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【50㎡以下】日本の建築家が手掛けた、狭小住宅の可能性を広げるスモールハウス4選

  • 2026.5.11
Takuya Seki

限られた面積の敷地に家を建てるなら?気鋭建築家のアイデアが光る、個性的な4軒に注目。『エル・デコ』2026年4月号より。




Daici Ano

Retreat House/アリイリエアーキテクツ

北海道砂川市にあるコスメブランドSHIROの工場兼ショップ「みんなの工場」を手掛けたことでも注目を集める、アリイイリエアーキテクツ。2024年に竣工したこの住居は、三方を建物で囲まれた駐車場1台分ほどの敷地に立つ、幅2.6m、奥行き11mの狭小住宅だ。

<写真>入り口の引き戸を開けるとすぐにキッチンが広がる。ここを家族が集う家の中心とした。階段の奥が隣家の隙間から光が入る小さなリビング。

Daici Ano

都市の隙間に佇む隠れ家

「雑音から逃れた小さな家がほしいというオーナーの要望に対して、中央の大きな収納の周りを半階ずつずらした床がぐるぐる取り巻く構成を提案しました。半階のずれで隣の家との視線が合わないよう調整。収納の奥行きは扉のない部屋同士を隔てる役割も兼ねています」 水回りは地下階にまとめ、ダイニングルームや玄関はあえて設けていない。その代わりに扉を開けてすぐの場所にキッチンを設置。この空間が家族が集まる家の中心となり、街との接点ともなった。個室のない大胆なデザインが、心地よいコミュニケーションを生んでいる。

<写真>外観は白を基調にしたシンプルな佇まい。住宅街に溶け込みつつ、すがすがしい存在感を放つ。格子状の門扉と引き戸、カーテンが外の道路との境界をゆるやかにつくる。

Daici Ano

<写真>中央の木の構造物が収納で、これを囲むように階段が配された。家の面積の小ささに対して、収納を大胆なサイズにすることで空間を認識する際にいい意味で混乱をもたらす。これにより、天井が実際よりも高く感じられる。

Retreat House

設計/アリイイリエアーキテクツ
構造/木造、一部鉄骨造
敷地面積/47.71㎡
延床面積/66.43㎡
地下1階/11.16㎡ 1階/26.67㎡ 2階/28.60㎡

Hearst Owned

入江 可子(アリイリエアーキテクツ)
1984年東京都生まれ。2013年から2017年までシーラカンスアンドアソシエイツに在籍した後、2017年にアリイイリエアーキテクツに参加。

有井 淳生(アリイリエアーキテクツ)

1984年神奈川県生まれ。2010年から2015年までシーラカンスアンドアソシエイツ在籍。2015年にアリイイリエアーキテクツを設立。

SASAKI KEI

nakano/山田紗子建築設計事務所

4月16日より、TOTOギャラリー・間での初個展『山田紗子展 parallel tunes』の開催を控え、建築のみならず空間構成やインスタレーションでも活躍する山田紗子。2024年に完成した住居は密集した住宅街に建てた狭小住宅だ。 オーナーの希望は外殻をRCでつくること、猫が遊び回れるようにというシンプルなもの。生活に必要な設備を置き、階段や手すり、ベンチなどをコンクリートの床から立ち上げるように一体化してつくった。

<写真>3階から螺旋階段とキッチンを見下ろす。重厚感のあるコンクリートの層が重なり、その間を住み手が選ぶ家具や生活感がつなぐ。「生活と自然は、常に建築と緊張関係にあります。それらは共存し時に結びつきますが、決して混ざり合うことはない。建築が生活を誘発し、生活が建築を強固にする。この家では、そのような関係性を築くことを目指しました」と山田。

SASAKI KEI

感覚的な広がりをつくり出す

その他は住み手自らが手を加えて整えていくことに。 各設備は家のサイズに対して大きめにとり、各要素がどこまでつながり、どこで終わっているかを判然とさせないことで、実面積とは異なる感覚的な広がりをつくり出した。「自分の家のはずが自分のものでない。誰のものでもなく、街や山のようにただそこにあるものとして感じられるような設計を目指しました」と語る山田。小さくとも雄大で重厚感のある家が完成した。

<写真>階段下は本棚に、その横にはコンクリートで立ち上げたカウンターテーブルがある。

SASAKI KEI

<写真>外壁はモルタル左官仕上げ。ソリッドな輪郭が印象的だ。建築面積は約26㎡の3階建て、開放的なテラスも設けた。

nakano

設計/山田紗子建築設計事務所
構造/RC造
敷地面積/46.29㎡
延床面積/52.11㎡



Hearst Owned

山田紗子(山田紗子建築設計事務所)
1984年東京都生まれ。大学でランドスケープデザインを学び藤本壮介建築設計事務所に勤務後、東京芸術大学大学院に進学。2013年山田紗子建築設計事務所を設立。

