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9歳で“子役デビュー”→話題作に引っ張りだこの「努力の男」“動かない芝居”で魅せる「変幻自在な怪物俳優」

  • 2026.6.27
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2023年4月、テレビ朝日系ドラマ『月読くんの禁断お夜食』の制作発表に出席した萩原利久(C)SANKEI

俳優の振れ幅は、たいてい「いまの自分から、どこまで遠い役を引き受けたか」で語られる。萩原利久の振れ幅は、そこに長い時間が一段挟まる。

9歳になる年にテレビの画面に立ってから18年。バラエティの子役、ニュース番組の常連、青年期の助演、20代の主演、新人賞の男優、声優初挑戦、NHKドラマ。役が遠くまで広がる前に、まず人前にいる時間が縦に積まれていた。その縦の長さがあるから、いまの横の振れ幅が空中分解せずにいる。長年積み重ねてきた地層に立つ男。それが、萩原利久だ。

いつもテレビの画面の中にいた

萩原のキャリアは、子役デビューがそのまま画面の常連につながる。2008年、特撮ドラマ『トミカヒーロー レスキューフォース』(テレビ東京系)で子役デビュー。翌2009年、フジテレビ系『めちゃ×2イケてるッ!』では「オカレモンJr.」、さらに2010年にはNHK総合『週刊こどもニュース』で次男・りく。フィクションも、バラエティも、報道番組も、子役の身体ひとつで横断している。

2012年、TBS系『運命の人』で、本木雅弘演じる主人公の青年期を任された。子役期の延長線上で、もう大人の俳優の若年期パートを背負わされている。9歳から13歳までの数年で、特撮、バラエティ、報道、連ドラの単発SPを行き来した子役は多くない。画面に長く居続けるための基礎体力は、この時期にできた。

10代後半、助演の枠で芝居を覚える

2017年、萩原は映画『3月のライオン』に幸田歩役で出演する。神木隆之介演じる主人公・桐山零の義家族の一人だ。幸田歩は、主人公にとって心理的に複雑な相手として置かれる役どころで、台詞よりも視線や距離感で人物を立ち上げる必要がある。

声を張る場面は少ない。それでも観客の側に「この少年がいることで桐山零の物語が動く」と感じさせる芝居を、萩原はためなく成立させた。子役期にバラエティから報道番組までで身体に染み込ませた、画面の中での息のしかたが、ここで演技の文脈に転用された段である。

同じ2017年、萩原は映画『帝一の國』『あゝ、荒野』などの話題作をはじめ多数のドラマにも出演している。10代後半で、青春群像、文学的青年映画、社会派学園ドラマと、まったく違う温度の現場をくぐった。芝居を覚える時期に、ひとつのジャンルに囲い込まれずに済んでいる。

20代、主演の名前が列に立ち上がる

2021年、TBS系『美しい彼』で平良一成役にあたる。八木勇征と並ぶ主演で、原作は凪良ゆうの同名小説。

平良の役どころは、吃音を抱え、教室の最下層に置かれた内向的な高校生だ。台詞で説明しない芝居が、最初から最後まで続く。視線、息のため方、口数の少なさ、語尾の崩れ方。動かない芝居で人物を立ち上げる仕事は、子役期から青年期までを画面の中で重ねてきた人間でなければ間延びする。萩原はそれを間延びさせなかった。シーズン2(2023)、劇場版『〜eternal〜』(2023)と続き、20代の代表作のひとつとして残る。

同時期に、映画『花束みたいな恋をした』(2021)の後輩社員・小村勝利、『キングダム 運命の炎』(2023)・『大将軍の帰還』(2024)の軍師見習い・蒙毅、『朽ちないサクラ』(2024)の若手刑事・磯川俊一。主演で内側に閉じる役、助演で群像の一角を担う役。二つの異なる芝居の作り方が、同年内に並走するようになった。子役期に身につけた画面での息のしかたが、ここで主演と助演という二つの呼吸へ枝分かれする。

受賞は主演の側からやってきた

2025年、第17回TAMA映画賞 最優秀新進男優賞を受賞。萩原の2本の主演作が映画『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(大九明子監督)の小西徹役と、映画『世界征服やめた』(北村匠海初監督作)の彼方役で評価された。

どちらも、内向的な人物が主人公の話だ。小西は誰にも言えない感情を抱えた青年、彼方は世界に倦んだ会社員。萩原は『美しい彼』以降、画面の中で動かない人物を成立させる芝居の手数を、主演線で続けて積んできた。受賞のかたちは、その手数の延長線上に置かれている。

同年、NHKドラマ『リラの花咲くけものみち』では、山田杏奈単独主演作で鳥好きの北農大生・久保残雪役を演じる。受賞の派手さの隣で、共演の仕事を引き続き請け負う位置にいる。

声と画面の両側に立つ年

2026年、萩原は声と画面の両方に同時に立っている。劇場アニメ『花緑青が明ける日に』で、失踪した父に代わって花火完成を目指す若き花火師・帯刀敬太郎を演じる。古川琴音とともに主演で、アニメ声優初挑戦である。声優の仕事は、子役期から積んできた画面の身体を一度脇に置き、声だけで人物を立てる別種の作業だ。

それと並行して、NHKドラマ『リラの花咲くけものみち2』で続投。フジテレビ系『サバ缶、宇宙へ行く』では北村匠海主演作のJAXAチーム員・奥山亨。10月には話題『RYUJI 竜二』の公開が控えている。

声の仕事、主演、助演という三つの仕事を、ひとつの身体で並走できているのは、9歳から積んできた長い時間に裏打ちされた基礎体力があるからだ。長年積み重ねてきた地層が、ここでもう一度効いている。

次にこの人がどの仕事に呼ばれるのか。地層の厚みのぶん、まだしばらく先まで楽しみがある。


※記事は執筆時点の情報です

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