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軽井沢に100年ほど前に建てられた旧ヴォーリズ邸を「九尺二間の山荘」として再生。

  • 2026.7.7

軽井沢の名手の一人、ヴォーリズの旧山荘で足るを知る。

川井加世子さんとニール・セレスタさんが住む、旧ヴォーリズ山荘のリビングは18m²。軽井沢彫の椅子、シャンデリアなどおよそ100年前の建設当時の調度品も残る。
茶の板張りの野趣な平屋。ヴォーリズは、「心と体を癒やすには見せびらかすような大きな家より簡素な家がよい」と語っていたといわれる。

その山荘は、長野県軽井沢町の深い森の中で、裏山を背負う高台に立っていた。初夏の頃にだけ独特の声で鳴くというエゾハルゼミの合唱がうるさいほどだ。家主は川井加世子さんとニール・セレスタさん夫妻。現在の自宅は同じ軽井沢の別の場所にあるが、いずれこの山荘に暮らしたいと、毎日通い、時折泊まり込み、手入れを続けている。

この家は、『軽井沢会テニスコート・クラブハウス』『軽井沢ユニオンチャーチ』を設計したことで知られる建築家ウィリアム・メレル・ヴォーリズの別荘だった。江戸の庶民の長屋を指す表現を引用して、「九尺二間(約2.7×3.6m)の山荘」と呼ばれ、後に増築され、今の形になったが、竣工時は10坪にキッチン、リビングダイニング、ベッドルーム、バスルーム、暖炉があるだけだった。 「大正9年に建てられ、途中から画家の浮田克躬さんが所有。でも長らく放置されていたようです。崩れかかった状態のところを、様々なご縁が重なって、私たちが引き継ぐこととなりました」と川井さん。

修復には熟練の職人が携わり、また建築士の川井さんや手仕事の得意なニールさんも自ら、作業した。「どうにもならない箇所を除いて、なるべく解体や撤去、交換を避け、補修や再利用をしながら建てられた当時により近い形で再生させました」と話すニールさんは、地下室から見つかったシャンデリアや、室内に残されていたキャビネットなども自身の手で直している。「丈夫で上質、 軽井沢の気候との相性もいい建材を使い、精密な工法で建てられていたことが幸いしたと思います」

33m²弱。小さな家だ。
「山の家では食べて眠り、自然を望めればいい。このくらいがちょうどいいんです」と二人は口を揃えた。

日中しばらくデイベッドに横になり、本を読み、近くを散策して戻って湯を沸かしていると、夕方だ。
「照明はあえて10Wにして夜は薄明かりで過ごしています。電子レンジや冷蔵庫も置いていません。不便であること、何もしない時間を持つことが心の平穏に繋がるのだとこの山荘で知りました」

ヴォーリズが晩年に増築したと思われる、玄関を入って左手の部屋。「崩れかけていたものの、柱が無事だったのを見て、壊してはいけないと思いました。この部屋だけは、和室だったのをヴォーリズ建築の洋館をイメージして一新」
「キッチンは前の家主が交換したよう。でも必要最小限。これはこれで素敵でしょう?」と川井さん。
近くの、解体中だった家から廃棄予定だった洗面ボウルや小物を譲ってもらい、再利用。
上部1枚目の写真の部屋の奥にある小部屋。ニールさんがもともと付いていた回転窓を気に入って修復。裏山の方からわずかな光を取り込み、あとは小さな明かりだけで過ごす。「人ひとりでいっぱいですが居心地がいいんです」
寝室に建築当時からあった二段ベッド。ニールさん曰く「寝台列車をイメージしたそうです。それで上段にも下段にも専用の窓が付いている。サイズはだいぶ小さいのに閉塞感がない。ここで眠るのは大人の僕でもワクワクします」。
家に着くとまずはリビング中央の大きな窓を開け放つ。それから窓枠に腰かけ、虫の声に耳を傾ける。
出典 andpremium.jp
出典 andpremium.jp
川井加世子/ニール・セレスタレストラン&ショップオーナー/レストラン&ショップオーナー

夫婦で東京・吉祥寺と軽井沢でネパールとインドの料理を供する『sajilo cafe』を営む。川井さんは店舗や住宅の設計も手がける。

photo : Kazumasa Harada edit & text : Marika Nakashima

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