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【60代エンタメ】WEST.小瀧望が「極悪人」に挑戦!井上ひさしの未上演戯曲『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』開幕!「役者が息を吹き込み、生まれたコメディ」

  • 2026.7.9

2022年に発見された、井上ひさしさんが24歳だった1959年に執筆した未上演戯曲『うま-馬に乗ってこの世の外へ-』が、7月9日に東京・PARCO劇場で開幕しました。

東北の民話「馬喰八十八(ばくろうやそはち)」をもとにした本作は、病身の母とともに村へ現れた青年・太郎が、自らの弁舌と才覚だけを武器に村人たちを翻弄し、共同体を揺さぶっていく物語。

主演を務めるのはWEST.の小瀧望さん、演出は藤田俊太郎さんです。囲み取材では、藤田さん、そして小瀧さんをはじめとするキャストが、作品への思いや稽古場でのエピソードを語りました。

撮影:岡千里
左から/演出・藤田俊太郎さん、音月桂さん、小瀧望さん、梅沢昌代さん、安井順平さん

「最初から最後まで自分のことしか考えていない」太郎という「極悪人」に挑む

「上演を前に、わくわくドキドキして高揚感があります。作品の内容が濃くて、それを一つひとつ、井上先生の言葉を余すことなく皆さんにお届けできたらと思います」と小瀧さん。

今回演じる太郎は、行く先々で人々を言葉巧みに惑わせ、金を巻き上げ、女性たちを虜にしていく人物。強烈な存在感を放つ役です。

「太郎は最初から最後まで徹底的に自分のことしか考えていない役。こういう役は初めてなので、とても刺激的ですね。お芝居の中で心が痛む瞬間もありましたが、稽古場では日々楽しみながら演じていました」

新たな役柄に挑んだ充実感が、その言葉から伝わります。

「本当にプロフェッショナルなスタッフ、そして魅力あふれるキャストの皆さんに支えられたので、何も怖がらずに挑戦することができました」

撮影:岡千里
太郎(小瀧望)は、病身の母(梅沢昌代)、馬一頭とともに村にやってくる。

演出の藤田俊太郎さんとともに、稽古場ではキャスト全員で作品と向き合ってきました。

「テーブルワークから『井上先生は何を描きたかったのか』をみんなで考えました。日々、役者同士でも『こうなんじゃないか』『ああなんじゃないか』と意見を出し合って、なんとか井上先生に食らいつきました」

その積み重ねの中で、小瀧さん自身の作品への見方に変化が生まれたといいます。

「台本を読んでいるだけでは気づかなかったんですが、役者の皆さんが息を吹き込んだことで、この作品はコメディなんだと感じました。もちろん悲惨な出来事もあります。でも、その中にある軽快な会話や滑稽さを楽しんでいただけたらうれしいです」

藤田さんの演出についても、小瀧さんは全幅の信頼を寄せています。

「まず自由にやらせていただいて、その中からどんどん『太郎』という役を引き出してくださいました。自分もいろいろなことに挑戦できて、本当に楽しかったです」

「24歳の井上ひさしが放つエネルギーを感じてほしい」藤田俊太郎が語る作品への思い

演出を手がける藤田俊太郎さんは、「さまざまな趣向と、そしてさまざまな想像力を駆使して創作した作品です。皆様に自信を持ってお届けできることを幸せに思っております。劇場に来ていただいて、大いに泣いて、そして大いに笑っていただけたらと思います」と開幕への思いを語りました。

撮影:岡千里
馬地主の娘・ちか(加藤梨里香)や、権ず(小松利昌)と親しい仲だった村娘・せつ(小林きな子)の心を奪ってしまう太郎。

秋田県出身の藤田さんは、井上ひさしさんの未上演戯曲を手がけることについて、「小さい頃から親しんできた、敬愛する井上ひさしさんの東北を舞台にした作品に挑戦できるということは、心から幸せに思います」と明かしました。

「言葉、そして物語を大事に。でも気負うことなく、24歳の新しい作家の、エネルギーにあふれた新しい作品として取り組みました。井上ひさしさんがもし見てくださったら、喜んでくださるのではないかなと思っています」

ピカレスク俳優」「本が読める俳優」 共演者が語る小瀧望の魅力

小瀧さんの作品への真摯な向き合い方は、演出家や共演者の言葉からも伝わってきました。

藤田さんは、小瀧さんを「のんちゃん」と親しみを込めて呼んでいます。

「のんちゃんは台本をしっかり読み込んでいて、稽古場でも本当にアイデアを持っている方です。身体的にも、思考的にも。そのアイデアに音月さんがさらに違うアイデアをくださって、梅沢さんががっしりと全体を見て、受け止めて、さらに深い愛で作品を包む。そして安井さんがまた違う角度から僕に切り込んできて、どんどん作品が上昇していくような稽古場でした」

