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夜中に“2〜3回”トイレに行く60代男性→「さすがに眠れなくて」泌尿器科に相談すると…医師から指摘された“意外な原因”とは

  • 2026.7.17
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。泌尿器科専門医の小内友紀子です。今回は、夜中のトイレに長年悩まされてきた患者さんが、意外な原因の発見によって快眠を取り戻したエピソードをご紹介します。「頻尿だから泌尿器科」とは限らない——そんな話です。

※本エピソードは複数の患者さんの経験をもとに再構成した架空のものです。特定の個人を指すものではありません。

毎晩2〜3回、トイレで目が覚める日々

Mさんは63歳の男性。奥さまに付き添われて外来にいらっしゃいました。悩みはずばり、夜間のトイレの回数です。

「もう2〜3年になりますかね。夜中に必ず2〜3回は目が覚めてしまって。歳のせいかと思っていたんですが、さすがに眠れなくてつらくて」とMさん。奥さまも横で「主人、昼間もぼーっとしていることが増えて、心配で連れてきました」と話してくださいました。

問診を続けると、日中のトイレの回数は4〜5回程度で特に多くはなく、尿の勢いも問題ないとのこと。超音波検査(エコー)で前立腺のサイズを確認しましたが、年齢相応の大きさで、肥大と呼べるレベルではありませんでした。尿の流れを測る検査でも、尿の通り道が詰まっている様子はありません。

「日中の回数はそれほど多くなくて、前立腺も正常なサイズ。それなのに夜だけ回数が多いというのは、少し不思議なんです」——私がそう伝えると、MさんとMさんの奥さまは顔を見合わせました。

「いびきをかきますか?」

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ここで私はひとつ確認したいことがありました。「Mさん、夜寝ているときにいびきをかくと言われたことはありますか?」

すると奥さまが即座に「それはもう、すごいいびきで。しかも途中でぴたっと止まることがあって、こっちがドキッとするくらいで」とおっしゃいました。

この「いびきが止まる」という状態は、睡眠時無呼吸症候群(すいみんじむこきゅうしょうこうぐん)のサインである可能性があります。睡眠中に気道が塞がって呼吸が止まる病気で、ひどい場合は一晩に何十回も無呼吸になることがあります。

実はこの睡眠時無呼吸症候群、夜間頻尿と深い関係があります。呼吸が止まるたびに体が「危険」を感じて覚醒に近い状態になり、尿意を感じやすくなることに加え、無呼吸による一時的な酸欠や心臓への負担が引き金となり、体から「尿をたくさん作りなさい」というホルモン(心房利尿ペプチド)が分泌されてしまうのです。 つまり、単に目が覚めるだけでなく、夜間に作られる尿の量そのものが実際に増えてしまっている可能性があります。

「専門の先生に一度みてもらいましょう」と、睡眠専門の医師にご紹介しました。

入院検査で「黒」と判定

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

睡眠専門医師の診察後にMさんが受けたのは、「睡眠ポリグラフ検査」(PSG検査)と呼ばれる一泊入院の検査です。体にセンサーをつけて眠り、呼吸・血中酸素・心拍・脳波などを一晩記録します。

結果は、重症の睡眠時無呼吸症候群。1時間に30回以上の無呼吸が確認され、そのたびに睡眠が浅くなっていました。「これだけ無呼吸があれば、夜中に何度も目が覚めて当然です」と説明を受けたMさんは、「まさか呼吸が原因だったとは」と驚かれたといいます。

治療として始まったのが「CPAP(シーパップ)療法」。就寝時にマスクを着けて、機械で気道に空気を送り込み、無呼吸を防ぐ治療法です。「マスクをつけて寝るなんて違和感がありそう」と最初は不安だったMさんですが、1〜2週間ほどで慣れてきたとのこと。

しばらく後、外来で経過を聞くと「夜中に起きるのが1回、多くても2回になりました。朝もすっきり起きられるし、昼間の眠気もずいぶん減りました」と、晴れやかな表情でおっしゃっていました。奥さまも「いびきが静かになって、私もよく眠れるようになりました(笑)」と笑顔で続けてくださいました。

夜間頻尿、すぐに「泌尿器科の病気」と決めつけないで

夜間頻尿の原因はさまざまで、前立腺肥大や過活動膀胱といった泌尿器科の病気のほかに、心臓や腎臓の機能低下、夜間に水分を摂りすぎる習慣、そして今回のような睡眠の問題が関係していることもあります。

「日中はそれほどトイレが気にならないのに、夜だけ回数が多い」という場合は、特に睡眠時無呼吸症候群との関連を疑う必要があります。比較的年齢が若い方で、いびきや、起床時の頭痛、日中の強い眠気なども併せてあるようなら、なおさらです。

睡眠時無呼吸症候群は、放置すると高血圧・糖尿病・心臓病のリスクを高めることも知られています。「よく眠れない」「夜中に何度も目が覚める」という悩みを、単なる年齢のせいにしてしまわず、一度医療機関に相談してみてください。原因がわかれば、治療の道は開けます。


執筆・監修:小内 友紀子
公益財団法人ときわ会 常磐病院 泌尿器科 診療副部長、東京女子医科大学病院 泌尿器科 講師、医師、医学博士
女性泌尿器科医師として、普段は女性によくある尿もれから、男性の前立腺癌をはじめとする泌尿器科領域の癌診療まで診療しております。
【資格】医師 / 医学博士 / 泌尿器科専門医・指導医 / 透析医学会専門医・指導医 / 排尿機能学会専門医

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