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高速料金所手前の接触事故、過失割合3:7→1:9へ…損保担当者が見た“たった2割を覆した決め手”

  • 2026.7.16
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

「たった2割の過失差」

その差が、数十万円もの負担と、愛車を直せるかどうかの分かれ道になることがあります。 

これは私が損害保険会社で事案を担当していた時に対応した、ある事故のお話です。

食い違う「合図の有無」

当事者はこちら側の契約者で、乗用車を運転していたAさん(30代前半・男性)と、相手方である大型トラックを運転していたBさん(40代後半・男性)。

事故が起きた場所は、とある高速道路入口の料金所手前でした。 

料金所手前は、各レーンを目指して進路変更車が交錯する事故多発エリア。Aさんは入るレーンを見定めて直進していました。そこへ、Aさんの右前方を直進していたBさんの大型トラックが急に左へ進路変更。Aさんの車の右側面に接触したのです。

Aさんの主張は、はっきりとしたものでした。

「Bさんはウインカーを出さずに、急に寄ってきた。避けようがなかった」

一方で、Bさんの言い分はこうです。

「進路変更をしたことは間違いないが、ウインカーは当然出した」

争点はただ一つ。「合図の有無」でした。

この事故形態の基本的な過失割合は3:7(Aさん:Bさん)。しかし、もしBさんが合図を出していなかった場合、過失割合は1:9へ修正されるのが一般的です。 

ここで問題となったのは、「それをどう立証するか」でした。Aさんの車にはドライブレコーダーが付いておらず、客観的な記録は相手であるBさんのトラックのドライブレコーダーだけだったのです。

「何も映っていない」そう思われた映像

私は、Bさん側にドライブレコーダーの映像データ開示を依頼。Bさんは渋々ながらも、最終的には映像を提出してくれました。

ドライブレコーダーは、車内・前方・後方を同時に映す3画面タイプのものです。映像を再生すると、BさんがETCレーンの混雑に不満を漏らし、声を荒げている様子が記録されていました。

加えて、車内には大音量でラジオがかかっています。Bさんの声とラジオの音が重なり、合図の有無を判断するためのウインカーの作動音、いわゆる「カチカチ音」はまったく聞き取れませんでした。

通常、ドライブレコーダーでは車の動きは映像で判別し、合図の有無はカチカチ音で判断するケースがほとんどです。しかし、今回のケースではそれが不可能な状態でした。 

音で判別不可能な場合、市街地であればビルに反射するウインカーの明滅光で判別するケースもありますが、今回の事故場所は料金所手前。その方法もできません。

この時点で、Aさんの主張である「Bさんが合図を出していなかった」ことを立証するのは難しいように思われました。

流れを変えたのは、映像に「同時記録」された作動データ

ところが、突破口は意外なところにありました。

トラックやタクシーなどの業務用車両に搭載されるドライブレコーダーの中には、ブレーキやハザード、そして左右ウインカーなどの作動状況を、映像と共にリアルタイムで同時に記録できるタイプがあります。

今回のトラックのものは、まさにこのタイプ。 

記録を再度確認すると、混雑した料金所のレーンの手前で、Bさんが後方確認を十分にしないまま左へ進路を変える様子が映っています。そして、その瞬間には左ウインカーが作動していないことが分かりました。

つまり、「合図を出した」というBさんの主張は、他でもないBさん自身のドライブレコーダーのデータによって覆されたのです。 

Bさんは最終的に過失を認め、過失割合は1:9(Aさん:Bさん)として合意。Aさんは基本過失の3:7から、さらに2割を自分に有利な形で修正することができました。

なぜ、この「2割の差」がそれほど重要だったのか

Aさんの車の修理金額は、約110万円と高額でした。 

仮にAさんの過失が基本割合の3割であった場合、Aさんの自己負担は約33万円。しかし、1割に修正されたことで、その負担額は約11万円に下がりました。その差は、実に約22万円です。

また、この差額は単なる金額の問題ではありません。

「自己負担してでも、修理して乗り続けるか」
「それとも、買い替えか」

こういった、その後の選択肢そのものを左右するのです。

あなたが「Aさん側」になった時のために

今回のケースでは、相手のBさんのドライブレコーダーが真実を語ってくれました。しかし、それはあくまでも幸運が重なった結果です。

もしBさんのドライブレコーダーがなければ、あるいはドライブレコーダーが単なる映像だけを記録するものであったなら、Aさんの正当な主張を裏付けるものは、何もなかったでしょう。

だからこそ、備えておきたいのが「自分の車のドライブレコーダー」です。事故の相手が事実と異なる主張をしてきた時、記録はあなたにとって大きな味方になります。前方だけでなく後方も記録できるタイプであれば、立証する力が増すため、おすすめです。

保険会社によっては、ドライブレコーダーをレンタルできる特約を扱っているため、検討してみるのも良いでしょう。

「もらい事故・相手の過失のほうが大きい事故だから大丈夫」

実はそんな事故の時にこそ、客観的な記録がものをいいます。その備えが、いざという時にあなたを守ってくれるのです。


ライター:スライカズヤ
保険・自動車分野を専門とするライター。損害保険会社で事案担当者として10年間、示談交渉・損害査定・自動車修理の協定業務に携わり、数多くの事故対応の現場に立ってきた。初級技術アジャスター、3級ファイナンシャル・プランニング技能士、損害保険事業総合研究所 本科講座修了。専門性の高い知識を、正確に、分かりやすく伝えることを信条とし、「当事者にならないとわからない」事故と保険のリアルを読者に届ける。


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