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「まさか28階まで階段なんて…」約1億円の都心タワマンを“終の住処”にした50代夫婦が直面した過酷な現実

  • 2026.6.24
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出典:photoAC(※画像はイメージです)

皆さま、こんにちは。現役の不動産会社社長として、日々さまざまな土地や建物のご相談に向き合っている岩井です。

住まい選びをするとき、多くの方は日当たりや眺望、駅からの距離を重視するのではないでしょうか。特にタワーマンションは、高層階からの景色や資産価値の高さに魅力を感じる方も少なくありません。

しかし、住宅は毎日暮らす場所です。だからこそ、普段は快適でも「もしもの時」にどうなるかまで考えておく必要があります。

今日は、都心のタワーマンション28階を終の住処として購入した50代ご夫婦が、突然の停電によって思わぬ苦労を経験したお話をご紹介します。

購入当初は理想そのものだった住まいが、ある日を境にまったく違う姿を見せることになりました。

28階からの眺望に魅了され購入した終の住処

これは私が不動産売買の仕事をしている中で、数年前に知り合いの不動産会社から聞いた、50代のAさんご夫婦のお話です。

Aさんご夫婦は、お子さまの独立をきっかけに都心のタワーマンションを購入しました。決め手になったのは、駅徒歩数分という利便性と、28階から見渡せる圧倒的な眺望でした。

「老後は便利な場所で暮らしたい」
「これが最後の住み替えになると思う」

そう話していたご夫婦は、約1億円の住戸を終の住処として選択します。

入居後の生活はまさに理想そのものでした。窓いっぱいに広がる夜景。開放感あふれるリビング。駅や商業施設へ気軽にアクセスできる利便性。友人を招くたびに「本当にいい部屋だね」と羨ましがられたそうです。

「思い切って購入して正解だった」

Aさん自身も大変満足していました。しかし、その考えは夏のある出来事によって大きく変わることになります。

突然の停電でエレベーターが全面停止

異変が起きたのは真夏の猛暑日でした。その日、マンション全体で突然の停電が発生したのです。当初、住民の多くは数時間程度で復旧するだろうと考えていました。

しかし設備点検の結果、事態は想像以上に深刻でした。停電だけでなく、エレベーターの復旧を支える非常用電源にも不具合が見つかったのです。その後、管理会社による説明会が開かれました。担当者から告げられたのは衝撃的な内容でした。

「エレベーターの復旧には2〜3日程度かかる見込みです」

会場にはざわめきが広がります。タワーマンションでは、エレベーターは単なる共用設備ではありません。日常生活を支える重要なインフラです。特に高層階に住む人たちにとっては死活問題でした。Aさんも思わず声を上げたそうです。

「えっ…28階まで階段ですか?」

もちろん代替手段はありません。自宅へ戻るには、自分の足で28階まで上るしかなかったのです。Aさんご夫婦は階段へ向かいました。しかし想像していた以上に過酷でした。

10階付近で一度休憩。20階を過ぎる頃には息が上がり、足も重くなります。途中の踊り場で何度も立ち止まりながら、ようやく28階へ到着しました。玄関のドアを開けた瞬間、ご夫婦はその場に座り込んでしまったそうです。

この時はまだ、ご夫婦も本当の苦労が始まるとは思っていなかったのです。

買い物やゴミ出しも大きな負担に

本当の苦労は翌日から始まりました。飲料水や食料品は必要ですし、ゴミも出さなければなりません。しかし外出すれば、帰宅時には再び28階まで階段を上らなければならないのです。

特に大変だったのが買い物でした。2リットルのペットボトルを数本購入しただけでも大きな負担になります。ゴミ出しも簡単ではありません。重いゴミ袋を持って階段を下り、再び自宅まで上らなければならないからです。さらに宅配便が届いても、受け取りのたびに階段での移動が発生します。

Aさんご夫婦は次第に「できるだけ外へ出たくない」と考えるようになったそうです。その結果、買い物の回数を減らし、必要最低限の外出しかしなくなりました。

マンション内でも不安は広がっていました。

高齢の住民の中には「今日はもう外出を諦めるよ」「階段では体力がもたない」と話す人もいたそうです。また、今回の停電によって備蓄の重要性を痛感した住民も少なくありませんでした。

飲料水や非常食を十分に準備していなかった世帯では「もし復旧がさらに長引いたらどうなるんだろう」という不安の声が聞かれるようになります。

Aさんご夫婦も同様でした。これまでは景色や利便性ばかりに目が向いていましたが、この出来事をきっかけに、非常時の備えについて真剣に考えるようになったそうです。

停電をきっかけに変わった住まいへの価値観

幸い設備は数日後に復旧しました。エレベーターが動いた瞬間、多くの住民から安堵の声が上がったそうです。

しかし、この出来事はAさんご夫婦の価値観を大きく変えました。以前は「高層階ほど価値が高い」と考えていました。ところが今は違います。Aさんはこう話していました。

「景色や資産価値ばかり見ていました」「まさか階段で28階を上る日が来るなんて想像もしていなかった」

その後、ご夫婦は低層階への住み替えや低層マンションの購入も検討し始めたそうです。購入時には気にならなかったことが、年齢を重ねるにつれて大きな問題になる可能性を実感したからでした。

タワーマンション購入前に確認したいポイント

タワーマンションには、利便性や眺望、資産価値など多くの魅力があります。ただし、高層階ほど設備への依存度が高いことも事実です。

そのため購入前には次のような点を確認しておくことをおすすめします。

  • 非常用電源の対応範囲
  • 過去の停電や設備トラブル履歴
  • 管理組合の防災計画
  • マンション内の防災備蓄状況
  • 飲料水や非常食の備蓄体制
  • 高齢期を見据えた階段利用の負担

特にタワーマンションでは、エレベーターが停止すると日常生活そのものが大きく変わります。住宅購入では平常時の快適さだけでなく、「もし設備が止まったらどう暮らすのか」という視点も大切です。

高額な住まいだからこそ、眺望や資産価値だけでは見えない部分まで確認しておくこと。それが、後悔しない住まい選びにつながるのではないでしょうか。



筆者:合同会社ゆう不動産 代表 岩井佑樹

不動産売買の専門家として仲介・査定・買取に携わりながら、不動産Webライターとして1,000記事以上を執筆。「売る力×伝える力」を軸に、情報発信と販売の両面から不動産の価値を高めている。派手さよりも誠実さを大切にし、地域に寄り添う姿勢で「早く・高く・安心」の取引を支える不動産の専門家。


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