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妊娠した妻のために全部やる、と決めた俺が、妻より画面を選び続けていた話

  • 2026.7.22
ハウコレ

妻には何もさせないと決めていた。それなのに気づけば俺は、目の前の妻より画面を選び続けていました。妻からの問いが、俺の見落としを浮かび上がらせた瞬間。

妊娠が分かった日の帰り道、俺は本屋に寄って育児本を3冊、無言でレジに置きました。

「俺が全部やる」と決めた日

妻の妊娠が分かってから、俺は決めていました。妻には何もさせない、家事は全部俺が引き受ける。「俺が全部やるよ。無理しないで」と伝えた日の妻の笑顔は、今も覚えています。

最初の1ヶ月は順調でした。ごみ捨てを日課にして、食事は帰宅後に1から作りました。洗濯物も自分で畳みました。けれど日が経つにつれて、俺の頭には別の心配ごとが増えていったのです。もうすぐ子どもが生まれる。俺は父親になるのに、赤ちゃんの抱き方も、沐浴の仕方も、陣痛が来たときの対応も、何一つ知りません。

家事より、育児の準備が気になった

育児サイトを見始めたら、止まらなくなりました。夜間授乳の間隔、産後うつのサインを見逃さないためのチェックリスト、陣痛タクシーの登録方法。全部覚えておかないと、と思ったのです。

気づけば、家事の合間にスマホを開くことが増えました。炒め物を火にかけたまま、産院の助産師が話す動画に集中していたこともあります。洗濯物を畳みながら、育児アプリの記事を最後まで読もうとしていました。

妻が声をかけてくれても、「ん、ちょっと待って」と返してしまうことが増えていました。記事を最後まで読み終えてから、動画を最後まで見終えてから、と思っていたのです。

「そのスマホ、誰と何話してるの」

夕食後、皿を洗っている俺の背中に、妻の声が届きました。

「そのスマホ、誰と何話してるの」

振り向いた妻の顔は、今まで見たことがないほど硬くなっていました。俺はとっさに、スマホの画面を見せました。

「両親学級の動画、見てた」「産まれる前に、全部覚えておきたくて」

妻はうなずきました。目には、何かを我慢するような色がありました。焦げた鍋、山積みの洗濯物、妻が話しかけてくれた声を雑に返してしまった数週間。俺が「全部やる」と決めていたはずのものから、抜け落ちていた部分が並んでいました。

そして...

育児の勉強をすることと、目の前の妻を見ることは、別のことだと知りました。俺は自分が思い描く「良い父親」の準備で頭がいっぱいで、隣で今日を過ごしている妻の顔を見ていませんでした。

妻が疑ったのは、俺の浮気ではありません。俺が妻ではなく画面を選び続けた、その事実そのものでした。家事の途中でスマホを触るのはやめました。動画は妻が寝てからにしています。沐浴の手順は、まだ半分しか覚えられていません。

(30代男性・営業職)

本記事は、読者アンケートに寄せられた実体験をもとにした本人視点の記事を参考に、相手側の心情を想定して制作しています。実際の相手本人への取材ではなく、編集部による解釈を含みます。

(ハウコレ編集部)

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