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トントン拍子で築いたキャリアじゃない。日曜劇場からNHKドラマまで引っ張りだこの「若手俳優」とは

  • 2026.7.1
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2022年9月、縦型ドラマ『トップギフト』完成報告イベントに出席した菅生新樹(C)SANKEI

俳優の世界で「いい人の役」は、地味な仕事と見られがちだ。派手な悪役や癖のある変人のほうが、見せ場を作りやすい。それでも、座組の真ん中にどうしても置きたい役柄がある。場の空気をまっすぐに保ち、観る側が感情を預けられる「素朴な善人」だ。菅生新樹は、デビューから数年でその位置を任され続けている。

派手な変身ではなく、共同体の中心にすっと立てる体温。この俳優の歩みを並べていくと、そういう信頼の積み方が浮かび上がってくる。

出発点は陰のある息子だった

菅生のキャリアは、2022年フジテレビ系『初恋の悪魔』の雪松弓弦役から始まっている。坂元裕二脚本のオリジナル群像サスペンスで、伊藤英明演じる警察署署長・雪松鳴人の息子という役どころだった。

物語の周縁で陰を引き受ける役だ。視聴者考察の的になるほどの含みを持たされた青年を、新人らしい力みのなさで運んだ。

ここで興味深いのは、振られた最初の役が「素朴な善人」ではなかったことだ。陰を任せても崩れない芯がある、と現場が見たうえで、翌年から別方向の起用が一気に始まる。出発点が陰だったからこそ、その後の善人配役の意味も浮き上がる。

考察型の主役で芯を試される

2023年、カンテレ・フジテレビ系の深夜枠『凋落ゲーム』で、菅生は連続ドラマ初主演を任された。SNSで成り上がったインフルエンサー起業家が、不可解なゲームに巻き込まれていく考察型のドラマだ。表の顔と裏の顔を行き来する若者を、視聴者の解釈に晒される位置で運ぶ仕事だった。

俳優として本格的に動き始めて間もない時期に、深夜枠とはいえ連続ドラマの主役を委ねる判断は軽くない。考察型の主役は、芯がぶれた瞬間にドラマ全体の輪郭が崩れる役どころでもある。それでも放送中、主役の温度はぶれずに最後まで届いた。

派手な見せ場で目立つというより、視聴者がそこへ感情を置ける場を保ち続ける。次に来る仕事の任され方を呼び込む、地ならしの一本となった。

弱小野球部の真ん中に置かれる

同じ2023年の秋、TBS系日曜劇場『下剋上球児』で菅生に振られたのは、弱小野球部のキャプテン・日沖誠だった。鈴木亮平演じる新任監督が、廃部寸前の野球部を立て直していく高校野球ドラマだ。中心に置かれるのは、その野球部をまとめるキャプテンである。

注目したいのは、菅生自身は野球未経験者だったということだ。技術で押し切れる仕事ではない。それでも初回が放送された段階から、SNSではキャプテン役への支持が広がり、菅生のブレーク作と位置づけられた。

野球を知り尽くした俳優を当てるのではなく、座組の真ん中に置いて違和感の出ない素朴さを採る。日曜劇場の球児ものという王道枠で、その判断が成立してしまうところに、この俳優の独特な使われ方が見える。

派手な感情表現で目を引くのではなく、いるだけで場がまとまる種類の存在感。仕事の性質が、ここで一段はっきりした。

朝ドラのヒロインの隣に立つ

2024年後期、NHK連続テレビ小説『おむすび』で、菅生は古賀陽太役を任される。橋本環奈演じるヒロイン結の幼なじみで、地元の高校野球部員という設定の青年だ。物語の中で結の家にも家族同然に出入りし、半年走り切る朝ドラの輪の内側に置かれた。

『おむすび』の若手枠は、過去最大規模のオーディションを経て選ばれた数人のひとりに菅生が残ったことでも語られる。

朝ドラのヒロインの隣に置く幼なじみは、目立つ役ではない。むしろヒロインの感情の流れを邪魔せず、重い場面では場の温度を和らげる方向に作用する役どころだ。芝居の派手さよりも、画面に映ったときに観る側が安心して目を預けられる素朴さが必要になる。

『下剋上球児』のキャプテンと『おむすび』の幼なじみ。一見まったく違う設定だが、現場が菅生に頼んでいる仕事は同じ方向を向いている。共同体の真ん中にいて、場をまっすぐに保つこと。配役の系譜が、ここで二本の線でくっきり繋がった。

地域医療の現場で線が伸びる

そして2026年6月からNHK BSで放送が始まる『勿忘草の咲く町で〜安曇野診療記〜』で、菅生は桂正太郎役を任される。夏川草介の小説を原作とするヒューマンドラマで、福本莉子が主演を務める。舞台は信州安曇野の総合病院、地域医療と終末期医療を正面から扱う重い枠の作品だ。

桂正太郎は東京の生花店の出身で、病院に研修医として赴任する青年。終末期の患者と向き合う現場で揉まれていく。花を愛する不器用な研修医、という役どころそのものが、これまでの配役の延長線上にぴたりと収まる。

医療ドラマの研修医は、患者の重い物語を観る側に橋渡しする役どころだ。技巧で押し出すと現場が嘘っぽくなり、軽くしすぎると患者の哀しみが届かなくなる。素朴さで場を保てる俳優を中心に置きたい、と現場が判断したときに呼ばれる位置である。

野球部のキャプテン、朝ドラの幼なじみ、そして地域医療の研修医。並べると、現場が菅生新樹に渡してきた仕事は、いずれも共同体の核に置かれる素朴な善人だ。陰の役で始まったキャリアが、ここまで一本の太い線で繋がってきた。

派手な変身で売る同世代とは別の積み上げ方をしてきた俳優の仕事は、いま、信頼できる太さを得ている。次に渡される役柄も、おそらくこの線の上にある。


※記事は執筆時点の情報です

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