小瀧さん自身は、とりわけ母親役を演じる梅沢昌代さんの存在について、

「井上ひさしさんを知る役者の方がいてくださることは、本当に精神的支柱でした」と振り返り、

「稽古中は席が隣だったので、井上さんのお話をいろいろ聞かせていただきました」と明かします。

井上ひさしさんの作品に数多く出演してきた梅沢昌代さんは、

「井上ひさし先生が24歳のときに書かれた、とてもエネルギッシュな作品を、みんなで力を合わせてここまで作り上げてきました」と語り、

「小瀧さんはダイナミックでありながら繊細。信頼できる役者さんです」

と惜しみない賛辞を送りました。

撮影:岡千里
夫の目を盗み、寺の坊主・宝珍(大鶴佐助)と浮気をしていたお京(音月桂)だったが……。

音月桂さんは、『うま』は爽快な物語だと感じています。

「稽古中、自分が出ていない場面を拝見していると、あっという間に時間が過ぎてしまいます。作品全体を客席で見たいと強く思いました。」

さらに小瀧さんの悪役ぶりを「まるでピカレスク俳優みたい」と語りました。

「アイドル活動もされていますし、拝見している作品からも硬派な役が多いように感じていましたが、本読みでは荒々しさもあって、良い意味で印象にギャップがありました。こういう役をさせたら右に出るものはいないんじゃないかと思うくらいです。稽古場でも台風のように、いろいろなシーンを振り回してくださいました」


安井順平さんは、「小瀧くんは売れっ子ですからね。態度が偉そうだったらどうしようかと思いましたが、まあ腰の低い、素晴らしい役者です」と笑いを誘いながらも、「とにかく本が読める俳優さん」と、稽古場でのエピソードを披露。

「演出の藤田さんとのディスカッションでも、『なぜそう演じるのか』という質問に対して、その場面だけではなく、そこに至る以前の流れから解釈を説明される。きちんと本を読んでいるからこそ、その答えが出せる。『こいつ、できる……』と思いました」

本作の出演にあたっては、「今回の公演が、この『うま』という作品の雛形になるかもしれないと思う」と、気合十分です。

撮影:岡千里
太郎は巧みな嘘によって、馬地主(安井順平)も手玉にとってしまう。

「『あ、こういうことか』と思えた瞬間、太郎に近づいている自分が恐ろしくなった」

小瀧さんは、太郎という人物を理解することは試行錯誤の連続だったと振り返ります。

「太郎の選択は、小瀧望にはない選択が多い。それはなぜなんだろうと考えるのは楽しかったですが、出口の見えない模索のように感じた時期もありました」

特にラストシーンについては、とことん考え続けたそうです。

「『こうすれば効率がいいのに、なんでこうしなかったんだろう』と、ずっと考えながら演じていました。でも、ある日『あ、こういうことか』と思えた瞬間があって。そのとき、どんどん自分が太郎に近づいているようでちょっと恐ろしくなりました」

「この原石のような作品を、お客様にも一緒に磨いてほしい」

最後に藤田さんは、本作の魅力について、「作劇上の大きな趣向としては、喜劇に見せかけた悲劇や、悲劇に見せかけた喜劇がたくさんあります」と語りました。

「“村”という共同体を、よきものが変化させるのではなく、太郎という“悪”なるものが変えていく。その仕掛けがどこに潜んでいるのか、お客様に発見していただけたらと思います」

撮影:岡千里
太郎に惹かれるお京は、たよりにならない夫・五助(小柳心)に冷たくふるまう。

「キャスト・スタッフで何度もディスカッションを重ね、その仕掛けをお客様に楽しんで発見していただけるように作りました。たくさんのお客様に見ていただきながら、この原石のような作品を磨いていただけたらうれしいです」

と締めくくりました。

PARCO PRODUCE 2026 『うま -馬に乗ってこの世の外へ-』

作/井上ひさし 演出/藤田俊太郎 出演/小瀧望 音月桂 加藤梨里香 大鶴佐助 小松利昌 小林きな子 小柳心 尾倉ケント 森加織 安井順平 梅沢昌代 公式サイト/https://stage.parco.jp/program/uma 企画・製作:株式会社パルコ

この記事を書いた人 杉村道子

カルチャー系を中心にインタビュー記事を執筆しています。趣味は歌舞伎、落語、ミュージル、ストレートプレイに小劇場と、ひたすら雑食舞台鑑賞。年に何本見ているのか、最近は怖くて数えていません。

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