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「W杯、決勝ゴールの瞬間を…」築10年3LDKを購入も、30代夫婦が直面した"落とし穴"【一級建築士は見た】

  • 2026.6.14
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出典:PhotoAC ※画像はイメージです

「ワールドカップをネット配信で観ていたら、ここぞという場面で映像がカクカクに。気づいたら点が入っていて、決勝ゴールの瞬間を見逃したんです」

そう話すのは、都内のマンション(築10年・約70㎡・3LDK)を約6,200万円で購入したサッカー好きのAさん(30代夫婦・子ども1人の3人暮らし)です。「インターネット無料・全戸一括導入」という設備に魅力を感じて選んだといいます。

ことの発端は4年前のワールドカップ。深夜から早朝の試合の配信を観ようとすると、たびたび映像が止まったり画質が落ちたりしたのです。「我が家のWi-Fiが悪いのかと思っていました」と振り返ります。

北中米3カ国で共催される2026年大会が開幕。日本からの観戦は早朝から日中の試合が中心ですが、深夜キックオフの試合も多くなりそうです。4年前のAさんと同じように、回線の混雑が気になる家庭もあるかもしれません。

「ネット無料・完備」でも、快適さまで同じとは限らない

マンションのインターネット設備は、「全戸一括導入」「インターネット無料」と書かれていても、それは「まず使える環境が整っている」という意味で、速度や混雑のしにくさまで約束するものではありません。

建物まで引き込んだ回線を各住戸で共有する方式では、多くの世帯が同時に動画配信やスポーツ中継を視聴する時間帯に、通信速度や安定性に影響が出ることがあります。

カギを握るのは「配線方式」

マンションの通信環境を左右する大きな要素が、建物内の配線方式です。同じ「光回線対応」でも、各住戸までのつなぎ方によって体感に差が出ることがあります。

代表的なのが、共用部までは光ファイバーを引き込み、そこから各住戸までは電話回線を使うVDSL方式です。一方、各住戸まで光ファイバーを引き込むのが光配線方式です。

VDSL方式は、建物にすでにある電話回線を生かせるため、大がかりな工事をせずに全戸にまとめてネット環境を整えられるのが利点です。配管の空きなどの事情で光配線方式の導入が難しい建物でも採用しやすく、ふだんのネット利用には十分なことも多い、現実的な方式です。

やっかいなのは、配線方式が建物ごとに決まっていて、住む人が自由に選べるとは限らないことです。しかもVDSL方式でも建物までは光ファイバーが来ているため「光回線対応」と表示されることがあり、表示だけでは中身が分からないのです。

Aさん夫婦はどう対応したのか

Aさん夫婦は、まず原因の切り分けから始めました。時間帯ごとに速度を測るうちに、深夜帯に通信が不安定になりやすいと気づいたそうです。

そこでWi-Fiルーターを新しい規格のものに買い替え、宅内環境を整備。それでも大事な試合では不安定になることがあり、モバイル回線を併用して観るようにしたといいます。

さらに管理会社に確認したところ、Aさんのマンションは共用部までは光ファイバーでも、各住戸まではVDSL方式で配線されていたことが判明。住戸内のWi-Fi機器だけでは解決しにくい、建物側の条件もあったのです。

ただ、建物全体の方式変更は管理組合での合意や費用負担が必要で、すぐには実現できません。全戸一括型のため個別契約にも制約があり、宅内環境の工夫とモバイル回線の併用で対応することにしたそうです。「設備の名前だけで安心せず、中身を知ることが大事だと分かりました」とAさんは振り返ります。

マンションは「回線の中身」まで確認して選ぶ

住まい選びでネット環境を重視するなら、「無料」「完備」という言葉だけで判断せず、次の点まで確認しておくと安心です。

・建物の配線方式が何か
・全戸一括型か、住戸ごとに別回線を契約しやすいか
・夜間や休日など、利用が集中する時間帯に不安定にならないか
・将来的に個別回線の追加や方式変更の余地があるか

確認先は、重要事項説明書や管理会社・管理組合の資料が基本です。

「自宅で快適に楽しむ」ために

ワールドカップを自宅でゆっくり観られるのは、住まいならではの楽しみです。ただ、その快適さは「ネットが付いているか」だけでは決まりません。

大切なのは、表示をそのまま受け取らず、配線方式や契約の仕組み、混雑時の使い心地まで想像しておくことです。宅内のWi-Fi環境を整え、必要ならモバイル回線を併用する。そうした備えがあれば、肝心な場面で困る可能性は減らせます。Aさんも2026年大会では、モバイル回線も使えるよう準備しておくつもりだそうです。

「設備があるか」だけでなく、「本当に快適に使えるか」まで見ること。それが、ネット時代の住まい選びで後悔しないためのポイントです。


ライター:yukiasobi(一級建築士・建築基準適合判定資格者)
地方自治体で住宅政策・都市計画・建築確認審査など10年以上の実務経験を持つ。現在は住宅・不動産分野に特化したライターとして活動し、空間設計や住宅性能、都市開発に関する知見をもとに、高い専門性と信頼性を兼ね備えた記事を多数執筆している。


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