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子どもの話題は動画中心に?“読書離れ”と言われる時代に、保育現場で感じる絵本の力

  • 2026.6.21

こんにちは!現役保育士のはるです。先日、年長クラスの子どもたちが自由遊びをしている時間に、聞こえてきた会話。「ねえ、〇〇チャンネル見た?」「あのユーチューバーがさ〜!」「ショート動画で出てきたやつ、知ってる?」流行りの動画のダンスを踊る姿もよく見受けられます。少し前なら「仮面ライダーシリーズが!」「スーパー戦隊シリーズの!」というやりとりをよく耳にしていましたが、最近はYouTubeやSNSの話題が中心になってきたように感じます。子どもたちが憧れる存在や、日々の話題の入口にも、時代の変化が表れているのかもしれません。そして最近、保育園での絵本の時間にも変化が出てきていると感じています。昔話や定番の絵本よりも、キャラクターをベースにした絵本への反応がとにかく大きい。「知ってる!知ってる!」と大盛り上がりになる一方、見慣れない絵本やイラストのタッチが古めかしいものは、最初の数ページでそわそわしはじめる子も……。今回は保育現場で感じているリアルな変化と、だからこそ私が大切にしたいと思っている「昔話絵本の力」についてお話しします。

子どもたちの「話題の中心」が変わってきた

保育現場にいると、子どもたちの流行の変化をリアルに感じます。新卒の時は「童謡」や「その時のアニメの曲」をCDにまとめていましたが、最近子どもたちが口ずさむのは圧倒的にJ-POP。中でもTikTokなどで流行った楽曲です。以前は、「鬼滅の刃ごっこしようよ!」「プリキュア描いて!」など、アニメや戦隊ものをベースにした遊びがほとんどでした。でも最近は少し違います。・「〇〇ってユーチューバー知ってる?」・「ショート動画で見たんだけどこれ姉ちゃんが躍ってた!」・「ママのスマホでこれ見た!」・「TikTokで流行ってるやつ!」私の勤務する園では、子どもたちの会話のネタが、アニメや昔話のような“物語”だけでなく、実在の誰かが発信する動画やSNSの話題にも大きく広がってきたように感じます。また、動画視聴に親しんでいる子ほど、読み聞かせの導入で落ち着くまで少し時間がかかると感じる場面もあります。読み聞かせをはじめて数分で「まだ終わらないの?」とそわそわしたり、ページをどんどんめくろうとしたり。動画に慣れた子どもたちにとって、自分でペースをコントロールできない「絵本の時間」は、少しじれったく感じるのかもしれません。もちろん、これはあくまで現場で感じる傾向であり、すべての子どもに当てはまるものではありません。子どもの読書時間とスマホ・SNS利用時間のあいだには相関がみられるという報告もありますが、単純に因果関係として言い切れるものではない点には注意が必要です。YouTubeやSNSが悪いわけではありません。得られる情報量は膨大だし、子どもたちの好奇心を広げる力もある。でも同時に、「物語をじっくり追う体験」「文字から想像を膨らませる体験」「終わりを待つ体験」が、少しずつ薄れているのでは……と感じることも増えてきました。

好まれる絵本が「キャラクターありき」に変わってきた

絵本の読み聞かせをしていると、子どもたちの反応に如実にその変化が出ています。たとえばアンパンマンやポケモンといったキャラクターだけではなく、絵本のキャラクターとして確立された絵本ですと、子どもたちの目がキラキラと輝きます。読み始める前から「あ!知ってる!」「これ持ってる!」「〇〇が出てくるやつ!」という声が上がり、盛り上がりは最高潮。そのまま最後まで集中して聞いてくれます。一方で、昔話など知らないキャラクターが出てくる絵本になると、最初の反応が少し薄いことがあります。もちろんストーリーに引き込まれれば集中して聞いてくれるのですが、「知っているかどうか」が絵本への入口になっているように感じることが増えてきました。『パンどろぼう』(KADOKAWA)なんかはとても人気の絵本で、かわいいイラストとユーモアあるストーリーで、はじめて見た子どもでもすぐに引き込まれる力があります。ただ、そうした“かわいい・おもしろい”から入る絵本と、少しこわさがあったり、善悪だけでは割り切れない要素を含んでいたりする昔話では、子どもの心に残るものが少し違うように思います。子どもが好きな絵本を読むことには、もちろん大きな意味があります。「好き」という気持ちが読書体験の土台になるからです。でも同時に、「知らないものへの興味・想像力」を育てる機会も大切にしたい、と保育士として思わずにはいられません。

