1. トップ
  2. おでかけ
  3. 【ラグジュアリーホテル】わずか9室の隠れ家。京都 ザ・シンモンゼンでアート、美食、レイキを体験

【ラグジュアリーホテル】わずか9室の隠れ家。京都 ザ・シンモンゼンでアート、美食、レイキを体験

  • 2026.7.2
©The Shinmonzen

イギリスの「ザ・コノート」「クラリッジズ」など、数々の名門ホテルをかつて所有、修復していた世界有数の投資家で、アートコレクターとしても知られるパトリック・マッキレン氏。友人でもあるというルイーズ・ブルジョワやダミアン・ハーストの巨大な作品を含む3つのアートギャラリーを併せ持つ、南仏のラグジュアリーホテル「ヴィラ・ラ・コスト」で大きな成功を収めた。

その彼が、愛する日本に生み出したホテルが、わずか9室の邸宅ホテル「ザ・シンモンゼン(The Shinmonzen)」だ。小さいけれども、すべてが世界基準の一流。その魅力を紐解く。

建築家・安藤忠雄とともに生み出した、プライベートな邸宅ホテル

©The Shinmonzen

伝統を重んじる京都の中でも、祇園は特別な存在だ。このザ・シンモンゼンが位置するのは、「芸術家の街」として知られ、骨董品の店が立ち並ぶ、ゆかしい新門前通りというロケーション。2024年には日本のアートを世界に発信するLAのギャラリー「ノナカ・ヒル」が開廊、ロンドンで1866年に創業された高級靴メーカー「ジョン・ロブ」のショップがオープンするなど、新門前通りは歴史と伝統を大切にしながらも、その美意識を現代的に解釈して表現する場所として注目を集めている。伝統と革新を生み出す、アートの発信源。世界有数の投資家として知られるマッキレン氏だが、同時に一人の純粋なアート愛好家としての彼の魂が、この場所にどれだけ惹きつけられたかは、言うまでもない。

このプロジェクトが形になるまでに費やした時間は、なんと約10年。建築はマッキレン氏の古い友人でもある安藤忠雄氏が、日本古来の美意識である陰影を大切に生み出した京町家を一からデザインした。入口は安藤氏の手による「S」のイニシャルが描かれた濃紺の暖簾のみで、余計な説明は一切ない。通りに面した入口がありながらも、京都の老舗のようにエクスクルーシブな佇まいが、特別感を演出してくれる。つまりここは、この場所を知る人だけのための「邸宅」なのだ。

©The Shinmonzen

妥協なきホスピタリティは、世界的なホテルを数多く所有してきた名ホテリエとしても知られるマッキレン氏がとても大切にしていること。わずか9室のこぢんまりしたホテルにもかかわらず、サービスは24時間体制だ。

そしてそのおもてなしは、京都駅で新幹線を降りた瞬間から始まる。あらかじめ乗車時間と号車番号を伝えておけば、ホームでスタッフから温かい歓迎を受けて、送迎車へ。その際に特筆すべきは、ゲストエクスペリエンスチームが、単なるコンシェルジュサービスではなく、ゲストへのすべてのサービスをマルチに担っていること。それが「ホテル」ではなく「自分の家に友人を迎える」という考えですべてをキュレーションするマッキレン氏ならではのやり方なのだ。「友人が来た時には、外部の人に頼むのではなく、自分でおもてなしするだろう」というマッキレン氏の言葉が聞こえてきそうだ。

滞在中も、日本語だけでなく外国語も堪能な「ゲストエクスペリエンスキュレーター」と呼ばれるメンバーが、地元の隠れた名所に散歩に連れて行ってくれたり、観光やショッピングのリクエストにも、まるで友達のように相談に乗ってくれる。至れり尽くせり感と、アットホームな温かさも魅力のひとつ。

暮らしとアート、現代と伝統が共存する客室

「スタック」シリーズで知られるイギリス人アーティスト、アニー・モリスのアートワーク。 ©The Shinmonzen

長い回廊は「うなぎの寝床」と喩えられる京都の町家のスタイルを踏襲し、訪れた人を別世界へと導く重要な要素となっている。回廊の片側は安藤忠雄の象徴的なスタイルであるコンクリート打ちっぱなしの壁、向かい合う壁は、町家らしい格子で、伝統と革新を融合するこの建物のテーマが遺憾なく表現されている。館内にはダミアン・ハーストや杉本博司のアートが飾られ、暮らしと芸術がさりげなく共存する、贅沢な時間を過ごすことができる。外観は伝統的であるが、内側は現代の暮らしに寄り添い、過ごしやすさが大切にされている。

