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ワールドカップに我思う。会社でのベテランの存在と意義。

  • 2026.6.20

「スペイン戦、誰がゴール決めたん?」

最近の我が家の朝は、だいたいそんな会話から始まります。4年に1度のワールドカップが始まると、クラブチームに入るサッカー少年の次男はもちろん、中学生の文化部を謳歌している長男も、小1の末っ子も急に世界の地理に詳しくなった気になり、「この国どこ?」「ここって飛行機で何時間?」と地図帳を広げながら質問攻めされます。親の私はサッカー観戦をしているのか地理の授業を受けているのか分からなくなります。とはいえ、こういう時間は嫌いではありません。家族で優勝予想をしたり、ハイライトを見たり、最近は8時前から始まるデイリーハイライトのために、夫まで早く帰ってきて、子供達もみんな明日の用意や宿題も済ませ、テレビの前に集合。正座で見ています。あーー、現地観戦したいねぇと盛り上がったりするのは実に楽しく、旅費を調べて3秒で現実に引き戻されるところまで含めてワールドカップの醍醐味なのかもしれません。さて、私は決してサッカーに詳しいわけではありません。いわゆる「4年に1度だけ急にサッカー評論家になる人」であり、ワールドカップ特集本を1冊買っただけで妙な自信を持ってしまう、ごく普通のにわかファンです。それでも毎大会見ていると、なんとなく共通点が見えてきます。強いチームほど若手スターだけで構成されていないのです。もちろん華やかな若手は必要です。スピードもあるし、勢いもあるし、見ていてワクワクします。けれど、仕上がりが分からない初戦だったり、大会が進みプレッシャーが高まり、国中の期待を背負うような局面になると、じわじわ効いてくるのはベテランの存在だったりします。派手ではない。でも効く。まるで風邪をひいた時の生姜湯のような存在です。飲む前は半信半疑なのに、気付いたら助けられている。そんな感じでしょうか。

オーストラリア対トルコで見えたもの

私がそんなことを考えたきっかけの一つが、オーストラリアとトルコの試合でした。トルコは24年ぶりの出場で、欧州で活躍するスター選手も多く、事前評価も高め。私の買ったワールドカップ特集本にもたくさん掲載されていて、「これは強そうだな」と思っていたので、世界のサッカーファン達は、たぶんみんなそう思っていたのでしょう。トルコが勝つだろうと。試合が始まると、トルコは攻める攻める。シュートを打つ。また打つ。さらに打つ。なんだろ。そんな設定の特別練習をしているの?というくらい、トルコは打ちまくっています。ところがオーストラリアは慌てません。守るべき場所を守り、我慢すべき時間を我慢し、一瞬だけ訪れたチャンスを確実にものにしていきます。終わってみれば2-0。ボール保持率は圧倒的にトルコなのに。数字以上に経験値の差を感じる試合でした。若さは前へ進む力を持っていますが、経験は崩れない力を持っています。いや、もちろん若さで乗り切る部分も多々ありますし、目を見張るような滞空時間の長いジャンプや、数々の身体能力を使ったプレーは『若さ』が引き出してくれる部分が多い。でもね、ワールドカップという大舞台では、また違うのかな。どれだけ欧州で削ってきた選手もワールドカップの重圧、緊張、焦りって通常とは全然違うと聞きました。(by例の ワールドカップ特集号)だから、ベテランの落ち着きは需要がある。案外その「崩れない力」が勝敗を左右するのだろうなと思ったのです。

会社にもある「若手だけでは難しい問題」

そして私はテレビを見ながら、「これって会社も同じだな」と思いました。若手ばかりのプロジェクトは勢いがあります。会議も楽しい。アイデアもどんどん出る。未来しか見ていない感じも眩しい。私も若い頃はそうでした。ただ、その先に待っているのが会社という生き物の難しさです。若手が「これ絶対ヒットします!」と言うと、上層部は「それ絶対クレーム来るやつや」と言う。若手が「前例なんて関係ありません!」と言うと、上層部は「前例がないから怖いんや」と言う。どちらも間違っていません。だから厄介なのです。結果として、若手が描いていた未来予想図と完成品が全然違うものになり、「なんか普通になったな……」という何とも言えない空気になることがあります。こんな経験、何度もあります。何なら若い頃は、「自由にやっていいって言うたやん!」「若い柔軟な発想を活かしてとも言ってたやん!」と心の中で叫んでいました。声には出せませんでしたが。評価者は向こうなので。

