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「縁起でもない」でも──しぶしぶ書いた【エンディングノート】で知った、無口な夫の『30年目の本音』

  • 2026.5.28

人生の終わりについて考えることは、たとえ家族であってもどこか話しづらいものです。でも、勇気を出して向き合ってみると、これまで知らなかった本音に触れるきっかけになることも。今回は、筆者の知人の体験談をお届けします。

画像: 「縁起でもない」でも──しぶしぶ書いた【エンディングノート】で知った、無口な夫の『30年目の本音』

「もしものとき」のために

「パパとママ、エンディングノートって知ってる? もしものときのために、考えておいてほしいな」

と、娘から一冊のノートを渡されたのは半年ほど前のことでした。

私たち夫婦はまだ60代後半。
体も動くし元気なのに、「エンディングノート」だなんて……。
正直、少し早すぎる気がしてなりませんでした。

「死んだあとのことを考えるなんて、縁起でもない」と顔をしかめる夫と私でしたが、娘の熱意と真剣な表情に押され、しぶしぶ重い腰を上げてペンを握ることにしたのです。

予想を裏切る真剣な顔

最初は、私たちがいなくなったあとに残される娘のことを考えて、通帳の置き場所や葬儀形式の希望など事務的な項目を淡々と埋めておけばいいか、程度に考えていました。

どうせ夫は面倒くさがって、いつものように「俺はよく分からないから、こういうのは全部お前に任せるよ」と投げ出すに決まっています。

そう高を括っていた私の予想は、見事に裏切られました。

無口な夫が、ノートの小さな欄を埋めるために、これまでにないほど真剣な顔で背中を丸めて、ペンを走らせていたからです。

初めて知った夫の本音

こっそり覗いてみると、ノートには普段の会話では絶対に出てこない夫の願いが詰まっていました。

「もしものときは、延命処置は一切しなくていい。その分のお金で、妻と娘で旅行にでも行ってほしい」
「遺骨の一部は、新婚旅行で妻と行った、あの思い出の海に撒いてほしい」

30年以上連れ添い、夫のことは何でも分かっているつもりでした。
しかし、私は夫の深い愛情や、死に対する静かな覚悟を、何ひとつ知らずに過ごしていたのだと気付かされたのです。

夫婦の時間の答え合わせ

しぶしぶ始めたはずの作業は、いつの間にか、これまでの2人の歩みを答え合わせするような、穏やかで温かい作業になっていました。

もしかすると娘は、こうなることを分かっていたのかもしれません。

人生の終わりについて話し合うことは、決して後ろ向きなことではないのですね。
お互いの価値観を改めて書き出してみることで、残りの日々を今以上に大切に歩いていこうと思えた、貴重な経験でした。

【体験者:60代・女性主婦、回答時期:2026年4月】

※本記事は、執筆ライターが取材した実話です。ライターがヒアリングした内容となっており、取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。

FTNコラムニスト:藍沢ゆきの
元OL。出産を機に、育休取得の難しさやワーキングマザーの生き辛さに疑問を持ち、問題提起したいとライターに転身。以来恋愛や人間関係に関するコラムをこれまでに1000本以上執筆するフリーライター。日々フィールドワークやリモートインタビューで女性の人生に関する喜怒哀楽を取材。記事にしている。

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