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大学進学を拒否し「料理人になる」と、母が必死で貯めた学費を突っぱねた弟。長いすれ違いの結末は

  • 2026.5.31

「子どもにつらい道を歩んでほしくない」「夢を見るのではなく現実を見て」――そう考えるのは親の愛でしょうか、それともエゴなのでしょうか。
今回は、筆者の友人一家に起こった“自分の夢”に関するエピソードを紹介します。

画像: 大学進学を拒否し「料理人になる」と、母が必死で貯めた学費を突っぱねた弟。長いすれ違いの結末は

進学しないと言い出した弟

私が小さいころに両親が離婚したため、母は女手一つで私と弟を育ててくれました。

母はシングルマザーだからという理由で私たちが不自由しないよう必死に働き、学費もしっかりと貯めてくれました。そのおかげで私は行きたかった大学へ進学できたため、弟も当然のように大学へ行くものだと思っていたある日。

高校生になり、飲食店でアルバイトをしていた弟が「大学へは行かない」と言い出したのです。

自分の夢を叶えたい弟

聞くと、弟は「料理人になりたい」「将来は自分の店を持ちたい」と言います。

母は不安定な職だからと猛反対。大学へ行くように勧める母と、母には言い返しはしないものの静かに反対しながらアルバイトを続ける弟。

大学に通っていた私自身も、弟に対し「ママがせっかく費用も貯めてくれてるし、ひとまず行っておいて損はないと思うよ」と説得します。しかし「今はその時間が惜しい」「母さんには感謝してるけど、自分の人生だから」と言う弟。

そして、アルバイト先の店長にいろいろと教わりながら料理を続けた弟は、大学へは行かず、調理師免許を取得したのでした。

実現した“弟の店”へ行く私たち

その後、コツコツと料理の修行を重ねた弟は、ついに自分の店を持つことになりました。

それまで、事あるごとに「今からでも遅くはないのよ」と、料理人を辞めて安定した職に就くよう説得を試みていた母。弟のお店がオープンした日、なんと「一緒に行こう」と私に声をかけてきたのです。

店に着くまで、ほとんど会話をしなかった私たち。母はどのような思いで、私を誘ってきたのかはわかりません。そして弟に大学進学を勧めていた私もまた、弟の店に行っていいものなのか迷いながら足を進めたのでした。

店のドアを開けると、そこには忙しそうに、そして嬉しそうな表情でカウンターの中にいる弟の姿があったのです。

母の気持ちも弟の気持ちもわかるからこそ

私たちに気づくと驚いた表情を見せた弟。それでも「来てくれたんだ」と照れくさそうにしながら、カウンターの2席を案内してくれました。

注文した料理を運んできた弟が「どうぞ」と一言。小さく「いただきます」と言って一口食べる母。

すると、「おいしい」と言う前に「ごめんね」と言いながら、静かに涙を流したのです。

自分の夢を持って立派にやり遂げた弟の姿、目の前で弟の料理を食べて涙している母を見て、私も涙があふれます。母の気持ちも、弟の気持ちもわかるからこそ“正解”はないのだと思った出来事でした。

【体験者:40代・女性会社員、回答時期:2025年12月】

※本記事は、執筆ライターが取材又は体験した実話です。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:清水マキ
育児を機にキャリアを転換し、独学からライター講座の添削講師まで登り詰めた実力派。PTAやスポ少での積極的な交流から、ママたちの「ここだけの話」を日々リサーチ。金融記事も手がける確かな知性と、育児に奮闘する親としての等身大な目線を掛け合わせ、大人女性のライフスタイルから切実な悩みまでを鋭く、温かく描き出す。

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