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売れ線じゃない。でもそこがいい|ホンダ4ストトレールの隠れ名車たち

  • 2026.5.24

編集長様からリクエストをいただいたので、ホンダ4ストトレールをやることに。まあXL250S→XL250R→XLX250R→XLR250R各種……と進むのがお定まりコース。でも生まれついてのアマノジャクな私としては、それじゃおもしろくない。だから今回は、体裁のために入れたMD30以外、あまり陽が当たらなかった“道脇のマリーゴールド”的モデルたちを集めてみやした。

TEXT/F.Hamaya 濱矢文夫

1969 HONDA SL90

CBナナハンの影に隠れた素敵なトレール

1969年といえば、世界を震撼させた4気筒CB750Fourが発売された年。世界中のバイクメディアやライダーたちの話題を独占した。初年度のK0型は、スロットルが1本引きワイヤーで重いし、サイドカバーが横に張り出していて短足にはつらいし、最初期型はクランクケースが砂型鋳造。でも今や目玉が飛び出るほどのプレミア価格である。

1969 HONDA SL90
1969 HONDA SL90

そんな大権現様みたいなCBナナハンの影に隠れて、こんな素敵なトレールが発売されていたのですよ。もう、タイプど真ん中の地下アイドルに出会った気持ちになることでしょう。うんうん、チェキ撮影にもお金を払いますとも。

エンジンはCL90ベースのOHCで8馬力。フレームは「そこまで必要ある?」と言いたくなるダブルクレードル。オフ車なのにレッグシールド付きという不思議なスタイルもリビドーを刺激する。さらに、燃料タンクがフレームを抱き込む形状ではなく、“上に載っかっている”感じなのも妙に落ち着かなくてたまらない。

1970 HONDA SL175

ニーゴーとは違うのだよ、ニーゴーとは。

CLシリーズが、いわゆるスクランブラー。そして、さらにオフロード寄りへ振ったのがSLシリーズだ。

SLといえば、北米でホンダ初のXL、XL250として販売された空冷4スト単気筒のSL250Sが有名。しかし、それより前に存在していた同排気量クラスのトレールが、このSL175である。

しかもエンジンは、なんと空冷並列2気筒!

1970 HONDA SL175
1970 HONDA SL175

フロント19インチ、リア18インチを採用し、前後サスペンションストロークは153mm。2気筒だからさぞ重かろう……と思いきや、乾燥重量116kg、車両重量125kg。単気筒なのに、もっと重い250トレールもありますからね──おや、誰か来たようだ。

軽二輪トレールといえば単気筒オンリーになった近年からすると、174ccの2気筒でオフロードを走れるなんて、もうワクワクしかない。

しかも兄貴分として、同時期にはSL350も存在。こちらも2気筒である。

ちなみにSL175は“ベンリイ”、SL350は“ドリーム”ブランド。この棲み分けがまたよく分からない。ブリの前がワラサやハマチみたいなものだろうか。

個人的には、「いしかわじゅん」と「みうらじゅん」ほどの違いは感じないんだけどね〜。

1982 HONDA XL400R

ニーゴーやゴヒャクじゃないのよ

足のでかいXL250SにはXL500Sがあり、XL250Rにも、日本では販売されなかったもののXL500Rが存在していた。

しかし1975年の運転免許制度改正によって、400ccを境に免許が“中型限定”と“限定なし”へ分けられてしまう。これにより、408ccだったCB400Fourが398ccモデルへ変更されたのは有名な話だ。

しかも当時は、限定解除がめちゃくちゃ難しかった。

私が限定解除を受けたときは52人いて、合格したのは私を含めて2人だけ。「取らせる気ないやろー!」って感じである。半キャップで来ていた人なんて、実地試験の前に「帰れっ!」と言われていたくらいだ。

1982 HONDA XL400R
1982 HONDA XL400R

そんな時代だから、どうせ大型に乗れるならナナハンを選ぶのが普通。単気筒500ccのトレールなんて選ぶのは、よほどのヘンタイ……もとい“よい子”くらいだった。

そこで登場したのが、この400版である。

ただ、250と比べるとエンジンの伸びはかなりモッサリ気味。そのうえ車検もある。お世辞にも大人気だったとは言えず、見事にマイナー街道まっしぐらだった。

『Mr.Boo!』で例えるなら、マイケル・ホイとリッキー・ホイくらい知名度が違う感じだろうか。

……例えが古すぎて伝わらんかな。

1984 HONDA TLR250R

大ヒット祭りの後にもう1度祭りはなかった

トライアル車ではあるけれど、公道走行可能なオフ車はデュアルパーパス、あるいはオン・オフ車に分類されるので、“トレール車”と言ってしまっても問題はない。

1983年に登場した4スト単気筒のTLR200は大ヒットを記録。人気が下火になりかけていたトライアル界を再び盛り上げた。トライアル車とは思えないほど売れたうえ、今でもファンの多い名車である。

