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「朝だけガラガラ鳴るんです」5秒で消える異音を放置した車を待ち受ける“80万円”の代償

  • 2026.7.16
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

朝、エンジンをかけた瞬間だけ「ガラガラ」という金属音が聞こえるものの、数秒後には静かになる。そんな症状を「古い車だから仕方ない」「温まれば消えるから大丈夫」と考えていませんか。

実はその数秒間の異音は、エンジン内部で重大なトラブルが始まっているサインかもしれません。放置した結果、エンジン内部が破損し、高額な修理費用につながるケースもあります。

今回は、私が自動車整備工場に勤務していた頃に修理で来店されたお客様、Aさん(40代男性)の事例をもとに、始動直後だけ発生する「ガラガラ音」の原因と、放置するリスクについて解説します。

「温まれば消えるから大丈夫」が一番危ない

ある日の朝、Aさんが愛車を点検に持ち込まれました。

「朝だけガラガラ鳴るんです。でも5秒くらいで静かになるので、そんなに気にしていませんでした」

実際に一晩置いた車で始動してみると、エンジンをかけた瞬間に「ガラガラガラ」という金属音が数秒間発生。その後は何事もなかったかのように静かになります。

「ほら、もう消えました。走ってしまえば全然普通なんですよ」と、Aさん。

このような症状は珍しくありません。数秒で異音が消えたり、エンジンが温まると再始動時は症状が出なくなったりするため、多くの方が「年式も古いし、こんなものだろう」と考えてしまいます。

エンジンの異音にはオイル不足や他部品のベアリング摩耗などさまざまな原因が考えられますが、今回のケースで特に注意したいのは、エンジン内部のタイミングチェーン系統から発生している可能性です。タイミングチェーンは、クランクシャフトとカムシャフトの回転を正確に同期させる非常に重要な部品です。その張り具合を調整しているのが「タイミングチェーンテンショナー」で、多くの車種ではエンジンオイルの油圧を利用してチェーンのたるみを抑えています。

ところが、テンショナー内部の劣化や油圧保持機能の低下、あるいはチェーン自体の摩耗や伸びが進むと、始動直後の油圧が十分に立ち上がるまでチェーンがたるみ、「ガラガラ」という金属音が発生することがあります。

つまり、「温まれば直る」のではなく、「油圧が上がったことで一時的に症状が隠れている」だけなのです。

放置するとチェーンが歯飛びし、エンジン内部を破壊することも

Aさんには点検結果を説明しました。

「今ならテンショナーやチェーンの交換で済む可能性があります」

するとAさんは少し驚いた表情で、

「音が数秒だけでも交換が必要なんですか?」

と質問されました。

実は、この段階ならタイミングチェーンテンショナーやチェーンの交換で改善するケースも多く、修理費用は車種や損傷状況にもよりますが、数万円から十数万円程度で済むことがあります。しかし、そのまま乗り続けると話は変わります。チェーンのたるみは少しずつ大きくなり、エンジン始動時の衝撃でチェーンがスプロケットの歯を飛び越えてしまう「歯飛び」が発生する危険性が高まります。

歯飛びが起きると、バルブの開閉タイミングとピストンの動きが一致しなくなり、両者が衝突する場合があります。その結果、バルブが曲がったり、ピストンが損傷したり、シリンダーヘッドまで破損したりと、エンジン内部に深刻なダメージを与えることがあります。

ここまで進行すると部分修理では済まず、エンジンのオーバーホールやリビルトエンジンへの載せ替えが必要になるケースも少なくありません。実際の金額は、損傷の程度や車種、部品の価格変動、依頼する整備工場などによって大きく変わりますが、30万〜80万円程度になることもあります。数秒の異音を放置しただけで、修理費用が何倍にも膨らんでしまう可能性があるのです。

毎朝同じ異音が出るなら早めの点検が愛車を守る

エンジンの異音は、「常に鳴っているもの」だけが危険とは限りません。

むしろ始動直後だけという症状は、「まだ走れるから大丈夫」と思い込みやすく、結果として故障を進行させてしまうケースが少なくありません。判断のポイントは、「始動直後だけだから安心」ではなく、「毎日同じ症状が繰り返されているかどうか」です。

もし朝一番の始動時に毎回ガラガラ音が出るようになったら、それは点検を受けるタイミングと考えたほうがよいでしょう。症状が再現しやすい朝一番に整備工場へ持ち込む、あるいはスマートフォンで始動時の音を録音しておくと、原因究明の助けになることもあります。

また、予防のためにはエンジンオイルの管理も非常に重要です。指定された粘度・規格のオイルを使用し、メーカーが定める交換時期を大きく超えないよう心掛けることで、テンショナー内部の油圧保持性能を維持しやすくなります。オイル量の不足や劣化を放置すると、テンショナーの作動不良を招く一因にもなります。

「まだ走れるから」「音はすぐ消えるから」と判断するのではなく、小さな異変の段階で点検を受けることが、結果的には修理費用を抑え、愛車を長く安心して乗り続けるための近道です。朝の数秒間だけ聞こえるガラガラ音は、決して見逃してはいけないエンジンからの重要なメッセージなのです。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


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