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タワマン28階を選ぶも「眺めは最高。でも…」30代夫婦が見落としていた“非常時の落とし穴”【一級建築士は見た】

  • 2026.6.25
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

「眺めのよさに一目ぼれして、思いきって高層階を選んだんです。でも、防災訓練で『停電したらエレベーターが止まる』と聞いて、初めて不安になって…」

そう話すのは、都市部のタワーマンション(28階・約75㎡・約9,500万円)を購入したYさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。広い窓から見下ろす夜景に魅了されて決めた住まいでしたが、入居後の防災訓練をきっかけに、高層階ならではの「非常時」のリスクを意識するようになりました。

「災害が起きても、家がこれだけしっかりしていれば安心」と考えていたYさん夫婦。けれども、建物が無事であることと、そこで普段どおり暮らせることは、必ずしも同じではないのです。

停電すると、エレベーターが止まる

タワーマンションの高層階で、まず想定しておきたいのが停電です。地震や台風などで停電すると、多くのマンションでエレベーターが止まります。

エレベーターが使えなくなると、高層階の住民にとって、地上との行き来は階段だけが頼りになります。28階から地上まで歩いて降りるだけでも相当な負担で、過去の災害では、エレベーターの復旧に数日から1週間程度かかった例もあります。買い出しに行くにも、外の支援を受けるにも、階段を何十階分も上り下りしなければならず、高層階ほど「外に出るのが難しい」状態に陥りやすいのです。

こうした状態は「高層難民」とも呼ばれ、建物そのものが無事でも、生活の足が断たれてしまう点に注意が必要です。

水もトイレも止まる、という落とし穴

もうひとつ見落としがちなのが、水まわりです。高層階のマンションでは、ポンプで水を各住戸まで送り上げているケースが一般的です。

このポンプは電気で動いているため、停電するとポンプが止まり、蛇口から水が出なくなることがあります。つまり停電は、断水と同じ状態を引き起こしうるのです。さらに、水が流せなくなればトイレも使えません。また、マンション全体のリスクとして、地震で排水管が傷んでいる場合、無理に流すと下の階で汚水があふれることもあり、安易に流せないという問題も生じます。

「タワーマンションには非常用の発電設備があるから大丈夫」と思われがちですが、その電力は共用部分の照明やエレベーターなどに使われるのが一般的で、各住戸のコンセントや水道にまで届くとは限りません。運転できる時間も限られています。

Yさん夫婦はどう備えたのか

非常時のリスクを知ったYさん夫婦は、まず「高層階は在宅避難が基本になる」と考え方を切り替えました。

エレベーターが止まれば外に出るのが難しい以上、数日間は自宅で過ごせるよう、飲み水や食料、簡易トイレ、明かりやモバイルバッテリーなどを少し多めに備えることに。とくに簡易トイレは、水が流せない状況を想定して、家族の人数分を多めに用意しました。あわせて、自分たちのマンションの非常用電源が何をどれくらい動かせるのか、断水時に使える水の備えが建物にあるのかを、管理組合や管理会社に確認しておくことにしたそうです。

「眺めのよさは気に入っているので、その分、非常時の備えはしっかりしておこうと思いました」とYさんは振り返ります。

タワーマンションは「非常時」まで考えて選ぶ

タワーマンションの高層階を検討する際は、眺望や快適さだけでなく、非常時にどうなるかも知っておくと安心です。とくに以下の点を意識してみてください。

・停電時に非常用電源が何を動かせるか(エレベーター、給水ポンプ、各住戸への給電の有無)
・断水に備えた水の備蓄や、災害時の給水の仕組みがあるか
・在宅避難を想定した備蓄(水・食料・簡易トイレなど)を置くスペースがあるか

「快適さ」と「もしも」の両方を見て

タワーマンションの高層階は、眺望や開放感など、ほかにはない魅力があります。一方で、その高さゆえに、停電や断水といった非常時には、低層の住まいとは違った困りごとが生じやすいのも事実です。

大切なのは、魅力と「もしも」の両方を知ったうえで選ぶこと。そして、高層階に住むなら在宅避難を前提に、日ごろから備えておくことです。建物の頑丈さに加えて、自分自身の備えがあってこそ、本当の安心につながります。

「眺めがいいから」だけでなく、「もしものとき、どう過ごすか」まで想像しておくこと。それが、高層階の暮らしを安心して楽しむ第一歩です。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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