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「退去費用は火災保険を使えばゼロ」は本当?SNSで話題の主張、不動産のプロの見解は

  • 2026.7.9
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出典元:photoAC(画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。不動産業界に15年携わり、宅地建物取引士やマンション管理士の資格を持つライターの西山です。賃貸物件から引っ越すとき、退去費用の見積もりを見て驚いた経験のある方は多いのではないでしょうか。

最近、SNS上で「退去費用は火災保険を使えばゼロにできる」という投稿が話題を集めています。本当に保険だけで退去費用をすべてまかなえるのか、疑問に思う方もいるはずです。

今回は、賃貸の火災保険の仕組みを整理し、保険金が出るケースと出ないケースを見ていきます。

退去費用をカバーする保険の正しい仕組み

そもそも退去費用とは、入居者が退去する際に「部屋を借りる前の状態に戻す」原状回復のための費用です。退去費用をカバーできる可能性があるのは、賃貸契約時の火災保険に含まれる借家人賠償責任保険や修理費用補償特約です。

借りている部屋に損害を与え、大家さんへの賠償責任を負ったときや、契約に基づき自己負担で修理する際に使えます。よく混同されるものに、自分のテレビや家具が壊れた際に使う家財の補償があります。

家財の補償は、あくまで自分自身の持ち物のための保険であり、部屋の原状回復には使えません。退去時の精算費用とは全く別物です。

保険が出るケースと出ないケースの境界線

借家人賠償責任保険が適用されるのは、基本的には予期せぬ大きなトラブルが起きた場合に限られます。例えば、タバコの不始末によるボヤや、配管の破裂、洗濯機のホースが外れたことによる水濡れなどは補償の対象となります。

こうした不測の事態によって部屋に損害を与えた場合は、大家さんへの賠償金として保険金が支払われるケースが一般的です。一方で「家具をぶつけて壁に穴を開けた」「窓ガラスを割った」といった日常のうっかりした破損は、主流の商品では対象外となることが一般的です。

故意に付けた傷や、掃除を怠ったことによるカビ、ペットによる引っかき傷なども補償されません。さらに、家具の設置跡や壁紙の日焼けといった、年月の経過で生じる傷みは、国のガイドラインで大家さんの負担が原則です。

居住者が費用を支払う必要自体がないため、ここでも保険の出番はありません。

SNSの情報を鵜呑みにせず明細を確認する

こうした仕組みを踏まえると、SNSで囁かれている「退去費用が全部ゼロになる」という主張は言い過ぎであることが分かります。保険でまかなえる範囲は、居住者負担とされた修繕費用のうち、火災や水濡れなど補償対象となる特定の原因によるものだけです。

もし、退去時に高額な費用を請求されたら、まずは請求明細書と原状回復のガイドラインを照らし合わせてみてください。普通に暮らして生じた傷や汚れ、年月による傷みの部分が居住者負担になっていないか、最初に切り分けることが重要です。

そのうえで、居住者が負担すべき傷や汚れの中に、加入している火災保険の補償対象となるものがないかを保険会社に確認しましょう。入居する段階から、火災保険の借家人賠償責任保険がどこまでカバーするのかを把握しておくと、退去時に慌てずに済みます。

参考:
損害保険Q&A すまいの保険(日本損害保険協会)
「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について(国土交通省)



筆者:西山雄介(宅地建物取引士・マンション管理士・FP2級などの資格所有)
不動産業界歴15年。新卒で東証プライム上場のマンションデベロッパーに入社後、計2社で新築・中古販売および管理業務に従事。実務現場を経て管理職も歴任し、組織運営にも携わる。現在はその多角的な視点を活かし、実務解説から不動産投資、法律事務所案件まで、専門性の高いコンテンツ制作・ディレクションを行っている。


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