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「チキン20個、今すぐ揚げてよ」忙しいレジを止めた客。だが、店長が渡した番号札が客を動かした瞬間

  • 2026.7.31
「チキンは20個、今すぐ揚げてよ」昼どきのレジを1人で止めた客を、店長が渡した番号札が動かした瞬間

昼どきに止まったレジ

都心のコンビニは、平日の昼どきになると別の店に変わります。

会社員が一斉に流れ込んできて、レジの前には必ず列ができるのです。

その日も私は、弁当を抱えて最後尾に並んでいました。

列が動かないと気づいたのは、二分ほど経ってからでした。

先頭に立った男性客が、ホットスナックのケースを指で叩いていたのです。

「チキン20個、今すぐ揚げてよ」

応対していたのは、まだ若い店員でした。

「申し訳ございません、揚げるのにお時間をいただきます」

「待つよ。それと、ここに入ってる分も全部ちょうだい」

ケースの中の串も、コロッケも、まとめて袋に詰めさせています。

数えて、袋を替えて、また数え直す。そのあいだ、レジは止まったままでした。

後ろに並んでいるのは、昼休みを削って買いに来た人ばかりです。

腕時計を見る人、列を離れて棚へ戻る人。誰も声は出しませんが、空気だけが重くなっていきました。

差し出された番号札

奥の扉が開いて、店長の名札を付けた男性が出てきました。

怒鳴りもしなければ、眉をひそめもしません。

ケースの前に立って、静かに男性客へ告げたのです。

「お揚げに15分ほどかかりますので、番号札をお渡しします。お呼びしますので、それまで店内でお待ちください。先に他のお客様のお会計をさせていただきますね」

差し出されたのは、雑誌の棚の脇に置いてある小さな札でした。

「先に頼んだのは俺だろ」

「はい。ですので、揚がり次第いちばんにお呼びいたします」

男性客は、まだ何か言いかけました。けれど、そこで動きが止まったのです。

視線が、自分の後ろへ向きました。

列に並んだ会社員たちが、誰ひとり口を開かず、まっすぐこちらを見ていたのです。

男性客の手が、ゆっくり下がりました。札を受け取ると、耳のあたりが赤くなっていくのが分かりました。

「……分かったよ」

そのまま雑誌の棚へ歩いていき、こちらへ背を向けて立ちました。

店長がレジに入り、若い店員がもう一台のレジを開けます。

「お待ちのお客様、こちらへどうぞ」

一本で詰まっていた列が、二本の線になって一気に流れ出しました。

私の番が来たのは、それから一分もしないうちです。

会計を通してくれた店員の顔から、こわばりが取れていました。

「お待たせしてしまって、すみませんでした」

店を出るとき、揚げ物の音がまだ続いていました。

札を握った男性客は雑誌の棚を見つめたまま、レジのほうを一度も見ようとしません。

別のコンビニまで歩くつもりでいた私は、結局この店の弁当を持って会社へ戻ったのでした。

※GLAMが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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