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おしゃれパリジェンヌのクオリティ・オブ・ライフ vol.55

  • 2026.7.21
Chloé Bruhat

人と比べるのではなく、自分の尺度で幸福を定義し、自分らしい生き方を優先するクオリティ・オブ・ライフという考え方が浸透してきている。今よりもずっと以前から、この考え方を体現してきたのがパリジェンヌだ。個性を大切にし、好奇心旺盛に毎日を自分らしく生きる――そんなエル的ライフスタイルを実践するおしゃれなパリジェンヌにフォーカスする連載。vol.55は、「Argot Studio」設立者兼デザイナーのイーマー・ライアン=ラトー。

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イーマー・ライアン=ラトー

「Argot Studio」設立者兼デザイナー

アイルランド生まれ。12年前よりパリを拠点に活動中。独学とインターンシップを通して創作の感覚を培い、「Argot Studio」を設立。家具やオブジェ、照明、空間デザインまで幅広く手掛ける。伝統的な装飾美と3Dプリントの現代技術を融合させた、温かく感情に寄り添う作品で注目を集める。

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パリ郊外のランブイエにあるイーマーの邸宅は、もともと1920年代に建てられた典型的な住宅で、アール・デコの特徴がほんのりと残る。家族で暮らしながらリノベーションを進め、壁や内装にはかなり手を加えたそう。「少しずつ装飾を加えながら、これからも時間をかけてリノベーションのプロセスを楽しんでいきたいわ」

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Q. 最も幸せを感じる瞬間はいつ?

「日常のなかにある小さな瞬間に、最も幸せを感じられる。特に、家やスタジオで家族と過ごしている時間。長い時間をかけて少しずつ築いてきた空間だからこそ、そこには特別な安心感があるの。

私にとって、プライベートと仕事はとても密接につながっている。朝、コーヒーとクロワッサンを囲む時間や、メトロに揺られている時、静かな夜のひととき――そんな何気ない瞬間が、突然新しいアイデアやオブジェの始まりになることもある。大きな成功よりも、愛する人たちのそばで、少しずつ創造的な人生を築いていけることこそが、私を一番幸せにしてくれると思う」

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Q. 人生で最も大切にしていることは?

「今の私にとって最も大切なのは、娘との深いつながりと、日々の生活に宿る意味を感じることかもしれない。母になってから、日常の美しさに以前よりずっと敏感になった。家の空気感、食卓を囲む時間、日々のルーティン、小さな儀式、光や静けさといったものが、暮らしだけでなく、デザインに対する感覚にも大きな影響を与えているの。人生は、ただ野心だけで築かれるものではなく、どれだけ丁寧に物事へまなざしを向けられるかによって形作られていくのだと思うわ」

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Q. 毎日を充実させるために実践していることは?

「インスピレーションの多くは、とてもささいでありふれた瞬間から生まれるわ。時間帯によって変わる部屋の光、会話、素材、カフェ、家の中で自然と積み重なっていくモノたち。創造性は、現実の生活から切り離されすぎると難しくなる気がしているから、私はそのふたつをあまり分けないようにしているの。

そして自分を満たすために、ゆっくり観察する時間も欠かせない。どんなに忙しくても、好奇心を持ち続けたり、集めている本やカタログを開いてみたり、実験や発見の余白を持つようにしている。スクリーンの前に一日中座っているより、そういう時間のほうが、ずっと創作を豊かにしてくれる気がするわ」

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Q. あなたにとって“仕事”とは?

「私にとって仕事とは、単なる職業ではなく、世界を観察し、その中に参加していく方法のようなもの。デザインは、日常のほとんどすべてに存在しているから、仕事と生活を完全に切り離して考えることはないの。時にはスタジオでの技術的な実験からインスピレーションを得ることもあるし、旅や本、日々のルーティン、あるいは街角の建築のディテールから着想を得ることもある。意味のある仕事とは、好奇心を失わず、少しずつ何かを築きながら、絶えず変化し続けられるものだと思う」

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Q. あなたにとって“家族”とは?

「家族や友人は、私を地に足のついた状態へ戻してくれる存在。感謝する気持ちを忘れずにいられるのも、彼らがいるからだと思う。創造的な仕事は、ときに抽象的で、すべてを飲み込んでしまうこともある。でも家族との暮らしは、とても現実的で、確かなものへ引き戻してくれるの。料理をしたり、家で過ごしたり、散歩や旅をしたり、静かな時間を共有したり。そうした日々のささやかな習慣が好きだわ」

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Q. ファッションに対するこだわりは?

