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【ネタバレあり】上田誠『君は映画』撮影日誌《3日目・4日目》

  • 2026.6.22

※本記事は映画『君は映画』監督・上田誠氏による制作日誌です。
※※本記事には『君は映画』のネタバレを含みます※※

9月3日(撮影3日目)

シーン4 三軒茶屋を歩くカズマ

元々は、万事うまくいけば撮休の予定だった。
そんなの無理で、この日も撮影する。
カズマサイドを撮る日。井之脇さんがクランクイン。

気鬱そうに三軒茶屋を歩くカズマを撮る。
マドカサイドに比べ、こっちはちょっと殺風景にしたかった。
人通りがあんまりない場所で、落ち着いて撮れた。
井之脇さんはやはり映画の撮影にたいへん手練れている。
昨日の日誌で海くんと書いてたのに思わず井之脇さんだ。

ちなみに大事なことをさらっと書くと、この映画においてはマドカは左側から、カズマは右側から来る。
その向きは、映画中はずっと変わらない。
映画館の中でも、マドカは右を、カズマは左を向いている。
最後までずーっとそのルールを守って撮っている。

シーン5 回想・三日月ロックでのもめごと

カズマたちのバンドのたまり場は、トリウッドの右隣にある焼き鳥屋さん・三日月ロック。
バンドメンバーは、ギターのミコシバ(金丸慎太郎)、ベースのタマル(金子鈴幸)、ドラムのセノオ(三河悠冴)。
そして隣の席に、半グレのチンバラ(今井隆文)とソネザキ(角田貴志)がいる。バンドをやってたらしい店長役は土佐和成。
いかにも下北沢映画的だしスモーキーな感じだ。
実際に現場にスモークも焚いている。

居酒屋客のエキストラには、僕がこれまで映画関係でお世話になってきた、プロデューサーの方々や関係者にお声がけしていた。
皆さんありがたいことに「上田さん映画撮るんですね、観に行きます」と言ってくださるので、じゃあこの日に来てもらってエキストラをお願いしちゃおう、という。
そうすると俳優陣にとってやけに迫力ある居酒屋になってしまった。緊張したと思う。

みんな芝居がうまい。
今井さんのチンピラぶりが、リアルとフィクションのめちゃくちゃちょうどいいところに目盛りがあっている。極上の町中華って感じ。
金丸さんは初めて映画に出るのだけど、机を「どん!」とやるところで思い切りがよくてみんな「おおっ」となった。ジョッキが床に転がってヒヤッとさせもした。

シーン12 回想・もめごとのその後

三日月ロックで、ミコシバが金を盗んでチケットとすり替える場面。
長回しというほどでもないけど、長めのカットを2カット。
群像を動かすのは演劇で慣れている。多分これは映画監督としての自分の強みだと思う。
けどここで押しちゃいけないのに押してしまう。お店を開店前にお借りしているのです。
三日月ロックの店長さま(本物)が鷹揚にご対応くださりありがたい。制作の青柳さんもこういうときほんとに丁寧に間に入ってくださる。
がやがやした客の会話のオンリーもスタッフで録音。みんなお上手。

飲み会→ミーティング→飲み会

夕方で撮影が終わり、そのまま三日月ロックで飲み会。
ロケ地で呑めるなんて最高ですね、とか言って、海くんはじめキャストスタッフと飲んで映画の話をする。映画の中と外の区切りがなくなったみたい。
と思ってたら、竹岡Pから「来てください」と僕だけトリウッドへ呼び出される。トリウッドへ行ってみるとP陣と助監督チームが集まっていて、シリアスなムード。
ほんとに映画の中みたいな展開だ。

シリアスの理由は雨。
大雨が来ていて、明日以降のスケジュールにかなり影響が出るという。
がちゃがちゃと大変更をする。急きょロケ地をみんなで探したりも。
助監督の藤原さんが「撮影中にこんなにひっくり返したのは初めて」と言ってた。そもそもパズルが難しい中、あれだけ緻密に組んだスケジュールが雨びたしになったら頭がおかしくなるだろう。

なんとなく決着ついたようなついてないようなで、P陣と助監督チームもいっしょに三日月ロックへ戻り、飲み会と会議のあいのこみたいなやつをする。
ヘアメイク升水さんから、髪のつながりについての苦労話を聞かせてもらう。

映画の現場って、各所スタッフがみんなわざと視野を狭くして自分の領域だけに目を光らせてるようなところがあって、照明部は光だけを気にするし、録音部は音だけを気にするし、撮影助手の平井さんであればフォーカスだけを気にする。
いろんな各所がすべてOKだったらそれはOKテイクなんだけど、基本的にはやっぱりまあ芝居が良ければOKということになる。
そんなとき「髪のかかり方がちょっと前のカットと違ってるからNG」とは確かになりにくい。でもだいじなこと。
監督はあらゆるところを見てないといけない。
けど自分にはそれが苦手だ。
なので演劇だと自分が見きれていないところは、もうスタッフやキャストを信頼して任せているし、映画でもそうする。

9月4日(撮影4日目)

ラッシュチェック

雨の予報は台風に変わっていた。
もともと翌日に予定していた、トリウッドでのカズマサイドを、この日がっつり撮ることに。
ということはつまり、先日撮ったマドカサイドのシーンをスクリーンに映さねばならず、そのラッシュ(撮れたての映像ですね)を朝からトリウッドでチェック。
こささPとDIT内山さんが、協力しつつ素材を調整してくれている。

