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聞いたら勝手に肩が揺れる、27年前の夏。多幸感だけで成立してしまう"跳ねるダンスポップ"の正体

  • 2026.7.3
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DA PUMP-1998年7月撮影(C)SANKEI

夏の入り口で軽快なビートに身を任せた記憶は、誰しも一度はあるはずだ。難しいことは何ひとつ言わない。ステップが勝手に出る、伸びやかなボーカルがまっすぐ高く抜ける、聴いているだけで気分が前に転がる。そんな多幸感だけで成立してしまう曲が、たまにある。これは時代のダンスポップではない。夏そのものを音にしてみせた一曲だ。

DA PUMP『Crazy Beat Goes On!』(作詞:m.c.A・T/作曲:富樫明生)ーー1999年6月9日発売

サントリー『C.C.レモン』CMソングとして茶の間に流れ込み、夏の景色をひとつ更新した8枚目のシングル。デビュー2年目、ISSAを軸にYUKINARI・SHINOBU・KENの4人で駆け上がっていた時期に放たれた、ダンス&ボーカルグループの本領そのものである。

重さで踊らせず、軽さで踊らせる

イントロが鳴った瞬間に身体が動く。理屈ではなく反射として、足の裏が浮く。多幸感の正体を編曲の側から見れば、ひとつひとつの音色が驚くほど明るく、シンセも打ち込みのキックも前へ前へと転がっていく設計だ。重さで踊らせるのではなく、軽さで踊らせる。ここに賭けた一曲だと感じる。

m.c.A・T名義の作詞と、富樫明生としての作曲・編曲。デビューから初期数年間、DA PUMPの音を全面的に設計してきた人物で、その手つきが本作でも徹底している。ループするキャッチーなフレーズ、シンプルで覚えやすい構造、サビへ向かう助走の取り方。手数を増やすよりも、ひとつのグルーヴを純度高く磨くことに振り切っている。

ダンス&ボーカルというフォーマットは、ともすればトラックの強さで押し切ろうとして、聴き手を置き去りにすることがある。本作はそうならない。ビートが推進力で、ボーカルが景色を描く。この役割分担をきれいに守りながら、両者が同じ温度で前へ走っていく。

だからずっと、聴き手の気持ちが下がる場所がない。トラックが歌を呑み込むことも、歌がトラックを置き去りにすることもない。両輪のテンポがぴたりと噛み合い、そのまま最後まで失速せずに走り抜けてしまう。聴き終えて時計を見ると、思っていたよりずっと短く感じる。

技巧ではなく視界を広げる高音

そのビートの上で、最終的に多幸感を仕上げるのはISSAの声だ。低くも歌える人が、ここではあえてまっすぐ伸びる高音を選ぶ。サビで一気に持ち上がる瞬間、声の芯が一切ぶれない。歌唱の技巧をひけらかす種類の高音ではなく、空に開けた窓から外を見るような、視界が広がる高音である。

本作はラップを前面に押し出すよりも、歌そのものを真ん中に置いている。この選択が効いた。ヒップホップの匂いを土台に残しつつ、サビでは思いきり開けたメロディに身を委ねる。ヒップホップとダンスポップ、その二つの世界の境目を埋めるような声の運び方だ。ISSAが当たり前に出すあの高音があるから、トラックの軽さが空虚にならず、確かな温度を伴って届く。

聴き終えてから残るのは、フレーズの細部ではなく「あの跳ねている感じ」のほうである。歌い手の身体性が音に滲んでいる証だと聴き手に映る。歌詞のどこが響いたか、どんな比喩が使われていたか、そういう細部はあとから思い出そうとしてもなかなか出てこない。それでも身体は覚えている。サビの抜け方、息の継ぎ方、声がふっと高くなる瞬間の昂揚。記憶は耳ではなく筋肉のほうに残るのだと、本作は教えてくれる。

CMの尺を食い破ったサビの強さ

そして、この曲を語るとき避けて通れないのが、サントリー『C.C.レモン』のCMだ。冷たい炭酸の弾けるシュワっという音と、跳ねるダンスビート。同じ周波数で鳴っているような相性で、テレビからこの曲が流れるたび、画面の中の黄色いボトルまで一緒に踊って見えた。

CMタイアップという仕事は、本来なら曲のサイズを縮めかねない仕事である。15秒・30秒の尺に閉じ込められ、商品の印象に飲み込まれて、楽曲としての記憶が薄れていく曲も少なくない。だがこの曲はそうならなかった。CMの景色を借りながら、CMを超えていった。理由はおそらく単純で、サビの強さがCMの尺を食い破るくらい良かった、ということに尽きる。

ちょうど世紀末の入り口、街は新しい夏のヒット曲を求めていた。そこに4人が、伸びやかな声と跳ねるビートで切り込んでくる。当時の彼らの上昇気流は、こうした一曲一曲の手応えの積み上げで作られていたのだと、いま振り返ると腑に落ちる。CMから流れ込む15秒に惹かれて、続きが聴きたくてフルコーラスを探す。あの順番でこの曲と出会った人は、相当な数にのぼるはずだ。タイアップが楽曲を縮めるのではなく、楽曲がタイアップの外へ連れ出していった例である。

頭より先に肩が揺れている

懐かしいから聴くのではなく、聴いたら勝手に身体が動いてしまう曲が、世の中にはある。これはそのうちの一曲だ。頭で「いい曲だ」と判定する前に、肩が小さく揺れて、つま先が床を一度叩く。理屈より先に身体が反応する。

ダンス&ボーカルというジャンルが本当に得意なのは、こういう瞬間を作ることなのだろうと、本作を聴き直すたびに感じる。難しい意味を背負わせず、ただ跳ねること、ただ気持ちよく歌うこと、ただ夏に窓を開けること。その全部を一曲に閉じ込めて、27年後の今もきちんと開け放ってくれる。

あの炭酸の音みたいに、聴くたびに、ちゃんと弾ける。27年という時間も、この曲の前ではほとんど意味を持たないように見える。


※この記事は執筆時点の情報に基づいています。

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