1. トップ
  2. 暮らし
  3. 「あと少し放置していたら…」オイルが減るどころか増えていたディーゼル車、整備士だけが気づいた“異変”のワケ

「あと少し放置していたら…」オイルが減るどころか増えていたディーゼル車、整備士だけが気づいた“異変”のワケ

  • 2026.7.15
undefined
出典:photoAC(※画像はイメージです)

元自動車整備技術アドバイザーの松尾です。

エンジンオイルは「減るもの」というイメージを持っている人は多いでしょう。しかし、ディーゼル車では反対にオイル量が増えてしまうことがあります。「減るより増える方が安心では?」と考えて放置してしまうと、実はエンジン内部では潤滑性能が低下し、深刻な摩耗が進行している可能性もあります。

今回は、DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)を搭載したディーゼル車で起こる「オイル希釈」の仕組みと、放置する危険性について解説します。

オイル交換したばかりなのに量が増えている。その理由とは

定期点検でオイルレベルゲージを確認したオーナーは、不思議そうな表情で整備士へ尋ねました。

「オイル交換してまだ間もないのに、ゲージの量が増えているんですが」

通常であればエンジンオイルは少しずつ消費されるため、量が増えることはほとんどありません。整備士が詳しく話を聞くと、その車はDPFを装着したディーゼル車で、毎日の通勤や買い物など短距離・市街地走行が中心でした。このような使い方では、DPFに溜まったススを燃焼させる「DPF再生」が頻繁に行われます。

DPF再生では排気温度を高めるため、通常とは別に軽油を追加噴射します。しかし、その軽油がすべて燃え切るとは限りません。燃え残った軽油の一部はシリンダー壁面を伝い、エンジンオイルへ混入してしまいます。すると、本来減るはずのオイル量が徐々に増えていくのです。

「漏れていないし、警告灯も点いていないから大丈夫だと思っていました」

そう話すオーナーは、オイルが増えていることを「減るよりマシ」と考え、そのまま乗り続けていました。しかし、この状態こそ注意が必要なのです。

オイルが増えるほど危険?実際に起こるエンジンへの悪影響

軽油が混ざったエンジンオイルは、一見すると量が増えているだけに見えます。しかし実際には、オイル本来の粘度が低下し、潤滑性能も大きく落ちています。オイルは金属同士が直接触れないよう油膜を形成していますが、希釈が進むとその油膜を十分に維持できなくなります。

特に負担が大きくなるのが、カムシャフトやクランクシャフトのメタル部分です。さらに、ターボチャージャーは高速回転するため、オイル性能の低下による影響を受けやすく、摩耗や焼き付きにつながる可能性もあります。実際、この車もオイルレベルはゲージの上限を超えていました。整備士がオイルを確認すると、明らかな軽油臭がありました。

「オイル交換だけで済みますか?」

オーナーが心配そうに尋ねると、整備士はこう説明しました。

「今回は内部に大きな損傷は見当たりませんでした。ただ、あと少し放置していたらエンジン内部の摩耗が進んでいた可能性があります」

オイル希釈は静かに進むため、自覚症状が少ないのも特徴です。それでも進行すると、

・始動時のメカニカルノイズが大きくなる
・アイドリング時の振動が増える
・エンジン回転がザラつくようなフィーリングになる

などの症状が出ることがあります。こうした変化が現れた頃には、すでに潤滑性能はかなり低下している可能性があります。

「増えているから安心」は危険な思い込み。早めの点検が愛車を守る

今回の車両では、エンジンオイル交換とあわせてDPF再生状況の診断を実施しました。DPF自体に故障はありませんでしたが、短距離走行が多かったことで再生頻度が増え、オイル希釈が進んでいたと考えられました。DPF搭載ディーゼル車では決して珍しい現象ではありません。

しかし、「オイルが増えているだけ」と軽く考えるのは危険です。レベルゲージが上限を超えている場合や、オイルから軽油のような臭いがする場合は、早めに整備工場で点検を受けることをおすすめします。また、短距離走行ばかりが続く場合は、ときどきまとまった距離を走行してDPF再生が完了しやすい環境をつくることも予防につながります。

さらに、使用状況によってはメーカー指定の交換時期より早めにオイル交換を行うことも有効です。エンジンオイルは「減るかどうか」だけを見るものではありません。「増えている」という変化も、エンジンからの重要なサインです。普段からレベルゲージを確認する習慣をつけ、小さな異変を見逃さないことが、高額修理を防ぎ、愛車を長く安心して乗り続けるための第一歩になるでしょう。


ライター:松尾佑人(二級ガソリン自動車整備士・二級ジーゼル自動車整備士資格保有)
新卒で自動車整備業界に入り、約8年間整備に従事したのち、現役メカニックに向けた故障診断アドバイザーや各種講習の講師として活動。年間約1,200件の技術相談に対応し、電気回路や配線図の読み解きを基盤とした電子制御システムの解説を得意としている。


【エピソード募集】日常のちょっとした体験、TRILLでシェアしませんか?【2分で完了・匿名】

の記事をもっとみる

注目コンテンツ