異動して見えたベテランの仕事

私は新卒から同じ会社に20年以上勤めていまして、2度大きな部署異動をしました。1回目は住居も変わる全然違う場所への異動。入社6年目の年でした。んでもって、本年の4月、これまた全く新しい部署へと異動しました。異動すると面白いもので、今まで見えていなかった仕事が急に見えるようになってくることがあります。特に今回感じたのが、ベテランたちの水面下の動きです。表向きには会議に出ていない。主役にも見えない。ところが裏では関係部署を回り、「この案で問題ないか」「誰か困る人はいないか」「上層部はどう考えるか」を確認している。まるでサッカーで言うボランチです。日本代表でいうと鎌田のポジション。得点シーンには映らない。でもその人がいないと試合が成立しない。そんな仕事をしている人が意外と多いのです。最近は私自身も今まで請け負ってこなかったジャンルの仕事を任されることが増え、会議よりもあれこれ事務作業に時間を使うことが多くなりました。すると重要な事務的作業に上の人がダイレクトに関わっていることが分かったのです。「なぜあの人は会議に出ないのだろう」と思っていたベテランたちが、実は別の場所で組織全体を支えていたことに気付かされる場面が増えました。年齢を重ねると、仕事の見え方も変わるものですね。そういえば特許の仕事も少し似ています。私はこの4月まで、技術系の職種に携わっていました。何度か特許が関わる技術を支えてきました。

特許の仕事で学んだこと

世の中では「特許を出願しました!」という部分だけが目立ちます。「特許申請中」という文言が製品に書いてあると、おお~と思ってしまうものです。分かる。めちゃくちゃ分かる。ですが、本当に大変なのはその後だったりします。拒絶理由通知が来る。弁理士さんと相談する。再度、文章を修正する。特許庁に提出する。時に、また拒絶理由通知が来る。また修正する。さらに修正する…サッカーで言えば華麗なゴールシーンではなく、延々と続く守備練習みたいなものです。ゼイゼイと息切れだけします。これ、本当にしんどい。若手の頃は「良いアイデアさえあれば勝てる」と思っていました。ところが実際には、そのアイデアを成立させるために経験者が積み上げてきた知識や交渉力が必要になる。そう考えると、若手が放ったシュートを、ゴールまで運ぶのがベテランの役割なのかもしれません。だから私は最近、若手の勢いも好きですが、それを成立させるベテランの仕事も以前よりずっと格好良く見えるようになりました。

ベテランと老害は紙一重

ただし、ベテランなら何でも良いわけではありません。ここは大事です。声を大にして言いたい。ベテランと老害は、ときどき紙一重です。昔、私の周囲にもいました。教えない人です。自分で抱え込んで、自分だけが出来ると言い張る。とにかく教えない。ノウハウを金庫にしまい込み、「まぁ、私に任せて下さい」で終わる。技術系なのに、技術を後輩に教えない。自分を頼ってくれれば~と聞こえはよいですが、他人を巻き込まず、何をしているかサッパリ分からない。寿司職人の修業でもあるまいし、と思うのですが、本人は本人で自分の居場所を守ろうとしているのでしょう。自分しかできない仕事を増やし、属人化を進める。当時、上層部もその人の言いなりになり、「まぁ彼がいるんだったらいいんじゃない?好きにさせれば。」となっていました。結果として組織は弱くなります。その分野は今、後継者がおらず、私の所属する企業でも非常に弱い分野の一つに成り下がりました。残念な例です。本当に強いベテランは、自分の知識を後輩に渡します。後輩が成長すると喜びます。自分がいなくても回る仕組みを作ります。その違いはとても大きいと思います。難しいよね~

アフリカの小さな島国、40歳GKの意地

さて、冒頭のスペイン戦です。優勝候補スペインとアフリカの島国カーボベルデ。結果はまさかの0-0。そして話題になったのが40歳のベテランゴールキーパーでした。40歳。若い頃は「ベテランだなぁ」と思っていた年齢ですが、最近は「まだまだ大丈夫ですよね~」と言いたくなる絶妙なお年頃です。そのベテランGKは何度もシュートを防ぎ、チームを救いました。派手な経歴もない。ワールドカップ直前の試合では失点もあったと聞きました。爆発的なスピードもない。でも、ここぞという時に仕事をする。これぞ経験の力。サッカーの世界でも会社の世界でも、ベテランの仕事は主役になることではないのかもしれません。バランスを間違えると老害一直線です!若手が思い切り走れるように後ろで支え、必要な時だけ前に出て、終わったら静かに持ち場へ戻る。そんな姿は、なかなか格好良いものです。4年に1度のワールドカップ。私は今日も子どもたちと地図帳を広げながら、ゴールシーンだけではなく、その裏側で試合を支えるベテランたちの働きぶりにも注目してしまうのでした。ではまた!

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