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精神科病棟で、患者「知らない人がいました」不審者騒ぎでざわつく病棟…→直後、発覚した"意外な真相"に「思わず顔を見合わせた」

  • 2026.6.22
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出典:photoAC ※画像はイメージです。

こんにちは。現役看護師ライターのこてゆきです。

病院で働いていると、名札は当たり前のように身につけているものです。

名前や所属を示すためのもの。それ以上でもそれ以下でもない。

私自身、そう思っていた時期がありました。しかし精神科病棟で働いていた頃、たった1つの名札が病棟全体を騒がせる出来事につながったことがあります。

今回は、新人看護師の何気ない付け忘れから起きたエピソードを紹介します。

「知らない人が病棟を歩いている」

その日、精神科病棟はいつも通りの午後を迎えていました。

レクリエーションも終わり、患者さんたちはそれぞれ病室や談話室で過ごしていました。

大きなトラブルもなく、比較的落ち着いた時間帯です。

そんな中入院していたBさんがナースステーションへやって来ました。

少し緊張した表情でした。

「さっき、知らない人が歩いてました」

対応したスタッフは聞き返しました。

「知らない人ですか?」
「うん。職員じゃないです」

Bさんは真剣な表情でそう言いました。

精神科病棟では、時に被害妄想や幻覚に関連した訴えが聞かれることがあります。そのためスタッフもまずは落ち着いて話を聞きます。

「どんな人でした?」

そう尋ねると、

「若い人です…病室の前にもいました」

と答えました。ただ、その時点では誰も深刻には受け止めていませんでした。

「また見たんです」他の患者さんも言い始めた

それから30分ほど経った頃でした。再びBさんがやって来ました。今度は少し興奮した様子です。

「またいました。今度は談話室の前です」

スタッフ同士で顔を見合わせました。

病棟は施錠管理されており、外部の人が自由に出入りできる環境ではありません。もちろん面会者が入ることはあります。しかし、その日は面会の予定もありませんでした。

「職員だったんじゃないですか?」

スタッフがそう聞くと、Bさんは首を振ります。

「違います。職員なら分かります」「知らない人でした」

その言い方が妙に確信に満ちていたことを覚えています。

そして事態が少し変わったのは、その後でした。別の患者さんからも同じような話が出たのです。

「さっき誰かいた気がした」

「見慣れない人じゃなかった?」

スタッフの間にも少し緊張が走りました。

一人だけの訴えなら症状の可能性も考えられます。

しかし複数の患者さんが似たようなことを話し始めたのです。

「本当に誰か入った?」「業者さん来てた?」「面会者じゃない?」

そんな確認が始まりました。

病棟内の確認が始まる

念のため病棟内を確認することになりました。

病室、談話室、トイレ、浴室、デイルーム。普段人が入らないような場所まで見て回りました。

しかし、それらしい人物はいません。スタッフの人数も確認しました。全員そろっています。

病棟内に不審者がいる形跡はありません。それでも患者さんたちは口々に言うのです。

「いたと思うんだけどな」
「若い人だった」
「見たことない人」

その頃には病棟全体が少しざわつき始めていました。

「あれ?名札ついてない」すべてがつながった瞬間

転機は思いがけないところから訪れました。

ベテラン看護師が新人看護師Aさんを見て、ふと声をかけたのです。

「あれ?」
「名札どうしたの?」

Aさんは驚いた顔をしました。

「え?」

胸元を見ると、確かに名札がありません。Aさんは慌てて言いました。

「処置の時に外して…そのまま忘れてました」

話を聞くと、午前中にストラップが邪魔になり、一時的にナースステーションへ置いたそうです。

そして業務へ戻ったまま、付け忘れていたのでした。その話を聞いた時、スタッフの一人が言いました。

「もしかして…」

Aさんは入職してまだ数か月。患者さんとの関係も十分にはできていません。さらにその日はマスクを着用していました。

そして名札がない。つまり患者さんから見ると、

「職員らしくない若い人」

に見えていた可能性があったのです。実際にBさんへ確認してみると、

「その人です」

とAさんを指差しました。私たちは思わず顔を見合わせました。

「症状だから」で終わらなかった。Bさんにはちゃんと理由があった

後からBさんへ詳しく話を聞くと、こんなことを言いました。

「職員なら名札がありますよね」
「だから違う人だと思ったんです」

私はその言葉にハッとしました。私たちにとって名札は単なる身分証です。けれど患者さんにとっては違いました。

誰が職員なのか。誰に相談できるのか。安全な人なのか。

そうした判断材料の一つだったのです。

特に精神科病棟では、環境の変化や見通しのつかなさが不安につながることがあります。Bさんは本当に知らない人がいると思っていたのでした。

今回の出来事で印象的だったのは、最初にスタッフが「妄想かもしれない」と考えたことです。

もちろん症状として、その可能性はあります。しかし実際には、Bさんの訴えには現実的な根拠がありました。

名札を付けていない職員が歩いていた。だから違和感を覚えた。それだけだったのです。

もし最初から「症状ですね」と決めつけていたら、この事実には気づかなかったかもしれません。

名札以上の意味があった。小さなことが安心を支えている

その後、Aさんは苦笑いしながら言いました。

「名札1つでそんなに変わるなんて思ってませんでした」

確かに私もそうでした。しかし患者さんにとって、名札は安心感につながる情報です。

誰が職員で、誰がそうでないのか。それが分かるだけで不安が減ることもあります。特に精神科病棟では、環境の分かりやすさや見通しの良さがとても重要です。

あの日、不審者騒ぎの原因は名札の付け忘れでした。振り返れば些細な出来事です。

けれど、その小さな確認漏れが患者さんの不安につながり、病棟全体を巻き込む騒動になりました。私たちはつい、医療行為や専門的な知識ばかりに目が向きがちです。

しかし患者さんが安心して過ごすためには、名札を付けること。笑顔で挨拶すること。いつもと同じ姿でいること。

そんな当たり前の積み重ねも大切なのだと感じます。新人看護師の名札の付け忘れから始まった出来事。それは、精神科病棟における「安心感」とは何かを改めて考えさせられる忘れられない経験でした。



ライター:こてゆき

精神科病院で6年勤務。現在は訪問看護師として高齢の方から小児の医療に従事。精神科で身につけたコミュニケーション力で、患者さんとその家族への説明や指導が得意。看護師としてのモットーは「その人に寄り添ったケアを」。

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