こささPは普段は監督をやっていて、今回はクレジットはプロデューサーだけど、現場であらゆる映像面で僕をサポートしつつ、各スタッフと連携をとってくれている。これほとんど監督をやってもらっちゃってるな、って思う瞬間がしばしばある。
そしてトリウッドでの撮影のときは、スクリーンに出る映像の番人として、基本的に映写室にずっといる。

DIT内山さんも、デジタル・イメージング・テクニシャンの肩書が示すとおり、テクニシャンだ。
今回の撮影では、撮った映像をきっちり管理しつつ、スピーディーに調整して2日後にはスクリーンに映す、みたいなスピード感がカギなので、撮った映像の受け渡しやもろもろ含め、内山さんが大事なハブになっている。

こういう体制もこさささんが考えてくれた。
登ったことのない山を登るのに申し分ない、先読みと経験にたけたクルーだなあ、と思うし、今のところそれが完全にうまくいっている。

シーン11・13・15・17 三日月ロックで詰められるカズマ

カズマたちが床に正座させられるシーン。
制作部の毛布がありがたい。撮影現場のいたるところで毛布が活躍するなあ、といつも思う。毛布っていう部署があってもいいくらいだ。
群像シーンを長回しするんだけど、カメラが充分に動き回れる空間ではないので、机やイスを動かしたりして嘘をつく。

「三軒茶屋エスケープ」のチラシは先に作ってあって、そこではカズマが床に尻もちをついている。もしかしたらそれとピッタリ同じ形に演技のほうを合わせられるのでは、となって、チャレンジしたら見事にうまくいった。すごい。
なんのこっちゃですいません、現場で生まれたアイデアをうまいこと映画に取り込めたんです。こういうの100個やりたい。

長回しのときに付きまとう、ドア開けっぱなし問題。
ドアを開けて進む俳優をうしろから追うときに、カメラや撮影隊がついていかなきゃいけないので、俳優はドアを閉められない、という。
ちなみに引っ張る(カメラが後ずさって、進む俳優を正面から撮る)ときも同じ。そのときは俳優がドアを開けられない。想像してみてください。
海くんは「長回しにありがちな、ドア開けっぱなし問題がここで起きると思うんですけど、もうそれはいいんですよね」と言った。撮影行為に詳しすぎるし、太い。
この日の三日月ロックは巻いて終わった。

シーン14・19 緑道でのミコシバ、カズマとの会話

前のシーンがはやく終わり、急遽ここを撮る。
もちろん予告はしていたけど、とくにシーン19は、カズマとミコシバの鬱憤が爆発する、ふたりのキーとなるシーン。芝居場というやつ。
予定変更に柔軟に対応してくれたふたり、どでかい懐でありがたい。

曇天で、今にも雨が降り出しそう、っていうか降っている、けど本降りになる前なら撮れる、みたいな時間との戦い。あと暗くなりすぎる前に。
祈りながら撮影し、撮れた! 危うくダーツバーなどにロケーションを変更して撮るところだった。海くんは晴れ男だそう。ナイス感情爆発。

シーン18カ

トリウッド内で、スクリーンに映ったマドカとカズマの会話。
すいません、日誌で省略しましたけど、撮影2日目に、7マと合わせて18マも撮ってるんです。どうでもいいですって?

スクリーンに映るマドカと、客席のカズマが、互いにチラシでストーリーを教えあうところ。マ→カ→マの、中継ぎの部分ですね。
18マをスクリーンに映し、カズマとの芝居をモニターで見ると、目線があっていて最高!
「君は映画」だ、となった。
キャストスタッフみんなそうなった。

映像のマドカにあわせて芝居するの、タイミングが難しくてけっこう大変。
しかも、それをいろんな角度から撮るのだけど、とる画角によって、スクリーンに映す映像のテイクも違っていて(トリックアートみたいに角度を合わせなくてはいけないんです)、そのテイクごとに芝居のテンポも違う。
海くんがこういうことを楽しんでくれる人で助かった。たいへん首尾よくやりとげてくれた。

シーン7カ マドカとカズマの出会い

おなじくトリウッド内で、マドカとカズマの会話。
ここも「マカマ」の、カズマ中継ぎ。
芝居がかみ合うと面白いし、画角のトリックアートが成り立つと安心する。

映像出しのこさささんがとにかく大変。
撮影した素材を、中1日とかで、編集して、LUT(色とかの調整)をかけて、セリフを消して、テロップでガイドを入れて、映写しないといけない。
「映画を観ている映画を撮る」とはそういうことです。映画中映画は、編集含め、撮影のときにはできてないといけない。
こさささんは映画の撮影に付き合いつつ、映画中映画の編集も進めてくれている。映写室がこさささんの定位置になった。

とにかく緑道が撮れてよかった。
明日は台風なので集合は遅め。

◆作品情報

配給:TOHO NEXT、トリウッド
公式HP:https://www.europe-kikaku.com/kimiei
X・Instagram :@kimihaeiga0619

FILMAGAでは上田誠監督による『君は映画』制作日誌を連日公開予定。

◆予告

(C) ヨーロッパ企画/トリウッド 2026

※2026年6月16日時点の情報です。

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