Takuya Seki

Freedom House/アルテック&アキチ アーキテクツ

東京の静かな住宅地に立つ、コンクリート打放しの「自由な家」。2023年に86歳で逝去した建築家・阿部勤の遺作であり、アキチ アーキテクツと共同で設計された。敷地面積は駐車場約2台分ながら、開放感がある住まいだ。

<写真>コンクリートにぽっかりと穴が開いているような外観。1階は地面より65㎝掘り下げている。外壁と内壁はコンクリート打放しで統一し、テラスはレンガタイルで仕上げた。外構の植栽も相まって、どことなく東南アジアのような雰囲気を感じる。

Takuya Seki

おおらかに暮らすための設計

「内と外の空間を重ねて小さな家を大きく住む。豊かな半屋外空間は、生活を拡張する奥行きをつくり、さまざまな変化を許容します」と吉田。内と外をつなぐという考えは建築の構造だけでなく、家の機能にも反映されている。

なぜなら家主は一人暮らしだが自身が一人で使用しているのは3階のみ。1階は貸室、2階はシェアスペースとした。当初から小さなコミュニティをつくる手段として、家を建てようと考えていたオーナーは「私たち」の家と呼び、いろいろな人間関係が流入することを楽しんでいる。 住み手と3名の建築家の寛容な思想が映された家は、内外をつなぐおおらかさを持っている。

<写真>3階にあるコンパクトで充実したキッチン。キッチンの窓からは屋外の緑が見え、ここでも内と外のつながりを感じる。3階の上には屋根裏があり吹き抜けになっている。

Takuya Seki

<写真>3階の住居部分からテラスを見る。テラスは室内と連続性があり、生活空間の一部に。

Freedom House

設計/阿部勤(アルテック)、吉田州一郎+吉田あい(アキチ アーキテクツ)
構造/RC造
敷地面積/37㎡
延床面積/57.64㎡ 1階/18.90㎡ 2階/18.90㎡ 3階/19.84㎡

MAKIKO NAWA

阿部勤(アルテック)
1936年東京生まれ。早稲田大学理工学部建築科卒業後、坂倉準三建築研究所勤務。1975年アルテック建築研究所を共同設立。1984年アルテック設立。2023年、86歳にて逝去

Hearst Owned

吉田 あい(アキチ アーキテクツ)
1980年広島県生まれ、大阪府育ち。2007年早稲田大学大学院修士課程修了。クライン ダイサム アーキテクツ、スピークを経て、2015年にアキチ アーキテクツ設立。

吉田州一郎(アキチ アーキテクツ)

1974年長崎県生まれ。1997年慶応義塾大学経済学部卒業。2005年早稲田大学大学院修士課程修了。設計事務所、鉄鋼メーカー勤務を経て、2015年アキチ アーキテクツ設立。



SHOTA HIYOSHI

Green House/青木真研究室

2025年に自身の建築事務所を設立したばかりの建築家・青木真は、驚きのある新しい場所を生み出すことを目指して活動している。その目標を体現する、インパクトのあるスモールハウスが昨年1月に完成した。 まるで小さな家が意思を持ち、集合しているような外観。敷地は住宅地の緑道に面していたため、緑と呼応するように設計した。

<写真>異素材、平面と曲面が交ざり合う有機的な設計が特徴。「散歩道を歩く地域の人々に対しても、生活の背景の彩りになってくれることを期待しています」と青木。

SHOTA HIYOSHI

「道に対してセットバックし、緑道と連続した小さな前庭とテラスを設けています。外観は銅と木という経年変化する素材を用いて流れる時間を楽しむ家にしました」と青木。道路幅が広く北向きに接するため斜線や日影による高さ制限がなく、その分、建物に高さを出せた。さらに外観からもわかるように、小さな窓を多数設けたため、室内にはさまざまな方向から自然光が差し込む。外観の楽しさに加えて、心地よさと開放感を兼ね備えたユニークな一軒家が誕生した。

<写真>玄関から入ってすぐの1階のダイニングキッチン。木造の柱を生かして囲むようにオリジナルのテーブルを造作した。キッチン上はロフト。

SHOTA HIYOSHI

<写真>2階にバスルームなど水回りを集約した。「内部は小さなニッチが立体的につながる一室空間」と語るように、各部屋を仕切る壁は少なく、それぞれに連続性があり開放的。インテリアは外観のユニークさとは相反して木と白を基調にシンプルにまとめた。

Green House

設計/青木真(青木真研究室)
構造設計/山辺豊彦、馬場淳一(山辺構造設計事務所)
構造/木造
敷地面積/49.59㎡
延床面積/69.65㎡ 地下1階/23.64㎡ 1階/22.38㎡ 2階/22.86㎡

SHOTA HIYOSHI

青木真(青木真研究室)
1993年東京都生まれ。2019年東京大学大学院工学系研究科建築学専攻修了。隈研吾建築都市設計事務所を経て、2025年青木真研究室を設立。


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