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「ほら、パパが抱っこするから」義両親の前でだけ育児をする夫。だが、子供が嘘を暴いた瞬間

  • 2026.7.21

玄関で始まる年一度の芝居

親戚が集まるのは、年に一度、夏の終わりだ。

義実家の門をくぐった瞬間、夫の背筋が伸びる。

「ほら、パパが抱っこするから」

車の中では一度も娘を見なかった人が、玄関先で娘を抱き上げた。義母が出てきて、目を細める。

「あらあら、よく懐いてるわねえ」

「まあ、いつもこんな感じなんで」

私は荷物を両手に提げたまま、後ろで立っていた。

靴を脱ぐ間にも、夫は娘を高く持ち上げてみせる。娘は驚いた顔で、私のほうを振り返った。

台所で煮物を温めていると、義叔母が話しかけてきた。

「旦那さん、よくやってくれるんでしょう」

「……そうですね」

それ以上、言葉が出てこない。フルタイムで働いて、保育園の送りも迎えも、夕飯も寝かしつけも私だ。

夫の担当は、玄関から集積所までのゴミ出しだけ。それを本人は、堂々と家事と呼ぶ。

座卓に皿が並び、ビールが二本空いたころ、夫の声が大きくなった。

「冷蔵庫の中身も、俺が入れてる」

義父が、ほう、と顔を上げる。

「買い出しも週末は俺だし。まあ、共働きだからな」

誰も疑わない。義父はうなずき、義叔母は感心したように夫を見た。この人は毎年、この十分間のためだけに父親をやる。

麦茶のコップから顔を上げて

そのとき、隣に座っていた四歳の娘が、麦茶のコップから顔を上げた。

「パパ、おうちでやってるの見たことないよ」

箸の音が、いっせいに止まった。

夫が笑ってごまかそうとする。

「こら、パパがやってるだろ。お前が保育園に行ってる間にな」

娘はきょとんとして、首を横に振った。

「ちがうよ。ぎゅうにゅうがないって、パパいつもママに言ってるもん」

夫の喉が、ごくりと鳴った。

義母が箸を置く。義父は、コップを持ったまま夫の顔を見ていた。

「……あんた、まさか」

夫は義母から目を逸らし、そのまま座卓の木目を見つめた。反論は、ひとつも出てこなかった。

義叔母が、場をとりなすように笑う。

「うちの人も昔そうだったわよ。子どもには敵わないわねえ」

笑ったのは、義叔母だけだった。義父がゆっくり口を開く。

「奥さんに、ちゃんと礼を言え」

夫は小さく頷いて、何か言おうとして、結局「……はい」とだけ答えた。義母はその横顔を、しばらく黙って見ていた。

帰り道、車の中は静かだった。娘は後部座席で、口を開けて眠っていた。

その週末、夫は買い物のメモを自分で書いた。牛乳と、卵と、娘の好きなヨーグルト。同じ牛乳を三本買ってきたけれど、私は何も言わなかった。

年に一度の芝居は、たぶんもう終わりだ。幕を下ろしたのは、麦茶のコップを抱えた四歳だった。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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