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「実はね、トイレの失敗が増えたから…」猛暑の老人ホームで“様子がおかしい女性”介護士が引き出した本音に涙…

  • 2026.7.9
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

真夏のある日、いつもと様子が違う利用者様を見て、真っ先に熱中症や脱水を疑いました。

しかし、会話や小さな仕草から見えてきたのは、体調不良だけではない別の事情でした。「迷惑をかけたくない」という思いを抱え、一人で悩んでいた利用者様。

利用者様の小さなサインに気づき、その奥にある思いへ寄り添うことの大切さを改めて感じた出来事です。

「いつもと違う」が気になった朝

これは、私が有料老人ホームで働いていた真夏の出来事です。

いつも居室で過ごされている女性利用者様のもとへ、朝の挨拶に伺いました。

その日は、どこか元気がない様子でした。

真夏だったこともあり、まず頭に浮かんだのは熱中症や脱水です。室内の冷房は適切に効いており、提供している水分量の記録を確認しても、大きな問題は見当たりませんでした。

ただ、高齢者は暑さや喉の渇きを感じにくく、室内でも脱水を起こすことがあります。「何事もなければいい」と思いながら、いつも以上に様子を気にかけていました。

その日は女性利用者様の入浴日でした。

お誘いに伺うと、「風邪っぽいので、今日はやめておきます」と静かに話されました。

体温や血圧を測定しても異常はありません。

お風呂が大好きで、普段は誰よりも楽しみにされている方です。それだけに、その日の様子には「小さな違和感」が残りました。

小さな仕草が教えてくれたこと

その後も利用者様が気になり、様子を見ながらしばらくお話をしていました。

すると、女性が何度も首元を掻いていることに気づきました。

襟元から少しだけ赤くなった肌が見えています。

「首元は大丈夫ですか」と声をかけると、「あぁ、これは……」と少し困ったような表情をされました。

看護師と一緒に確認すると、首元は広い範囲で赤くかぶれていました

首元まで覆う服を好んで着用されていたため、汗がたまり、かぶれてしまっていたようです。

女性は「掻いて赤くなってしまったから、ほかの利用者さんに見られるのが恥ずかしくて」と話してくださいました。

その日は、ほかの利用者様の入浴が終わってから、最後にゆっくりご案内することになりました。

隠していたのは体調だけではありませんでした

安心されたのか、その後、女性はぽつりぽつりと胸の内を話してくださいました。

「実はね、トイレの失敗が増えたから、水分を控えていたの。」

当時の施設では、居室へお届けした飲み物の量をもとに水分量を記録していました。しかし、居室で過ごす時間が長い利用者様の場合、実際にどれだけ飲まれたかまでは把握できないこともあります。

女性は、失禁が増えたことでスタッフに迷惑や心配をかけたくないと思い、自分で水分を控えていたのでした。

「自分でできることは自分でしたい。」

そんな思いを大切にされていた方だからこそ、誰にも相談できず、一人で抱え込んでいたのだと思います。

本当に気づくべきだったもの

あの日、私が最初に疑ったのは熱中症や脱水でした。

結果として、首元のかぶれにも気づくことができました。

けれど、本当に気づくべきだったのは、「迷惑をかけたくない」という女性の思いだったのかもしれません。

介護の現場では、体温や血圧、水分量などの記録はとても大切です。

一方で、数字だけでは見えてこないこともたくさんあります。

何気ない会話や、ふとした仕草、いつもとの小さな違い。その積み重ねが、利用者様の本当の気持ちに気づくきっかけになることがあります。

あの日の出来事は、目の前の変化だけでなく、その変化の背景にある思いにも耳を傾ける大切さを改めて教えてくれました。


文:しまむらけいこ/介護福祉士・Webライター 

介護福祉士として10年以上、デイサービスや入所施設などさまざまな介護現場で経験を積む。現在も介護職として働くかたわら、Webライターとして活動。介護や暮らし、働き方について発信している。二児を育てるワーキングマザー。


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