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人間の”心理的な実力”は55歳からピークを迎える

  • 2026.7.6
心理的な総合力のピークは55歳から / Credit:Canva

20代は、たしかに頭の回転が速い時期です。

しかし、それだけで人間の能力のピークを決めてよいのでしょうか。

知識、責任感、感情の安定、失敗から引き返す判断力まで含めると、答えは大きく変わるかもしれません。

西オーストラリア大学(UWA)による新たな研究は、知能や性格、経験に基づく判断力などを合わせた力、いわば人間の“心理的な実力”が55〜60歳ごろに最高潮を迎える可能性を示しています。

この研究は、2025年9月22日付で学術誌『Intelligence』にオンライン掲載されました。

目次

  • 若い脳だけでは説明できない「人生のピーク」
  • 心理的な総合力は55〜60歳に最高潮を迎える

若い脳だけでは説明できない「人生のピーク」

一般的に、人間の身体能力や一部の認知能力は若い時期にピークを迎えます。

たとえば、推論力、記憶の保持、処理速度といった流動性知能は、20歳前後で高まり、その後は年齢とともに低下しやすいことが知られています。

ところが現実社会では、キャリアの頂点や収入、職業的地位、政治的リーダーシップのピークは、もっと遅い時期に現れることがあります。

論文では、現代社会における職業的成功はおおむね50〜55歳ごろ、主要国の政治指導者は50代半ばから60代前半で選ばれやすいと説明されています。

そこで研究チームは、「人間の実力」を頭の回転だけで見てよいのか、という点に注目しました。

彼らが調べたのは、知能、性格、感情の扱い方、金融知識、道徳判断、認知バイアスへの抵抗などを合わせた、より現実社会に近い心理的な機能です。

研究では、既存の研究から年齢ごとのデータを集めました。

対象になったのは、認知能力、ビッグファイブ性格特性、感情知能、金融リテラシー、道徳的推論、これまでに費やしたコストにとらわれない判断力、認知的柔軟性、認知的共感、認知欲求などです。

そして、それぞれ異なる尺度で測られた結果を、平均50、標準偏差10のTスコアに変換し、同じ物差しで比べられるようにしました。

そのうえで研究チームは、これらを統合した「認知・性格機能指数(Cognitive–Personality Functioning Index:CPFI)」を作成しました。

分析の結果、従来型モデルでも、より広い要素を含めた包括型モデルでも、人間の心理的な機能は55〜60歳ごろにピークを迎える傾向が示されました。

では、なぜ20代ではなく55歳以降がピークになるのでしょうか。

より詳細な結果は次項で見ていきましょう。

心理的な総合力は55〜60歳に最高潮を迎える

結果を詳しく見ると、年齢によって伸びる力と下がる力は、はっきり分かれていました。

推論力、記憶、処理速度といった能力は、成人期を通じて低下していきます。

一方で、語彙や知識に代表される結晶性知能は、60代ごろまで上昇しやすい傾向がありました。

性格面でも、重要な変化が見られました。

誠実性と情緒安定性は、若年期から中年期にかけて高まりました。

誠実性とは、計画性、責任感、粘り強さ、規律を保つ力のことです。

情緒安定性とは、ストレスに過剰反応せず、落ち着いて判断する力に関わります。

つまり年齢を重ねることで、単に知識が増えるだけでなく、責任ある判断を支える性格的な成熟も進むと考えられます。

さらに、感情知能は40代半ばごろにピークを迎え、金融リテラシーは60代後半から70代前半で高くなりました。

道徳的推論や、「これまでに費やした時間やお金にとらわれて判断を誤る傾向」への抵抗も、年齢とともに改善する傾向が示されています。

ただし、すべての力が年齢とともに伸びるわけではありません。

認知的柔軟性は成人期を通じて低下しやすく、認知的共感は中年期までは比較的保たれるものの、65歳以降に低下が目立ちました。

また、難しい問題を考えること自体を好む「認知欲求」も、高齢期には下がる傾向がありました。

そのため55〜60歳という時期は、流動性知能や処理速度は若いころより低下しているものの、知識、経験、感情の安定、道徳判断などが十分に高まり、それらが全体を支える時期だと考えられます。

研究チームは、この総合的なピークが、収入や職業的地位、政治的リーダーシップのピーク年齢と近い点に注目しています。

現実の重要な役割では、素早く問題を解く力だけでなく、知識、経験、感情の安定、バイアスに引きずられない判断力が同時に求められるためです。

ただし、この研究は「55〜60歳の人なら誰でも最高の判断ができる」と言っているわけではありません。

また、データは主に西洋の産業社会に偏っており、すべての文化にそのまま当てはまるとは限りません。

それでもこの研究は、人間のピークを「若さ」だけで語る見方に、大きな修正を迫るものです。

頭の回転の速さだけでなく、知識、性格、経験、判断力まで含めたとき、人間の“心理的な実力”は55〜60歳ごろにもっとも充実するのかもしれません。

参考文献

When do humans reach their psychological peak? A new study points to late midlife
https://www.psypost.org/when-do-humans-reach-their-psychological-peak-a-new-study-points-to-late-midlife/

元論文

Humans peak in midlife: A combined cognitive and personality trait perspective
https://doi.org/10.1016/j.intell.2025.101961

ライター

矢黒尚人: ロボットやドローンといった未来技術に強い関心あり。材料工学の観点から新しい可能性を探ることが好きです。趣味は筋トレで、日々のトレーニングを通じて心身のバランスを整えています。

編集者

ナゾロジー 編集部

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