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「電車の中で読んでた本、面白い?」ずっと感じていた視線。向かいの男が触っていたスマホに映っていたのは

  • 2026.7.15
「電車の中で読んでた本、面白い?」ずっと感じていた視線。向かいの男が触っていたスマホに映っていたのは

真っ暗な画面の、向こうの目

その朝の通勤電車は、いつもより少しだけ空いていた。

私は運よく座れて、読みかけの文庫本を開いた。

向かいの席には、スーツ姿の男が座っている。

手元のスマートフォンを、しきりに操作しているように見えた。

本を読み進めるうち、妙な感覚に気づいた。

何度も、視線を感じるのだ。

最初は、混んだ車内でよくあることだと受け流した。誰かの視線が、たまたまこちらを向いているだけだろう。

ところが次の駅を過ぎても、その視線は私に貼りついたまま、離れる気配がなかった。

顔を上げても、向かいの男はうつむいて、スマホに目を落としている。

気のせいか。

そう思って、また本に戻る。

だが、視線は消えない。

三度目に顔を上げたとき、ガラスに映ったスマホを見て、私はようやく気づいてしまった。

男のスマホの画面は、真っ暗だった。

液晶には何も映っていない。ロック画面すら点いていない、ただの黒い板だ。

それを男は、さも操作しているかのように、指先で撫でている。

目線だけが、画面ではなく、その少し上へ向けられていた。

電源の入っていない黒い画面。その代わりに男が見ていたのは、窓ガラスに映る、私の姿だった。

窓ガラスで、目が合った

男の目と、私の目がぶつかった。

普通なら、気まずそうにそらすところだ。

だが男は、まったく視線を動かさなかった。無表情のまま、私を見つめ続けている。

ぞくり、と背中が冷たくなった。私は本を閉じて鞄にしまい、次の駅で降りようと決めた。

まだ、目的の駅の二つ手前だった。

電車が停まり、ドアが開く。

私は逃げるように席を立った。そのとき、背後から声がした。

「電車の中で読んでた本、面白い?」

振り返ると、あの男が、こちらを見上げていた。

相変わらずの無表情で、口元だけがわずかに動いている。

「……え」

「ずっと読んでたよね」

言葉が出なかった。真っ暗な画面のふりをして、この男はすべて見ていたのだ。

ぞっとして、後ずさった。

声を出すことも、うまくできない。

「……失礼します」

やっとの思いでそう告げ、私はホームへ飛び出した。背後から、男の平らな声が追ってきた。

「また明日も、会えるといいね」

閉まりゆくドアの窓に、男の顔が映っていた。

ホームに残された私を、ガラス越しに、じっと目で追っている。電車が走り去るまで、その視線は一度も、私から逸れることはなかった。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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