「ファッションで最も大切なのは、“その人らしさ”だと思う。流行よりも、自分自身の感性で服を着こなしている人に惹かれるの。フランスで暮らすようになってから、服との向き合い方は確実に変わったわ。フレンチスタイルは一見シンプルだけれど、シルエットや素材、小さなディテールへの意識がとても繊細だからね」

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Q. 定番スタイルについて教えて!

「私自身のスタイルは、かなりリラックスしていて実用的と言えるわ。家族との時間、スタジオ、ミーティング、制作現場を行き来する毎日だから、オーバーサイズのシャツやニット、ヴィンテージ、ロングコート、履き心地のいい靴をよく選ぶ。ニュートラルカラーをベースにしながら、どこかに少しだけ個性のある要素を加えるのが好きね」

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Q. パリでの理想の休日の過ごし方は?

「理想の休日は、できるだけゆっくり、予定を決めすぎずに過ごすこと。どこでブロカントやのみの市が開かれているかを調べて、その周辺をただ歩き回るのが好き。特にマレ地区のアンティークマーケットを巡る時間はお気に入り。何も買わなくても、色や素材、小さなディテールから必ず刺激を受けるの。

パリで最も好きな美術館は、おそらく装飾芸術美術館。企画展も素晴らしいけれど、常設のモダンチェアのコレクションは何度でも見返したくなる。特別な場所といえば、ビュット・ショーモン公園。以前そのすぐそばに住んでいて、娘と何度も散歩をした場所だから、私にとってパリでの人生の一時期と深く結びついているの。最後は、友人とカフェで長いコーヒータイムを過ごし、それがそのままワインへ変わっていく。時間を忘れて何時間も語り合う、そんな週末の終わり方が理想ね」

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Q. クオリティ・オブ・ライフを向上させるために、必要なモノ・コトを5つ教えて。

美しい空間 暮らす場所や働く場所は、人生の質に大きく影響する。例えば、静かで美しい家や、刺激を与えてくれるスタジオ、自然へのアクセス、あるいは親切な店主のいるすてきなカフェ。そういう環境が、思考や感情を大きく変えてくれるの。

好奇心と発見 旅をしたり、新しい場所や本、映画、アイデアに出会ったり。人生を広げてくれる“発見”の感覚は欠かせない。

家族や友人との時間 大切な人たちを家に招いて、心地よく過ごしてもらうことが好き。誰かと豊かな時間を共有することは、とても重要だと思う。

余白 退屈できる時間も、とても大切。観察したり、空想したり、自然にインスピレーションが訪れる余白が必要なの。

創造性 人生に可能性を感じ続けるためには、創造し続けることが欠かせないと思う。

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Q. 1日のタイムスケジュールは?

9:00 保育園へ娘を送り届けた後、いつもの朝の散歩へ。家の近くにあるお城の庭園や湖の周りを歩くのが日課。静かで美しい時間であり、仕事へ気持ちを切り替える大切なひととき。

9:30 帰宅してコーヒーをいれ、スタジオで仕事を始める。午前中はメール対応や生産管理、作品の仕上げ作業、機械の操作、プロジェクト整理、発送準備など、実務的な仕事に集中することが多い。

13:00 ランチはとてもシンプル。マルシェで買った食材とバゲットで軽く済ませたり、時には友人とカフェで会うことも。

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14:00 午後はよりクリエイティブな時間。プロトタイプ制作や素材・フォルムの実験、ビジュアル制作、新しいコンセプトやアイデアの開発に取り組む。

17:00 娘を迎えに行く時間。そこから一日のリズムは一変する。公園へ行ったり、家で過ごしたり、一緒に料理を始めたり。

20:00 家族そろってディナーをして、お風呂と寝かしつけを終える頃には、再び少しエネルギーが戻ってくる。夫と本を読んだり、次の旅の計画を立てたり、プロジェクターで映画を見たり、ただ一日について話したり。そんな静かな時間で一日を締めくくるの。

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Q. 50代はどんな生き方をしていたい?

「50代では、とても“自分らしい”空間で暮らしていたい。理想の家をゼロから設計するか、あるいは古い家を改装して、歴史的な要素と現代的なデザイン、そして長い年月をかけて集めたオブジェを共存させるような暮らし。そしてその頃には、自分自身にしっかり満足し、これまで築いてきた人生に感謝しながらも、新しいものに対する好奇心や高揚感を失っていたくないわ。美しく年を重ねるというのは、変化や刺激に対して心を閉ざさず、常に進化し続けることなのだと思う。穏やかで地に足がついていながら、創造性と可能性に満ちた人生が理想ね」

photo: Chloé Bruhat illustration: Helena Roux-Dessarps realization: Elie Inoue

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