを置くより先に、玄関の靴を確かめる癖がついていた。

父の革靴があれば、その日は静かにしていなければならない。

「働いてやってるのは、誰だと思ってる」

「ありがとう。すぐごはんにするね」

そう言って母は台所へ立つ。

父はソファから動かない。テレビの音だけが大きくなる。

父は転職を繰り返していた。

うまくいかないのは、いつも上司か、同僚か、会社のせいだった。

そのくせ、家では自分の茶碗ひとつ運ばない。

洗濯物も、書類も、学校の集金も、全部母のところへ流れていった。

「これ、お父さんのじゃないの」

「母さんがやればいいだろ」

母は黙って拾い上げ、次の用事へ移る。

その背中を、父はテレビ越しに一度も見なかった。

父がやさしい声を出すのは、飼っていた犬にだけだった。

「よしよし」と頭をなでる。散歩も餌も、していたのは母なのに。

おかしい、とは思っていた。

ただ、それを言葉にする方法を、当時の私は知らなかった。

親戚が並べた通帳

母が離婚を切り出したのは、私が中学に上がる少し前だった。

「もう、この生活は終わりにします」

父は鼻で笑った。

「お前が。どうやって食っていくんだ」

その笑いは、長くは続かなかった。

話し合いの席には、祖母と伯母が来ていた。

テーブルには、通帳と家計簿が並べてあった。

「この十年で、あんたが家に入れたお金、全部ここに出てるわよ」

「…それは、事情があって」

「事情なら、この子がやりくりした記録にも書いてあるわ」

父の声が、だんだん小さくなっていく。

反論しようと口を開くたび、数字が返ってきた。しまいには、誰とも目を合わせなくなった。

祖母が湯呑みを置く音だけが、部屋に響いた。

父は膝の上で手を組み替え、視線を窓の外へ逃がした。

荷物をまとめた日、父の手にはバッグがひとつだけだった。

家の中の物は、ほとんど母が働いて揃えた物だったからだ。

玄関で、父は足を止めて言った。

「役立たずのくせに…最後に犬に会わせろ」

母は、顔色ひとつ変えなかった。

「その子を育てたのも、私です」

犬は母の足元に伏せたまま、顔も上げなかった。

父は何か言いかけ、そのまま黙った。

伯母がドアを開けて、外を指した。父は結局、犬の顔を見ることなく出ていった。

あれから二十年あまり。母は今も同じ家で、庭の草を抜きながら鼻歌を歌っている。

役立たずと呼ばれた人の家に、盆も正月もみんなが集まる。全部を押し付けた人の連絡先は、誰も知らない。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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