だからこそ大事にしたい「昔話」の良さ

私が最近改めて大切にしているのが、『桃太郎』『三匹のこぶた』『かぐや姫』『舌切り雀』『花咲か爺さん』といった昔話の絵本です。昔話には、キャラクターの知名度やかわいさに頼らない、物語そのものの力があります。

善と悪がわかりやすく、でも単純じゃない

『桃太郎』は鬼を退治して村人を守る。『三匹のこぶた』は知恵と努力で狼に勝つ。善悪の構造がシンプルなので、小さな子どもでも「応援したい」「こわい」「よかった!」という感情を自然に経験できます。でも昔話の面白いところは、そこで終わらないことです。鬼はなぜ悪さをしたのか。『かぐや姫』はなぜ月に帰らなければならなかったのか。舌を切られた雀は、本当にただ「かわいそう」だけで終わるのか。昔話には、勧善懲悪だけでは割り切れない“もやもや”が残ることがあります。子どもたちはその感情を抱えながら、世の中にはすぐに白黒つけられないこともあるのだと、少しずつ知っていくのかもしれません。

世代を超えたコミュニケーションのきっかけになる

「ママも小さい頃これ読んだよ!」「おじいちゃんも知ってるよ!」という話ができるのも昔話の特別なところ。キャラクター絵本は世代によって知っているものが違いますが、昔話は何十年も変わらず語り継がれてきた物語です。家庭でのコミュニケーションや、祖父母との橋渡しにもなってくれます。昔からあるからこそ語り継がれる。核家族化が進む中で、さまざまな世代と同じ物語を共有できることは、昔話の大きな魅力のひとつではないでしょうか。

「こわいもの」と安全に向き合う体験ができる

昔話には、現代の子ども向けコンテンツにはあまり出てこない「こわさ」があります。鬼が人を食べる。継母が意地悪をする。罰として酷い目にあう。これを「子どもに見せていいの?」と思う方もいるかもしれません。でも私は、絵本の中で安全に「こわい」を体験することはとても大切だと思っています。現実のこわいことに直面したとき、「こういう理不尽なことが世の中にはある」「でもきっと誰かが助けてくれる」という感覚のベースになるからです。

昔話を知っているからこそ、深く楽しめるコンテンツがある

ここで少し、視点を変えてみたいと思います。『鬼滅の刃』をご存知の方は多いと思います。この作品は、鬼というモチーフや伝承的なイメージと重ねて読める作品のひとつです。鬼という存在、そしてその鬼と人間の戦い。これは日本の昔話に古くから登場するテーマです。たとえば「酒呑童子(しゅてんどうじ)」という昔話をご存知でしょうか。平安時代を舞台に、源頼光という武将が、大江山に棲む鬼の頭領・酒呑童子を退治しに行くという物語です。鬼は恐ろしい存在として描かれながらも、単なる記号的な「悪」としてだけでは語りきれない面を持つことがあります。人間と鬼の境界線は曖昧で、退治される側にも物語がある。鬼滅の刃が多くの人の心を揺さぶったのは、まさにこの「日本人がずっと昔話の中で向き合ってきた、鬼というモチーフの奥深さ」があったからではないでしょうか。『桃太郎』を知っていれば、鬼退治という構造がすっと腑に落ちる。『酒呑童子』を知っていれば、鬼にも背景があるという複雑さが理解できる。昔話を知っている子どもは、鬼滅の刃をただ「かっこいいアニメ」として楽しむだけでなく、作品世界の別の奥行きを感じる読者もいるかもしれません。これは『鬼滅の刃』だけではありません。『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』にも、日本の神話・民俗・昔話を思わせるモチーフが随所に見られます。子どもの頃に昔話を読んでいるかどうかは、単に「本を読んだ体験」に留まらず、日本文化の「共通言語」を持っているかどうかに関わってくると感じています。その共通言語があるからこそ、大人になってからもさまざまなコンテンツをより豊かに楽しめる。昔話はそういう「文化の土台」を作ってくれるものだと思うのです。

