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実は車のナンバーに「お」「し」「へ」「ん」は存在しない…4文字が除外され続ける、意外と知らない"納得のワケ"

  • 2026.7.13
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

しかし、数字は選べても、その左側にある「ひらがな」までは自由に指定できないことをご存じでしょうか。実はあの1文字には、車の用途を区別する重要な役割が隠されています。

今回は、ナンバーのひらがなにまつわる意外なルールをご紹介します。

愛車のナンバー、数字は選べるのに“ひらがな”は選べない?

1998年から始まった希望番号制度、いわゆる希望ナンバー制度は、2026年現在でも非常に高い人気を誇っています。ご自身の誕生日や結婚記念日、あるいはラッキーセブンなどのゾロ目を愛車に選ぶことで、車への愛着がさらに深まるという方も少なくないはずです。

このように、自分のこだわりや個性を表現できるナンバープレートですが、実はどれほどの手数料を支払ったとしても、私たちの意思では絶対に選ぶことができない部分が存在しています。それが、4桁の数字の左側にそっと配置されている、たった1文字のひらがなです。

希望ナンバー制度の仕組みを詳しく見てみると、私たちが自由に指定できるのは主に4桁以下の数字部分、専門用語で「一連指定番号」と呼ばれる場所だけであることが分かります。ナンバープレートの上部に記載されている地名はご自身の住んでいる地域などによって決まり、その横にある3桁の分類番号は車のサイズや排気量などによって3ナンバーや5ナンバーといったように決まります。そして、今回注目する左下のひらがなについても、ある明確なルールに基づいて自動的に割り振られるため、私たちの意思で自由に選ぶことはできない仕組みになっているのです。

好きな数字を苦労して手に入れたとしても、その隣にあるひらがなだけが選べないのは、少し不思議に感じられるかもしれません。どうせならひらがなも自分の名前にちなんだ文字にしたいと思う方もいるのではないでしょうか。

しかし、なぜひらがなだけは一律で選べないようになっているのでしょうか。その背景には、日本の道路交通を安全かつ円滑に管理するための、非常に重要で合理的なシステムが隠されています。

ひらがなは“車の用途”を示す重要な暗号だった

私たちが道路で日常的に目にするナンバープレートのひらがなは、決して見た目のバランスを整えたり、数字を際立たせたりするための飾りではありません。この小さなたった1文字には、その車がどのような目的や立場で社会を走っているのかという、用途を瞬時に見分けるための重要な暗号としての役割が与えられています。

具体的には、日本の自動車登録制度において、車を大きく3つの用途に区分するためにひらがなが厳密に活用されています。その3つの区分とは、個人や一般企業が所有して使用する自家用、タクシーや路線バス、あるいは運送会社のトラックなどの事業用、そして観光地などで大活躍するレンタカーなどの貸渡用です。

例えば、私たちが普段乗っている普通車などのマイカーには自家用として、「さ」行以降のひらがな(一部を除く)が割り当てられますが、街中を走るタクシーなどの普通車の事業用車両には、「あ行(「お」を除く)」または「か」行、そして「を」のひらがなが使われます。このようにルール化されているおかげで、警察官や行政の担当者だけでなく、周囲を走るドライバーもひらがなを確認するだけで、その車がビジネスとして走っているのか、それとも個人の持ち物なのかを一目で判別できるようになっています。

もしも、このひらがなをユーザーが自由に選べるようにしてしまうと、本来の目的である用途の区分が機能しなくなってしまいます。車社会の安全を維持するためには、その車が正しく届け出された用途の通りに使われているかを外部から一目で確認できることが、どうしても欠かせない要素となります。

ひらがなは個性を表現する場所ではなく、日本の交通システムを陰から支えるための、極めて実用的な記号であると言えます。

貸渡用を示す「わ」ナンバーに隠された工夫

ナンバープレートのひらがなが車の用途を表している中で、最も身近で分かりやすい例といえば、やはり旅行先やビジネスシーンでお世話になるレンタカーではないでしょうか。ご存じの通り、レンタカーのナンバープレートには「わ」というひらがなが刻まれており、一般の間でも「わ」ナンバーという言葉がすっかり定着しています。

この「わ」という文字は、貸渡用の車両であることを示すために専用で割り当てられたひらがなです。見知らぬ土地を運転しているとき、前を走る車がレンタカーだと分かれば、道に迷っているかもしれないから少し車間距離を広めに取って様子を見よう、といった思いやりのある配慮がしやすくなります。そういった意味でも、このひらがなの識別ルールは日本の道路の安全運転に大きく貢献していると言えます。

しかし、このレンタカーのナンバーを巡っては、少しマニアックで興味深い運用の違いが存在しています。一般的に普通車や大型車などの登録車では、貸渡用として「わ」のほかに「れ」というひらがなも用意されています。実際に「わ」の文字がすべて使い切られてしまった大都市圏や、レンタカーの需要が非常に高い北海道や沖縄県などの一部地域では、「れ」ナンバーのレンタカーが道路を走っているケースを頻繁に見かけることができます。

