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「兄貴も、これで一区切りついたな」父の三回忌に集まった親戚。だが、叔父の相談に絶句

  • 2026.7.20

読経が終わり、膳が運ばれてきた

父の三回忌には、親族が二十人ほど集まりました。

読経が終わって座敷に仕出しの膳が並ぶ頃には、みなの表情もいくらか和らいでいたのです。

「兄貴も、これで一区切りついたな」

父の弟にあたる叔父が、母の猪口にビールを注ぎながら言いました。

母は小さく頭を下げて、それを受けていました。

母は父を看取るまでの二年間、ほとんど家を空けずに世話をしてきた人です。

ようやく肩の力が抜けたのだろうと、息子の私は横目で見ていました。

ところが、膳の料理が半分ほど減ったあたりで、叔父の声色が変わりました。

「ところで、実家の土地の話だがな」

あちこちで箸の動きが止まりました。今日は父を偲ぶ席のはずです。

「あの家、これから誰が管理するんだ。今のうちにはっきりさせておいたほうがいい」

「その話は、また日をあらためて」

母がそう言いかけたところで、叔父は手のひらでさえぎりました。

「長男の家系で決める、黙ってなさい」

座敷の空気が、一気に重くなりました。

「あんたは嫁いできた身なんだから、余計な口を出さなくていい」

母はうつむいて、膝の上で手を重ねたまま、何も言い返しませんでした。私は箸を握ったきり、声が出ませんでした。

末席から上がった声

そのときです。末席のほうから、静かな声が上がりました。

父のいとこにあたる、親族でいちばん年上の男性でした。

「今日は法事だ。その話は後日にしよう」

叔父の顔から、すっと赤みが引きました。

「いや、俺はただ、早いほうがいいと思って…」

「兄さんの位牌の前で、奥さんに黙ってろとはどういうことだ」

叔父は口を開きかけて、そのまま飲み込みました。

「そうですよ。今日は義姉さんが二年、兄さんに付きっきりだったのを労う日でしょう」

叔母の一言に、座敷のあちこちでうなずく音がしました。叔父はビールに手を伸ばしかけ、途中で引っ込めて、畳に目を落としました。

「土地のことは、後日あらためて全員で話しましょう。母も、その席に出ます」

私がそう言うと、叔父は「……ああ」とだけ返し、それきり土地の話を持ち出しませんでした。膳を下げるまで、叔父はほとんど口をきかなかったのです。

帰り際、玄関で叔父は母の前に立ち、目を合わせないまま小さく頭を下げました。

「今日は、すまなかった」

母は背筋を伸ばして、「いえ」とだけ答えました。父を送る席で、母が黙らされたままにならずに済んだ。

あの一言がなければ、母は今日の記憶ごと飲み込んでいたはずです。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、60代以上・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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