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“住宅ローン残高2,800万”の40代夫婦→「繰り上げ返済は損」ボーナスは投資に回すが…金利と運用益を比べて分かった“大誤算”

  • 2026.7.29
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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

こんにちは。FPとして家計相談やお金に関する情報発信を行っている柴田です。

「ローンを繰り上げ返済するより、投資で増やしたほうが得」。

最近よく聞く考え方ですが、ご自身の数字で計算したことはありますか?今回は、会社員のAさん(44歳・男性)の事例です。

ボーナスは全額NISAへ。「返すより増やす」

Aさんには住宅ローン残高2,800万円(変動金利)と、妻(37歳)の奨学金の残りがありました。

SNSで「低金利時代に繰り上げ返済は損。投資に回すのが正解」という情報を見て、ここ数年ボーナスは全額NISAの投資信託へ。「株価も上がっていましたし、返済に回すのはもったいないという感覚でした」。

この考え方は「イールドギャップ」を狙う戦略です。イールドギャップとは、借入金利と運用利回りの差のこと。たとえば金利0.5%で借りたまま、年5%で運用できれば、差の4.5%分だけ得をする、という理屈です。実はこの考え方自体、条件次第では正しいのです。

問題は、Aさんが「自分のローン金利」と「投資のリターン」を並べて計算していなかったことでした。また、そもそものリスクの概念も見落としてしまっていました。

並べて計算したら、景色が変わった

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出典元:photoAC(※画像はイメージです)

ご相談の場で、Aさんと一緒に諸条件を整理しました。まず、繰り上げ返済の効果は「ローン金利と同じ利回りの、絶対に裏切らない運用」と同じです。Aさんの変動金利は契約時0.5%でしたが、このところの金利上昇で1.1%に。妻の奨学金は有利子で年0.9%(利率固定方式)でした。

対する投資信託の期待リターンは年5%前後といわれますが、これは長期平均の話で、単年では10%以上の下落もあり得る不確実な数字です。しかもAさんは直近の下落で慌てて一部を売却しており、Aさんの個人的な運用成績(利回り)は年2%台。

確実な1.1%と、不確実な2%台。筆者と相談をする中で現実を認識し、「比べてみたら、思ったほど差がないどころか、下手すると逆損をしてしまいますね」とAさん。

さらに生活防衛資金(生活費の半年〜1年分の現預金)が手薄で、急な出費のたびに投信を取り崩していたことも、リターンを削る要因になっていました。

損得の分岐点は「金利」と「続けられるか」

目安として、ローン金利が1%を下回るなら返済よりも投資に分があります。ただし変動金利が上昇して1.5〜2%に近づくほど、確実に利息を減らせる返済の価値が増します。奨学金も同じで、無利子なら急ぐ必要はなく、有利子で1%前後なら投資と迷うラインです。

そしてもう一つの分岐点が「下落しても売らずに続けられるか」。相場が下落しているとき、借金を抱えたまま含み損を眺める精神的負担は、想像以上に重いもの。狼狽売りしてしまうくらいなら、返済という確実なリターンのほうが、結果的にお金が残ることも多いのです。

逆に、借金を完済したときの「心のすっきり感」も立派なメリットです。「返済負担がなくなる」という解放感を得られれば、「自分自身で稼ぐ」「投資の入金力を高める」という点に注力できます。また、イールドギャップを狙うのは論理的には正しくても、実行し続けるのは難しい点は肝に銘じておくべきです。

まとめ

「投資と返済、どちらが得か」に万人共通の正解はありません。ただ、感覚で決めるのは論外です。①自分のローン金利、②投資の実際の利回り、③生活防衛資金の有無の3つを紙に書き出して比べることが最低条件です。Aさんは結局、ボーナスを「返済半分・投資半分」に変更し、まず生活防衛資金の確保から始めました。

得か損かは、商品ではなく家計全体で決まります。あなたも一度、ご自身の数字で計算してみてください。計算しないままの「投資が得」という漠然とした判断は、実際のところ「ただの願望」です。また、イールドギャップを取りに行くのは、「言うは易し、行うは難し」という点も知っておいてほしいと思います。


執筆・監修:柴田 充輝
厚生労働省や保険業界・不動産業界での勤務を通じて、社会保険や保険、不動産投資の実務を担当。FP1級と社会保険労務士資格を活かして、多くの家庭の家計見直しや資産運用に関するアドバイスを行っている。金融メディアを中心に、これまで1,200記事以上の執筆実績あり。

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