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その栄華を支えたのは、後の世では語られない名もなき人々の営みだった。16世紀のオスマン帝国で懸命に生きた人々を描く歴史ロマン!【書評】

  • 2026.7.15

【漫画】本編を読む

『三日月の国 オスマン千夜一夜』(桃山あおい/新潮社)は、16世紀のオスマン帝国を舞台に、栄華を誇る帝国で働くさまざまな人々の物語が描かれる、オリエンタル歴史ロマンである。

第1巻では、宮廷工房で働く新人絵師・レオの夢と成長がメインで描かれる。レオの夢は、帝国一の絵師になることだ。しかし現実は甘くなく、宮廷工房で働いてはいるものの彼の図案はなかなか採用されない。才能への焦り、認められたいという気持ち、そして壮麗な帝都を彩る仕事に携わる誇り。そうした若者らしい感情が入り混じる中、くじけず努力を続けた結果、ついに初めての仕事を成功させる。しかし、そんな彼が、ある日思いがけない理由で逮捕されてしまい……。

本作の魅力はオスマン帝国という舞台で、「働く人々」の目線から描いているところにある。宮廷工房、職人、絵師、後宮に仕える人々など、帝都を支える無数の営みが物語の中心にある。歴史物語でありながらそこにあるのは派手な英雄譚ではなく、手を動かし、悩み、工夫しながら自分の役目を果たそうとする人々の姿だ。

また、衣装や建築、装飾の描写も美しく、異国情緒あふれる世界が鮮やかに描かれていくのも見どころで、ページを眺めているだけでも「壮麗なる帝国」の空気に引き込まれてしまうのだ。

そして2026年6月9日発売の第2巻では、オスマン帝国が誇る最強の戦士にして「最高の料理人」でもあるファイサルが主役となる。ある日皇帝に呼ばれた彼は、故郷ギリシアの反乱鎮圧を命じられてしまい――。

およそ600年にもわたる帝国の歴史を支えたのは、王だけではない。名もなき絵師や料理人をはじめ、働くすべての人々が時代を作ってきたのだ。本作はそんな当たり前だが見落とされがちな事実を、物語として伝えている。歴史の大きなうねりの中で、自らの仕事を通して祖国に貢献しようとする人々の姿がまぶしい作品だ。

文=シャルルダカール

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