その一方で、軽自動車に目を向けてみると、レンタカー用のひらがなは原則として「わ」のみとされています。軽自動車において「れ」の文字は、運送業などの事業用、つまり黒ナンバーの車両に対して割り当てられることが多いため、普通車と軽自動車ではルールの運用が少し異なっています。このように、何気なく見かけているレンタカーの文字一つをとっても、車の規格によって細かな違いがあり、知れば知るほど奥が深いシステムになっています。

実はナンバーに使われない「4つのひらがな」がある

ここまで、ナンバープレートのひらがなが、いかに厳格なルールに基づいて管理されているかをお伝えしてきました。しかし、お堅いイメージのある国の管理システムでありながら、実は日本の五十音順の中から最初から除外されている、絶対に使われない4つのひらがなが存在します。それが、「お」「し」「へ」「ん」の4文字です。

なぜ、これらの文字は自動車の歴史の中で採用されなかったのでしょうか。それぞれの理由を紐解いていくと、実用的な側面だけでなく、驚くほど人間味にあふれた、納得の理由が見えてきます。

まず1番目の「お」ですが、これは形状が似ている「あ」や「す」と見間違えやすいことや、発音が同じ「を」と混同しやすいためだと言われています。万が一の事件や事故の際、目撃者や防犯カメラがナンバーを誤認したり、口頭で伝える際に聞き間違いが起きたりすると困るため、あらかじめ紛らわしい文字を排除したという、合理的な安全対策によるものです。

次に2番目の「し」は、音の響きが「死」を連想させてしまい、縁起が悪いからだとされています。新車を購入してこれから楽しいカーライフを始めようというときに、縁起の悪い文字が割り当てられるのは避けたいという、人々の心理的な配慮が反映されていると言えます。

さらに、思わずクスッと笑ってしまうユニークな理由を持つのが3番目の「へ」です。音の響きがおならを連想させてしまい、そこからさらに排気ガスをイメージさせてしまうため、車のナンバーとしては印象が良くないのではないか、という説があります。また、「あいうえお」の「え」と発音が混同されやすいという指摘もあり、視認性・聞き取りやすさの観点からも避けられた可能性が指摘されています。

最後の「ん」については、単純に発音がしづらいという理由が挙げられます。口頭や無線などでナンバーを他人に伝える際、「ん」は言葉の頭にこない文字であるため、聞き取りにくくなってしまいます。

このように「お」「し」「へ」「ん」の4文字が使われない背景には、視認性や発音といった実用的な工夫だけでなく、人間の感情や縁起を大切にする、日本らしい細やかな配慮が息づいています。

何気ないナンバーにも、ちゃんと意味がある

普段、私たちが何気なく目にしている車のナンバープレートですが、その中にあるたった1文字のひらがなには、これほどまでに緻密なルールと、人間味のあるストーリーが詰め込まれています。数字のように自分の好みを反映させることはできませんが、だからこそ、その車が社会の中でどのような役割を担っているのかを静かに語ってくれる、大切な記号であると言えます。

最近では、地域の魅力を発信するご当地ナンバーや、さまざまなイベントを記念した特別仕様の図柄入りナンバープレートなども増えており、足元のおしゃれを楽しむドライバーがさらに多くなっています。そうした華やかなデザインや、希望ナンバーで選んだ自慢の数字に目を留めるのも素敵ですが、これからはその隣に佇む小さなひらがなにも、少しだけ注目してみてはいかがでしょうか。

いつも通る通勤路で見かける配送トラックの文字や、休日の旅先で行き交うレンタカーの文字が、理由を知ることでこれまでとは少し違う景色として見えてくるかもしれません。この車は軽自動車だからこのひらがなになっているんだな、といった小さな気づきが生まれるだけでも、日常の景色が少し新鮮に感じられるはずです。

次にハンドルを握るときや、街中を散歩するときは、ぜひ周囲の車のひらがなをチェックしてみてください。きっと、普段の移動やドライブの時間が、今よりも少しだけ楽しく、興味深いものに変わるはずです。

参考:ナンバープレートの見方(国土交通省 東北運輸局)



ライター:Masaki.N
自動車メーカーで車体開発エンジニアとして設計・先行開発に携わった後、マーケティング/市場リサーチ領域で商品導入・訴求設計にも従事。さらに自動車サブスク系ITベンチャーでマーケティングを担当し、ユーザー視点のコミュニケーション設計を経験。現在は自動車ライターとして、新車情報、技術解説、モデル比較、中古車相場、維持費、業界動向まで幅広く執筆。SEO記事・コラム・インタビューなど媒体横断で制作し、専門知識を生活者の言葉に翻訳して「買う/持つ」の判断を支援します。加えて、カスタムを含む実車取材・体験を通じて得た一次情報を記事に落とし込み、机上の知識にとどまらない“現場感”のある解説を強みとしています。


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