1. トップ
  2. 暮らし
  3. 「なぜ私にも過失が出るんですか!」0:10を主張した50代男性、自ら提出したドラレコに映っていた“3つの真実”

「なぜ私にも過失が出るんですか!」0:10を主張した50代男性、自ら提出したドラレコに映っていた“3つの真実”

  • 2026.7.20
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

交通事故に遭っても冷静でいられる。そんな人の方が、もしかしたら少ないのかもしれません。

「なぜ私にも過失が出るんですか!」

こちらの保険会社の契約者であるAさん(50代・男性)は、電話口で何度もその言葉を繰り返しました。

Aさんは交差点内での事故について、事故担当者である私に「自分は完全な被害者だ」と主張。しかし、その後Aさんから提出されたドライブレコーダーの映像には、Aさん自身も語っていなかった事実が映り込んでいたのです。

双方の主張

現場は片側2車線の道路が交わる交差点の中。乗用車を運転するAさんは一番左の第1車線を直進中に、対向車線から右折してきたBさん(30代・女性)の乗用車と接触しました。

Aさんの主張は次のようなものです。

「青信号で直進していたら、確認もせずに右折してきたBさんにぶつけられた。こちらに落ち度はない。0:10のもらい事故のはずだ!」

声を荒らげるAさんに、私は「同じような事故では、基本の過失は2:8(Aさん:Bさん)とされています。まずは事故の状況を整理しましょう」と説明しましたが、あまり納得はいっていない様子でした。

一方のBさんは「Aさんの信号無視です」と、淡々と説明。自身の無過失を主張しました。

聞き取りの中で生まれた違和感

私はまず、契約者であるAさんから事故の詳細を聞き取ります。事故現場はどこか。信号は完全に青だったのか。速度はどれくらい出ていたのか。周囲の車との位置関係はどうだったか。

実は、事故現場の場所を地図で調べた時点で、私の中にはある疑問が湧いていたのですが、この時点ではまだ口にはしませんでした。

Aさんは当初、スラスラと質問に答えていましたが、信号の色の話になった途端、「どうだったかな」「はっきり覚えていない」と、急に歯切れが悪くなったのです。

もちろん事故当時のことなど、詳細に覚えていないケースはよくあります。そのため、私は双方にドライブレコーダーの提出をお願いしました。

Bさんは快く応じ、Aさんも「Bさんが出すなら、こちらも出す」と、やや感情的ながらも映像を出してくれました。そして記録されていた映像は、私が抱いていた疑問のすべてに答えるものだったのです。

映像が映していた「3つの事実」

映像には、3つの事実が映っていました。

第一の事実として、Aさんが直進した第1車線。そこは、左折専用レーンだったのです。つまり、Aさんは指定通行区分違反をしていました。

Aさん自身が、私の聞き取りの中で「第1車線を直進した」と繰り返し申告しており、映像もそれを裏付けています。私が現場の場所を聞いた時点で感じた疑問とは、これでした。

第二の事実。Aさんのドライブレコーダーには、交差点進入時の赤信号がはっきりと映っていたのです。明確な信号無視でした。

第三の事実は、Bさんが話していた「Aさん側の隣の車線の車は止まっていた」という状況がBさんのドライブレコーダーから確認できたことです。これは裏を返せば、Aさんも十分に停止できたという証明でもありました。

つまり、信号が変わった直後だったわけではなく、十分に停止できるタイミングでの赤信号だったことも裏付けられてしまったのです。

結果的にAさんは左折専用レーンを直進したことによる指定通行区分違反に加えて、赤信号無視をしてしまい、Aさんが100%の責任を負う加害事故として認めざるを得なくなりました。

「自分の味方になる」

そう信じたドライブレコーダーによって、自分の2つの違反を証明することになったのです。

感情的になると、事実さえ見えなくなる

誤解のないようにお伝えしたいのですが、過失割合を決定づけたのはAさんとBさんの「態度の差」ではありません。決め手はあくまで、映像に残った客観的な違反の記録です。

ただ、Aさんが特別だったとも思いません。事故直後の動揺の中では、誰しも「相手が悪い」という前提で記憶を組み立ててしまいがちです。そして一度その前提に立つと、自分の運転を振り返ることが難しくなります。

もし事故に遭ってしまったら、一度深呼吸をして、自分が走っていた車線、信号の色、速度を言葉に出して振り返ってみてください。覚えていることは、その場でメモに残しておきましょう。

そのうえで、ドライブレコーダーの映像を自分でも見返してみてください。目的は、自分に有利か不利かを見極めることではありません。動揺した記憶と、実際に起きたことのズレを確かめるためです。仮に不利な事実が映っていたとしても、早く受け止めた方が無用な争いを避けられ、解決への近道になります。

ドライブレコーダーは、相手の違反も、自分の違反も、同じように記録します。だからこそ、感情に飲まれる前に一度落ち着いて、自分の運転を振り返ることが大切なのです。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