©The Shinmonzen

日本の伝統家屋同様に、木と紙を基調としたニュートラルカラーの室内は、和室と洋室のタイプがあり、全室スイートのプライベートバルコニー付き、さらに9室中7室には檜風呂が備わっている。バスルームの壁は大理石、アメニティは組紐をかけた桐箱に丁寧に収められていて、そんなきめ細かな演出にも、日本の職人技への敬意が感じられる。さらに、フランス産の薄紅色の大理石で作られた、ゆったりとしたダブルボウルの洗面台も、ここで過ごす時間の質を約束してくれる。

©The Shinmonzen

アートのセンスで研ぎ澄まされ、現代のミニマリズムが体現された部屋は京都の真ん中にいるとは思えない静けさだ。朝の光が差し込む部屋で、テラスから望む白川のせせらぎや鳥の声に耳を澄ませば、観光客で賑わう祇園とは違う、素の祇園の顔が見えてくる気がする。行き届いたパーソナルなサービスと相まって、ミシュランガイドのホテル格付け「ミシュランキー」で、最高ランクの3キーに次ぐ2キーの評価を得ているのにも納得だ。

テーブルに用意されているスイーツなどは季節に応じて、階下のレストランで作られる。筆者が訪問した際は、優しい甘さの自家製のゆずと蜂蜜のドリンクにいちごのエルダーフラワーのタルト、そして季節の果物がたっぷりと用意されていた。小さな花瓶に活けられたさりげないフラワーアレンジメントも可愛らしく、センスの良い女友達の家に遊びに行ったような、そんなくつろぎが感じられる。 (c)kyoko nakayama

世界が認めた美食体験。巨匠が手がけるファインダイニング

シェフのジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリステン氏。 ©The Shinmonzen

美食を愛すマッキレン氏。南仏の姉妹ホテル「ヴィラ・ラ・コスト」には、広大なヴィンヤードとワイナリーが併設されているほか、ミシュラン三つ星に輝くフランス人シェフ、エレン・ダローズ氏が監修する一つ星レストランがあるが、京都の「ザ・シンモンゼン」も負けてはいない。こちらも実は一つ星店を併設しており、NYのセレブリティシェフ、ジャン-ジョルジュ・ヴォンゲリステン氏の旗艦店「ジャン・ジョルジュ」の流れを汲んだ、その名も「ジャン-ジョルジュ・アット・ザ・シンモンゼン(Jean-Georges at The Shinmonzen)」。

©The Shinmonzen

朝食、ランチ、ディナーは一般のゲストにも開放されており、目の前の白川の流れを楽しみながら、NYをはじめ世界で注目される、アジアのアクセントが効いたモダンなフランス料理を堪能できる。ジャン-ジョルジュ氏のシグネチャーでもある「クリスピー・スシ」など、日本にインスピレーションを受けて生まれた料理はもちろん、京丹波産の黒毛和牛や金時人参、黒七味など、京都らしさを織り込んだ料理も楽しめる。

テイスティングコースもあるが、日本ならではの鮮度を生かした生の魚介類を使った料理「クルード」、「前菜」、「メイン」などから自由に好みのコースを組み立てられる自由さも魅力的。ヴィーガンなどの対応も、事前の相談があれば可能な限り行っているそうだ。

朝食は部屋食にすることもでき、ヘルシーでビタミンたっぷりの各種コールドプレスジュースを選ぶことができたのがとてもうれしかった。ブレッドバスケットも彩り豊か、部屋食でも熱々のエッグベネディクトが楽しめるのも、9室という部屋数だからこそのおもてなしだ。 (c)kyoko nakayama

自らのワイナリーを持つほどのワイン愛好家のマッキレン氏、もちろんワインのセレクションも極上だ。数々の銘醸ワインはもちろん、「ヴィラ・ラ・コスト」内にある自社ワイナリー、「シャトー・ラ・コスト」のオリジナルワインのほか、一旦ワインを醸造してからアルコールを抜く工程を行うことで本格的な味わいが楽しめるノンアルコールワインの「NOOH」など、3000本が揃っている。インターナショナルなスタンダードに合った食を、日本の美意識の中で味わう、まさに特別な時間だ。

宿泊者以外も体験できるアフタヌーンティー

アフタヌーンティーは金曜〜日曜日の14:30もしくは15:00から楽しめる。 ©The Shinmonzen

また、宿泊しなくてもこのザ・シンモンゼンの空気に触れることができるもうひとつのチャンスが、「ジャン・ジョルジュ・アット・ザ・シンモンゼン」でのアフタヌーンティーだ。

