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駅員と目が合い、改札手前で急に立ち止まる中学生。タッチすると…『ピヨピヨ』→駅員が取った対応とは

  • 2026.7.9
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。元鉄道駅員の川里です。

今回は、私が駅員時代に体験した「お客さまの不審な挙動」をご紹介します。改札口を不正に通過しようとしている方は、案外わかりやすいものだと感じたエピソードです。

自動改札機があるのに駅員がいる理由

「お客さまをよく観察しろ」とは接客業の指導でよく使われる言葉のひとつだと思いますが、駅員もその例外ではありません。

お客さまが電光掲示板を見つめていれば「乗り場がわからないのかな」と想像できますし、券売機の前で固まっていれば「使い方がわからないのかもしれない」と予想できます。

予想はできても、実際にお声がけなどの行動に移せるかとなると話は別で、ほかのお客さまの対応や別件の業務などで手がふさがっており、なかなかお声かけできないときが多いのも事実です。

実際、機械での解決を諦めて、有人改札やきっぷ売り場にできた長蛇の列に並ぶお客さまを何人も見てきました。

お客さまをしっかり観察するのには、もうひとつの理由があります。それは、正しいきっぷを持ったお客さまが改札口を通過しているか確認することです。

鉄道のルールは複雑なので、「不正乗車しよう」というつもりがなくても、うっかりルール違反をしてしまう場合もあります。

そのようなお客さまを見つけて正しいルールを知らせ、時には足りない運賃をいただいたり、きっぷを買いなおしていただいたりします。

ヒヨコのさえずり

あるとき、ホームのある2階からエスカレーターで改札口のある1階へ1人のお客さまが下りてきました。

近隣の中学校の制服を着ています。そのお客さまは、改札口に立っていた私と目が合うと足を止め、壁際でスマートフォンを取り出しました。

「改札口はもう見えているだろうに、あんなところで立ち止まるなんて」

なんだか不思議な違和感が、徐々に強くなっていきました。まるで私が持ち場を離れ、改札口に係員がいなくなるのを待っているかのようです。やがて待つのに耐えきれなくなったのか、ポケットからパスケースを取り出してこちらへ近づいてきました。

このお客さまはIC定期券、または事前に現金をチャージして使用するICカードを持っていたようです。

改札機にタッチし、通過しようとします。そのとき、自動改札機から「ピヨピヨ」という、ヒヨコの鳴き声のような電子音がしました。

違和感のある反応

「ああ、そういうことか」と、なかなか改札口に来なかった理由を察し、私はお客さまを呼び止めました。

「お客さますみません、ちょっとカードを確認させてください」

私は声が大きい方ではありませんが、明確に伝わる声量で呼び止めたはずです。ところが、お客さまはまるでなにも聞こえていないかのように、一瞥もせず歩き去ろうとしました。

「あの、すみません!」
私が数メートル走って追いつき、肩を叩いてようやく立ち止まってもらえました。

「いまタッチしたカードを見せてもらえませんか?」

お客さまがパスケースに入れていたそれは、大人運賃の半額が運賃として差し引かれる小児用のICカードでした。

グレーな不正使用

「お客さまは中学生ですよね? 小児用の運賃で乗れるのは小学生までなんですよ」

お客さまは淡々とした、感情の読み取れない声で返しました。

「あ、そうなんですか」

「はい。なので大人分の運賃との差額をいただきたいんですが、このカードの残額からいただいてもよろしいですか?」
「わかりました」

日本の裁判では、明らかに有罪だといえる確証がなければ無罪とする「推定無罪」の原則がありますが、接客業はそれがより顕著です。

このケースは厳しい判断をするならICカードの不正使用なのですが、故意に安い運賃で乗車しようとしていたとはいえないので、正規運賃との差額さえいただけば、それ以上のペナルティは課しようがありません。

しかしながら、私にはこの方が「駅員のいない間に改札口を通り、運賃を安く済ませよう」としていたように感じられたのです。

もちろん、単に考え事をしていて声が聞こえなかっただけかもしれませんし、ご家族のカードを間違えて持ってきてしまっただけかもしれません。

しかし、まっすぐ改札口に来なかったことや、呼びかけへの反応などを総合すると、駅員としてはどうしても『故意なのではないか』と職務上警戒してしまうケースでした。

カード情報を確認するサインはほかにも

ICカードの情報を駅員が確認する方法は、ヒヨコの鳴き声だけではありません。ICカードをタッチすると、自動改札機のランプが点灯します。このランプの色で、タッチされたICカードの大人・小児の区分や割引情報(主に学割)を確認できるようになっているのです。

もっとも、毎日数え切れないほどの人が通過する改札口で全員分のランプを確認しているわけではありません。駅や会社によってはもしかしたら違うのかもしれませんが、少なくとも私が経験した駅ではランプはそれほど重要視されておらず、念のため存在する程度の扱いでした。

では、なぜ音やランプでICカードの情報がわかるようになっているのでしょうか? 今回紹介したような方法での不正使用を防ぐこと以外にも、理由があります。実は、IC定期券や記名式のICカード(※無記名式のICカードは除く)はお客様同士での貸し借りができません。

たとえ運賃が同額の区間であっても、カードに印字された所有者以外の方が使用するとルール違反になってしまうので、所有者以外がカードを使っていないか確認できるようになっているのです。


ライター:川里隼生

鉄道会社の駅係員として8年間、4つの駅を経験しました。コロナ禍やデジタル化を通して移り変わってきた、会社としての鉄道サービスの未来像と、お客様それぞれが求めている鉄道サービスのあり方の両方から学んだことを記事にしていきます。


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