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【ニューオープン連載】蒲田が日本のサン・セバスティアンに? ピンチョス&シードル専門店「ロベル」でスペイン没入体験!

  • 2026.6.30
Satoshi Fukuda

常に進化を続けている東京のレストランシーンの“今”を紹介する連載。初回のホテルダイニングに続き、今回、2人が注目したのは「スペイン料理」。日本食材とスペイン伝統料理を融合させたお店や、ピンチョスがずらっと並ぶ本場顔負けの店、マドリッドの伝統料理を楽しめる話題店など、専門性をプラスした、今まさに行くべき3つの名店をご紹介。

2店目は蒲田に現れた「ロベル」。美食の街として知られるスペインのサン・セバスティアンにいるような気持ちが味わえる店とは?

Photo : SATOSHI FUKUDA Editor : SATOKO UDA

Satoshi Fukuda

蒲田の地に誕生した、本格スペインバル

平日の17時のオープンと同時にひっきりなしに客が訪れ、グラスをかたむける。蒲田に昨年オープンした、ピンチョスとシードルをコンセプトにした立ち飲みバル「lober(ロベル)」でのことだ。

店内のショーケースに並ぶのは、なすやピーマンのグリルやそら豆のオムレツ&ハモンセラーノ、舞茸とかにかまなどがパンの上にのったものなど色とりどりのピンチョスが20種類ほどずらり。

生牡蠣に加え、亀の手(甲殻類の一種。塩ゆでしたものをスペインではよく食べられる)まであり、まるで美食で有名なバスク地方のサン・セバスティアンやビルバオの街角のバルに来たかのようだ。

Satoshi Fukuda

バスクで人気の料理をアレンジしてオリジナルのおいしさに

ピンチョスのなかには、バスク地方の有名バルの名物をベースにしたものもあり、「これはサン・セバスティアンのバル『Gandarias(ガンダリアス)』 の定番の鴨とアプリコットと紫玉ねぎのピンチョスを、鴨と黄桃、紫キャベツで再現しています。こっちはビルバオの『Gure Toki(グレトキ)』 のイディアサバルチーズのスープのアレンジ。その店ではうずらの卵を使っていますが、ここではハーブで育てた鶏の『よかもよか卵』の全卵を半熟にして、食感を出すためにクルトンを加えています」と、スタッフが説明してくれる。

バスク地方に行ったことがなくても、現地を旅しているような気持になれるのが楽しい。

左上 姫サザエのパセリバター(¥700) 右上 フォアグラとよかもよか卵のパタタ(¥1,600) 下 イクラとアンチョビのブリオッシュ(¥800) シードル(グラス)¥700~

Satoshi Fukuda

日本料理から転身。スペイン料理界の風雲児?!

この店を手掛けたのは蒲田の人気スペイン料理店「Flowers & Spanish Sonrisa(フラワーズ&スパニッシュ ソンリサ)」や、生花店とナチュラルスペインワインのバーの融合店「JUURI(ユーリ)」のオーナーシェフでもある上田光嗣さん(写真左)。

上田さんはもともと日本料理出身。独立前に8年間働いていた割烹で、天然の山菜やきのこ、ジビエ、すっぽんなど、国内のとびきり上質な天然食材を扱っていたこともあり、1号店「ソンリサ」では、スペイン料理の調理法はそのままに、そういったこだわり食材を組み合わせた、唯一無二のスペイン料理を提供してきた。

その感性は「ロベル」でも生かされており、どの料理を食べても食材の組み合わせの妙の新鮮な驚き、ワクワクがある。

例えば「天然ふきのとうのサルサヴェルデ」(春限定メニュー)は、通常パセリを使用してサルサヴェルデにするところを、ふきのとうを主役にし、あさりのだしで煮崩したじゃがいもと合わせ、山菜の苦みがアクセントとなり、滋味深い余韻が後を引く味わいだ。

Satoshi Fukuda

スペイン伝統の味に日本の食材の個性をプラス

「スペイン料理っていうと、日本では一般的にオムレツやアヒージョ、パエリヤというイメージが強いかもしれないですが、僕が通う現地の小さなバルでは、伝統料理に工夫を凝らして、自由な発想でオリジナリティを出しています。尖っているクリエイティブなものも多い。同様に『ロベル』では、伝統的なスペイン料理の手法に日本の個性的な食材を取り入れて、僕たちのオリジナリティを表現している。サン・セバスティアンやビルバオのピンチョスバーがひしめくなかで営業しているつもりでやってます」と上田さん。