フランスで研鑚を重ね、数多くのラグジュアリーホテルで腕をふるった、エグゼクティブペストリーシェフの太刀掛功二氏によるアフタヌーンティーは、繊細な見た目はもちろん、食材の組み合わせにもどこかフランスの香りを感じる。生地やクリームなど、一つひとつの仕上がりもとても丁寧だ。

8月30日までの期間限定で、京都のパティスリー&イノベーティブレストラン「アッサンブラージュ カキモト(ASSEMBLAGES KAKIMOTO)」のオーナーシェフ、垣本晃宏氏とのコラボレーションによるアフタヌーンティーを提供。チョコレートの世界大会「ワールドチョコレートマスターズ」で評価を受ける垣本氏によるチョコレートロールケーキなど、世界が認めた味を楽しめる。 ©The Shinmonzen
©The Shinmonzen

また、「八雲茶寮」「Higashiya」などで知られるデザイン会社「シンプリシティ」がフランスで手がけるブランド「OGATA」を逆輸入。館内で楽しめるお茶はもちろん、オリジナルの茶道具や、生菓子以外になるが、お土産にもぴったりの「Higashiya」のお菓子も購入可能だ。

©The Shinmonzen

ちなみに、「OGATA」のお茶はルームサービスでもオーダーでき、柚子とクロモジの香りをつけた煎茶「果(KA)」など、それぞれに日本らしい名前のついたオリジナルのブレンド茶で、日本茶の新たな魅力に気づかせてくれる。

京都発祥のヒーリング療法「レイキ」でマインドフルな時間を

世界のラグジュアリーホテルで、今注目されているのはウェルネスへのアプローチだ。そして、ザ・シンモンゼンで行われているウェルネスプログラムはとてもユニーク。今、アメリカを中心に海外で人気の、京都発祥のヒーリング療法「レイキ」が体験できるのだ。

元々レイキとは大正時代に京都の山間部、鞍馬で断食修行をしていた臼井甕男(うすい・みかお)氏が始めた、気のバランスを整え、免疫力や自然治癒力を高めるというヒーリング療法のこと。ザ・シンモンゼンの地下のスパエリアで施術してくれるのは、この道18年の衣斐裕一氏。施術を受ける人の身体に手をかざすことで、身体に滞っていたり、バランスが悪くなってしまっていた気を流し、心身ともに、本来のバランスの取れた形にしてくれるのだという。

「人はどうしても『ある』ものに目を向けがちである。でも、ないこと=『空』の豊かさに気づいていない。たとえば、花をお供えすることは、身銭を切って、財布は空になる。しかし、空になることで新しいエネルギーが入ってくる。煩悩を手放す大切さも、このレイキ療法の考えのひとつだ」と衣斐さんは語る。

レイキの施術者、衣斐裕一氏。 (c)kyoko nakayama

筆者はレイキを体験するのは実は初めてだったが、手をかざしていただいたところが、太陽で温まった布団にくるまれたようにポカポカと温かくなり、確かに体の循環がよくなった気がした。

仕事で忙しく世界を飛び回るマッキレン氏のようなビジネスパーソンは、常に目の前の目標や対処しなくてはならない物事、つまりは「ある」ものに向き合う毎日を送っていると言えるだろう。意識を思い切り「ない」ものに向ける時間は、そんな日々とバランスを取るためにはとても重要なはずだ。それをそっと後押ししてくれるのが、この「レイキ」なのではないだろうか。

“パワースポット”としての宿泊場所

©The Shinmonzen

ただ泊まる場所を超えた「ザ・シンモンゼン」での宿泊。それはアート愛好家でありながら、忙しいビジネスパーソンでもあるマッキレン氏自身が、旅する際に「こうあってほしい」という理想の集約でもあった。土地に根差した美意識に敬意を払ったデザインを通し、その街に流れる気を十分に取り入れながら、多くの気づきをもたらしてくれること。また、コンシェルジュチームが培ったネットワークで、初めて訪れる人にとってなかなか敷居の高いこのアートと職人技の街が、まるで第二の故郷のように迎えてくれる。心から安らげる信頼できる友人の家のように「ただいま」と帰ることができる関係性だ。

旅は自己変革の手段でもある。普段とは異なる環境に身を置くことで、自己を見つめ直し、心身をリフレッシュする。そんな時に求められるのは、ただの「宿泊場所」ではなく、明日へのエネルギーをチャージする、一種のパワースポットなのだろう。お金では買えない関係性と気づき、それこそが今世界の一流を知る人たちから求められている価値だと言えるのかもしれない。

ザ・シンモンゼン(THE SHINMONZEN)
京都市東山区新門前通西之町235
tel./ 075-533-6553

元記事で読む
の記事をもっとみる