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柄本佑「クセの強い役者さんばかり」 『木挽町のあだ討ち』現場の様子を明かす

  • 2026.3.7

観る立場ではなく、その世界を生きる役者にとって時代劇はどんな存在なのだろう。NHKの大河ドラマなどこれまで数々の時代劇に出演してきた柄本佑さんが思う、現代劇とは異なる魅力とは?

“縛り”があるからこそむしろ自由に演じられる

豪華キャストが集結した話題の映画『木挽町のあだ討ち』で、主演を務める柄本佑さん。本作の原作は直木賞を受賞した永井紗耶子さんの時代小説だが、柄本さんはこれまでもNHK大河ドラマ『光る君へ』など、時代劇に複数出演している。役者にとって時代劇は、どんな存在なのだろう。現代劇との違いとは?

「大きなところでは、所作など時代劇ならではのルールや縛りがあること。そこが難しい部分でもあり、同時に役者を自由にしてくれるところでもあるんです。それはなぜかと考えると、所作然り、歩き方や殺陣などには、時代劇の長年の歴史に裏打ちされた説得力があります。そのため時代劇のルール内であれば、歴史が背中を支えてくれるので、自由に立ち振る舞うことができる。一方、現代劇は、どの衣装で、どう演じるのかという選択肢が無限にあります。そちらのほうが、ある種の不自由さを感じることがあったりしますね」

『木挽町のあだ討ち』で所作指導を担当したのは、斬られ役として長年のキャリアを持つ峰蘭太郎さん。

「僕が演じた加瀬総一郎は、元藩士。峰先生には、最初に藩士としての動きをつけてもらいましたが、いざ現場に入ると、ルールより総一郎のキャラクターを生かしてくださったんです。僕が所作から少し外れた動きをしてしまって『先生、ごめんなさい!』と言っても、『総一郎らしくていいんじゃないですか』といった感じで。峰先生がフレキシブルな方で助かりました。それとともに今は昔ほどキッチリと所作を求められることが減っているのかもしれません」

物語の舞台は、江戸時代の歌舞伎の芝居小屋「森田座」。舞台がはねたある雪の夜、森田座のすぐ横で、仇討ちが行われた。しかし、この仇討ちには腑に落ちない点があるとして、仇討ちを成し遂げた若侍の縁者である総一郎は、森田座の関係者を訪ね、当時の様子を聞いて回る。

「総一郎は能天気で猪突猛進なところがありますが、地頭はそんなに悪いやつではない気がしていて。ナチュラルに相手に合わせられて、懐に入っていけるのかなと。ただ、対峙するのは、瀬戸康史くんに滝藤賢一さん、高橋和也さん、正名僕蔵さん、渡辺謙さんと、クセの強い役者さんばかり。僕は受け身の役なので、みなさんのエネルギーをもらって疲れ果てていましたが(笑)、それぞれ自分のやりたいように楽しんでいる、刺激物だらけの現場でした」

個性的な登場人物同士の掛け合いが小気味よく、時代劇×ミステリーの世界にぐいぐい引き込んでいく。

「ホンを読んだ時に、誰もが楽しめる映画になるんだろうなと思いましたが、試写を観て、それが見事に昇華されていると感じました。源孝志監督と撮影の朝倉義人さんによる美的センスも十二分に発揮されていて、観ていて気持ちよかったです」

本作は、市井の人たちの人情味あふれる交流も物語のカギとなるが、それこそが時代劇の魅力だと柄本さんは考えている。

「現代劇で人情を描こうとすると、どこか恥ずかしさがあったり、こんなことはあるはずがないと思われてしまいそうな気がするんです。でも、時代劇という形を借りると、それがなくなるというか。もしかしたら、自分が今いる世界とは距離があるぶん、現実とは切り離して観られるからかもしれません。だから時代劇では、素直に『人情っていいね』と共感できる。その意味で時代劇は、実は“本当のこと”が語れる媒体なんじゃないかなって思います」

京都の撮影所は映画の歴史に触れられる場所

近年、改めて注目が集まり、時代劇の制作自体も相次いでいる。その追い風を、演じる側も感じることはあるのだろうか。

「それは、すごく感じています。個人的には『SHOGUN 将軍』より少し前から、徐々にきているなという気がしていましたけど。時代劇が好きで、東映や松竹の京都の撮影所で時代劇を撮りたいという役者はたくさんいるので、この勢いに乗って今後も増えていくといいですよね。役者にとって撮影所に行くということは、映画の歴史に触れるようなもの。時代劇の灯を消してはいけないと、長年時代劇に出演し続けている役者さんもいますが、僕も時代劇に勇気づけられたり、楽しい思いをさせてもらったりしている一人として、その気持ちはよくわかります」

また、時代劇の今後について、期待を込めてこう話す。

「もっと若い人の目に触れて、結髪とかメイクとか技術方面にも興味をもってもらえるといいなと思います。僕は10代の頃から京都の撮影所に行かせてもらっていますが、その間、いなくなってしまう職人さんはいても、新しい人と出会うことはあまりありませんでした。そんななか若い人が時代劇の職人に憧れて、撮影所に来てくれたら、現場はきっと活気づくはず。それは僕にとっても嬉しいことですし、この作品がその一端を担えたらいいですよね」

柄本佑

えもと・たすく 12月16日生まれ、東京都出身。出演作は映画『美しい夏キリシマ』、大河ドラマ『光る君へ』など。源監督作にも『令和元年版 怪談牡丹燈籠 Beauty&Fear』など多数出演。今後も映画『メモリィズ』『黒牢城』など出演作が相次いで発表されている。

information

『木挽町のあだ討ち』 ある雪の夜、芝居小屋・森田座のすぐ近くで、仇討ちが起きる。
『木挽町のあだ討ち』

ある雪の夜、芝居小屋・森田座のすぐ近くで、仇討ちが起きる。若き美濃遠山藩士・伊納菊之助(長尾謙杜)が、父を殺害した作兵衛(北村一輝)の首を討ち取ったのだ。その1年半後、同じ遠山藩の加瀬総一郎(柄本佑)が、森田座に現れ関係者の元を訪れていく…。原作/永井紗耶子 監督・脚本/源孝志 出演/柄本佑、長尾謙杜、瀬戸康史、滝藤賢一ほか。2/27(金)~全国公開。Ⓒ2026「木挽町のあだ討ち」製作委員会 Ⓒ2023 永井紗耶子/新潮社

ジャケット(HERILL/NISHINOYA TEL. 03-6434-0983)

写真・干田哲平 スタイリスト・坂上真一(白山事務所) ヘア&メイク・星野加奈子 取材、文・保手濱奈美

anan 2485号(2026年2月25日発売)より

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