ピンチョスをオーダーすると、提供前にトースターで温めてくれるので、作りたてのような香りや食感が楽しめるのがうれしい。実際、ピンチョスの作り置きは最低限にしているため回転が速く、作ってからそんなに時間がたっていないものがショーケースに並ぶように工夫しているのだとか。また、黒板メニューに書かれているのは、「イクラとアンチョビのブリオッシュ」(前出)や、スペイン風リゾットである「浅利と春菊のカルドソ」(写真左¥1,400)などは注文を受けてから調理する料理群で、メインディッシュになるような野趣あふれるガリシア牛の赤身のステーキ(後出)やアラゴン地方の伝統的な炒め煮である大山鶏のチリンドロンもある。

Satoshi Fukuda

ドリンクはこだわりのシードルで乾杯!

お店の看板に掲げている「シードル」だが、なぜスペイン料理にワインでなくてシードル?と思ったのは、私だけではないはずだ。

「実はバスク地方とアストゥリアス地方でシードル生産が盛ん。なかでもサン・セバスティアンの町中から車で10分ほどのアスティガラガは、シードルの都と呼ばれるほど。街中にあるシードルハウスと呼ばれる醸造所では、なかで飲んだり食べたりできるような社交の場になっているんです」と上田さん。「そもそもシードルはワインに比べてアルコール度数が4~9度と低いものが多く、食中酒として気軽に飲める。スペインやフランス以外でもシードルは世界中で造られていて、日本でもシードルの生産者が増えています。りんご果汁100%、野生酵母で発酵・熟成させた、おいしいシードルの魅力が広まるといいなとずっと感じていて、店では約120種類のシードルを揃えています。グラスでは常時スペイン産2種、フランス産2種、日本産2種、そのほかの国のシードル2種の合計8種類グラスで飲めます」

シードルと一概にいっても味わいは千差万別。酸の強いフレッシュなものからフルーティで甘みのあるものまで、 ぶどうやホップ、唐辛子が入っているものなどバラエティに富み、軽やかでスルスル飲める。そのほか、バスクのナチュラルなチャコリや赤ワインもあるので、ワイン党も満足できるラインナップだ。

「ガリシア牛のステーキ」(¥1,600)

Satoshi Fukuda

蒲田が日本のサン・セバスティアンに

上田さんが、ピンチョスの店をやろうと思い立ったのは、長年、拠点にしている蒲田という場所への強い思いもある。「バスクのサン・セバスティアンやビルバオは美食の街として知られ、バルホッピングが有名な場所。蒲田も同様、はしご酒が文化としてあります。他の店を訪れる延長線上で『ロベル』に寄って、軽く飲んでつまんでスタッフやほかのお客さんと談笑するような、そんなはしご酒のルートの1軒になってほしいと思っています」。

蒲田には町工場があることから、職人さんに店のパーツの金属を作ってもらったり、店の黒い床のモルタルには水の代わりに蒲田の名物温泉「黒湯」が80リットル練り込まれている(かなりクレイジー!)。蒲田にまつわるそういった話を聞くことができるのも魅力だ。

「いつの日か蒲田が、世界から“日本のサン・セバスティアン”とか“日本のビルバオ”と呼ばれるようになるのが夢です」と上田さんが話すように、蒲田駅の喧騒から一歩足を踏み入れると、そこは赤提灯の世界。焼き鳥やモツを香ばしく焼く煙のなか、ハイボールや焼酎、ビールで喉をうるおしているおじさんたちの聖地であるのは知らずもがな。加えて、「ロベル」に地元の親子連れや若者カップル、シニア世代までさまざまな人が訪れ、ピンチョスを片手に楽しそうに過ごしているのを見ると、そんな日が近い将来、本当に来るかもしれないと思わされるのだ。

lober(ロベル)
住所/東京都大田区蒲田3-17-26 伏田ビル1F
営業時間/17:00~翌1:00(年内に13:00~22:00に変更予定)
電話番号/03-6424-5521
定休日/日曜、月3日間不定休あり(SNSで要確認)
Instagram/@lober.pintxos.sidra

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