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5年前、増量で役作りに挑んだ「丸刈りの青年」NHK大河から朝ドラまで…“別人の顔”で魅せる「実力派俳優」とは

  • 2026.7.3
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2025年4月、Netflix『新幹線大爆破』のイベントに出席した細田佳央太(C)SANKEI

俳優の魅力は、たいてい「その人らしさ」にある。同じ顔でも、滲み出る個性で観客を惹きつける。それを華と呼ぶ。

細田佳央太は、そこが少し違う。画面の向こうで、完全に別の誰かを生きてしまう。純朴な高校生、戦中の弟子、徳川の嫡男、暴走するパーサー。顔は同じなのに、立ち上がる人物の輪郭がまるで違う。派手に化けるのではなく、静かに別人を引き受ける。それが、細田佳央太の芝居の作り方だ。

外側を作り替えても内側は変えない

最初に多くの視聴者の記憶に焼きついたのは、2021年のTBS系日曜劇場『ドラゴン桜』第2シリーズだった。細田が演じたのは原健太。東大専科の生徒のなかでも、不器用で純朴な少年だ。坊主にし、体重を増やして体型まで作り替えて挑んでいる。容姿の作り込みだけ見れば大きな変身に見えるが、芝居そのものは正反対だった。表情の振り幅は小さく、困惑と決意を内側のごく小さな揺れで運ぶ。

不器用な少年を演じるとき、ふつうは外側の動きで愛嬌を補強したくなる。細田はその誘惑に乗らない。坊主と増量で外側を別人に作り替えたぶん、芝居は逆に削ぎ落とす。

派手な抑揚を取らず、佇まいと所作で原健太という人物を成立させてしまう。役のために身体を変えながら、芯の温度は変えない。この組み合わせが効くから、純朴さが演技ではなく素のように届く。ここで決まった姿勢が、この俳優のその後を貫いている。

現代の高校生から戦国の嫡男へ地続きで歩く

2023年のNHK大河ドラマ『どうする家康』では、松平信康を演じた。家康の嫡男という戦国でも屈指の重い役回りで、第25回をもって物語から退場する。時代劇の所作、武家の若殿としての誇り、父に背を向けざるを得ない息子の切なさ。三つを同時に乗せなければ画面が持たない役だ。普通は、どれか一つを激情で押し出してバランスを取る。

細田は、ここでも声で押し出さない。落とした息の中で、徳川の嫡男であることと、ひとりの若い男であることを、同じ温度で重ねて運ぶ。最期の場面でも、悲愴さを身振りで増幅させない。それだけに、信康の退場の重さが画面に残る。

『ドラゴン桜』の現代の高校生から、戦国の嫡男へ。時代も身分もまるで違うところへ、同じ俳優が地続きの温度で歩いて行った。低い温度のままで地層をまたげるかどうか。大河は、そこを試す現場である。NHKがこの役にこの俳優を当てた事実そのものが、起用側の見立てを示している。

短命の役の重みを佇まいで引き受ける

2025年のNHK連続テレビ小説『あんぱん』では、原豪を演じた。石工・釜次の弟子で、出征し戦地で命を落とす青年だ。

戦中編の朝ドラで、戦地で死ぬ若者を演じる仕事は、観客の涙腺に直接届く強い装置になりやすい。だからこそ、過剰に泣かせにいく芝居はかえって役を浅くする。細田はここでも温度を上げすぎない。出征前の弟子としての所作、釜次への目線、そして戦地での最期に至るまでの時間を、淡々と低く刻んでいく。

朝ドラという場は、毎朝、不特定多数の家庭に届く。悲しみを身振りで増幅させる青年より、同じ温度のまま消えていく弟子のほうが、観た側の胸に深く残る。短い時間の重みを佇まいで引き受けられる若い男が、ここに必要だった、ということだろう。これは細田の芝居の手柄であると同時に、起用した側の見立ての結果でもある。

現代の高校生、戦国の嫡男、戦中の弟子。地層は変わっても、芯の温度は変わらない。同じ顔のまま、その人物が生きた時間の重さを引き受ける。

同じ制服姿で振れ幅を見せる

2025年公開のNetflix『新幹線大爆破』では、藤井慶次を演じた。樋口真嗣監督、草彅剛主演で、半世紀ぶりに蘇った原作の現代翻案だ。車内の異常事態に巻き込まれ、職務の枠を越えて暴走していくパーサーである。声と動きの両方で限界の緊張を運ぶ、これまでとは異質な役どころだ。

そのすぐ隣に置きたいのが、2026年1月から続くBOAT RACE振興会のCMシリーズ『ゼロからプロへ マチダ教官物語』である。町田啓太演じる教官の傍らで、訓練生役を担っている。

同じ「制服姿の若い男」でも、極限のパーサーと、教官の隣で素直に学ぶ訓練生では、立ち姿の体温がまるで違う。映画とCM、尺も媒体も観られ方も別の場で、芝居の振れ幅が、現在地として並んで見える。同じ顔のまま人物を使い分けるこの俳優の輪郭が、ここで明確に像を結んだ。

顔の下に別人を住まわせる

2026年8月には、新城毅彦監督の映画『あの星が降る丘で、君とまた出会いたい。』が公開される。細田が演じるのは、亡くなった人物の面影を持つ副担任という役どころだ。これまでに重ねてきた高校生、嫡男、弟子、パーサー、訓練生。そのすべての先に、別の誰かの面影をその身に立ち上げる役が置かれる。

スクリーン、地上波、配信、舞台。場が変わっても、媒体が変わっても、同じ顔のまま別の誰かを生きる仕事を、細田佳央太は淡々と続けていく。派手に化ける俳優ではない。低い温度のまま顔の下に別人を住まわせる、そういう人なのだ。


※記事は執筆時点の情報です

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