保育園で大切にしている読み聞かせのこと

そんな思いから、保育園での読み聞かせで保育士が意識していることを紹介します。保育室に置いておく絵本は定期的に入れ替えたり、子どもと一緒に絵本を探したり。たかが絵本1冊と思われるかもしれませんが、その一つ一つに大切な意味を込めています。

選書は「子どもの今」に合わせる

保育園では毎月、どの絵本を読み聞かせするか計画を立てています。その時に意識しているのが、「子どもたちが今どんな世界にいるか」を起点にすること。トイトレが始まった子が多いのであればトイレにまつわるお話。これからの時期梅雨や夏場の水遊びに向けた「水」がテーマのお話。秋に運動会が終わったあとなら、力を合わせることがテーマのお話を選んだり、季節に合わせた選書という視点。それ以外にも誰かが意地悪をされてトラブルになりそうだな、子ども同士での関わりが変化してきたなと感じた時には、『舌切り雀』のように、欲張りや意地悪について考えるきっかけになる物語を、自然に読み聞かせに取り入れることもあります。節分が近づいてきたら鬼が登場する昔話を選ぶ。絵本の内容と子どもたちの生活をリンクさせることで、物語がより「自分ごと」として響くようになります。「先生、この前読んだ鬼の話みたいだね」と子どもが日常の出来事と絵本を結びつけて話してくれる瞬間があって、そういうときは本当に嬉しく思います。

昔話は「バリエーション」を意識して選ぶ

昔話を選ぶときに意識しているのは、同じような話ばかりにならないようにすることです。たとえば「鬼退治もの」だけが続くと、「鬼は悪いもの」という図式が固定されてしまいます。そこで、たとえば『ないたあかおに』(偕成社)のような作品を入れることで、「鬼にも悲しさやさみしさがあるかもしれない」という別の視点が生まれます。さらに、『オニじゃないよ おにぎりだよ』(えほんの杜)や『オニのサラリーマン』(福音館書店)のように、子どもたちが親しみやすいユーモアのある作品を織り交ぜることもあります。また、ハッピーエンドで終わる話だけでなく、『笠地蔵』のように人の優しさが報われる話、『鶴の恩返し』のように約束を守ることの大切さが描かれる話など、読後感の異なる絵本を意識的に選ぶようにしています。読み終わったあとに「あ〜よかった!」だけでなく、「なんか悲しかったね」という様々な感情を知るというきっかけにもつなげていきたいからです。

絵のタッチにも注目して選ぶ

昔話の絵本は出版社や作者によって絵のタッチが大きく異なります。水墨画のような和の絵、水彩のやわらかい絵、少し怖い雰囲気のある絵……。意識しているのは、「きれいすぎる絵」ばかりにならないようにすることです。現代の子ども向けコンテンツはどれも洗練されていて明るくカラフルなものが多い。でも昔話の絵本の中には、少し暗くて、荒削りで、怖さのある絵があります。そういう絵を見ることも、子どもたちにとって大切な体験だと思っています。「なんかこの絵こわいね」と言う子がいたら、それは大成功。絵から感情を受け取っているということだからです。怖さを感じながらもページをめくる、その体験が感受性を育てていくのではないかと思っています。

「同じ話の読み比べ」をすることもある

少し発展した取り組みですが、年長クラスでは同じ昔話の「読み比べ」をすることがあります。たとえば「桃太郎」でも、出版社によって鬼の描き方が全然違う。ある絵本では完全な悪役として描かれ、別の絵本では鬼の島での暮らしぶりが丁寧に描かれていて、感情移入できる描き方になっていたりします。「この桃太郎の鬼と、あっちの鬼、どっちがこわかった?」「なんで同じ話なのに絵が違うんだろう?」そんな問いかけをきっかけに、「同じ物語でも、描き方や受け取り方によって見え方が変わることがある」ということを、子どもたちは遊びながら体感していきます。大げさかもしれませんが、これは“ひとつの見方だけが正解ではない”と知る入口にもなるように感じています。SNSや動画があふれる時代だからこそ、すぐには「答え」が出てこない絵本のページをめくる体験、声を聞きながら頭の中に絵を描く体験が、子どもたちにとってかけがえのない時間になっていく。私は、そんな時間をこれからも保育の中で丁寧に守っていきたいと思っています。忙しい毎日の中で、一冊、今夜、お子さんと一緒に昔話の絵本を開いてみてはいかがでしょうか。

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Blog:保育士ママのリアルな毎日

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