その後、競技トライアル車両は2スト化が進み、市販公道モデルの中心も2スト単気筒のTLMシリーズへ移行していく。

それでも、「栄光の4ストトラ車、TLRよ再び!」みたいな企画が立ち上がったのかもしれない。

1984 HONDA TLR250R
1984 HONDA TLR250R

ただ、すでにレーサーレプリカ的存在としてTLMシリーズがある。そこで「じゃあ4ストはどうする?」となり、TLMとの差別化を真剣に考え込んだのだろう。

その結果、競技性よりも汎用性へ振ったのかもね。かもね、そうかもね。

メインタンク4L+シート下サブタンク2Lという凝った構造を採用し、重量バランスを取りつつスリムな車体を実現した……というのが売りだった。

でも正直、「そこまで凝らなくてもよくない?」とも思う。

TLR200ほど伝説的存在にはならなかったけれど、燃費はいいし、林道で遊ぶには十分軽くて楽しいバイクだったと思う。

ただし、分割タンクで採用された、当時としては珍しい燃料ポンプさえ壊れなければ……。

1993 HONDA XLR200R

250と125のいいところどりじゃないか(たぶん)

MD16、MD20、MD22と続いた名車XLR250Rシリーズと、原付二種のXLR125R。その間に存在していたXLR200Rこそ、私的にはもっとも興味をそそられるXLRである。

始動方式は、キックオンリーだったXLR250Rと違い、“魔法のボタン”ことセルスターター付き。

兄弟車のXR250R(ME06)に乗っていたことがあるのだが、今はなき『8Hパワーエンデューロ』で、急坂の深いワダチにハマってエンストしたときの絶望感を、私は今でも時々思い出す。

深すぎるワダチから車体を引っ張り出せない。しかもワダチの側面にキックが当たって踏み下ろせない。さらに後ろから同じラインを登ってきた人の、「早く行けよ」と言わんばかりの視線が刺さる。

1993 HONDA XLR200R
1993 HONDA XLR200R

──セルスタートは神である。

カタログスペック上では車両重量は250とほぼ同じなのに、実際に乗ると明らかに軽快。125より当然トルクもある。

同時期、近い排気量で人気だったセロー225がセル始動化されたのは1995年。つまりXLR200Rのほうが先だった。

もし、これでシート高がもう少し低ければ、セロー225と真っ向勝負できていたかもしれない。

……なのに、この後継モデルがSL230って、振り幅が大きすぎる。

こういう“我が道を行く感じ”、実にホンダらしいのである。

1995 HONDA XR250

RFVCエンジン250ccトレールの花道を飾る

XLR250Rの後継車であり、CRF250Lの前任モデル。それがXR250だ。

競技車両のXR250Rとは別物……とは言われていたものの、「いや、そんなに変わらんやろ」という見方もあったりなんかして。

XLR250Rとの大きな違いは、エンジンがドライサンプ化されたこと。オイルパンを小型化できるため最低地上高アップにも貢献していて──

XLR最終型:285mm
XR250:280mm

……減っとるやないか〜い。

とはいえ、エンジンコンパクト化によるマス集中化が進んだのは確かで、実際の運動性能はかなり洗練されていた。

1995 HONDA XR250
1995 HONDA XR250

このMD30型は、当初は正立フォーク仕様として登場。2003年のマイナーチェンジで倒立フォーク化されている。

角パイプを採用したフレームも新設計。そして何より大きかったのが、セルスターター装備だ。

やっぱりオフ車はセルがあると世界が違う。

個人的には、排ガス浄化システムなどが付かない初期の正立フォークモデルが好み。軽さというか、シンプルさというか、“素のXR感”が濃い気がする。

ちなみに、このマイナー異種格闘技戦の中では、唯一の王道モデルである。

本当はEZ-9も入れようと思っていたんだけど、写真がなかったんだよね。

1995 HONDA Degree

ひっそりと改名してイメチェン

多くの人が、歴史の授業などでフランシスコ・ザビエルの肖像画を見たことがあるだろう(大分銘菓『ざびえる』は美味しい)。

その肖像画で、ザビエルさんの頭頂部が丸く剃り上げられた妙な髪型をしていることに気づいただろうか。ちなみに、あの髪型は“トンスラ”という。トンズラーではない。

それと同じで、XL Degreeとして発売されながら、マイナーチェンジでひっそり車名から「XL」が消え、Degreeだけになっていたことに気づいていた人は意外と少ない。

顔つきが変わり、リアブレーキがディスク化されたのは分かりやすかった。だが、名前まで変わっていたとは。

1995 HONDA Degree
1995 HONDA Degree

もっとも、本質はほとんど変わっていないので、惣流・アスカ・ラングレーが式波・アスカ・ラングレーになったくらいの話かもしれない。

発売当時は、2ストで高い戦闘力を誇るCRM250Rがあり、高性能4ストとしてXLR250Rも存在していた。

そこでDegreeは、“もっと扱いやすいランドスポーツ”という立ち位置で登場する。

……「マウンテントレール」と言ってしまうとセローの領域になっちゃうからね。

水冷エンジンはAX-1譲り。セロー225との間にはジェリコの壁レベルの人気差があったけれど、実際はかなり良いバイクだったと思う。

2005 HONDA XR230

目立たなかったけれどビギナーにはもってこいだった

みなさん、お忘れではありませんか。XR230もありましたよ。

フロントマスクは、当時の市販エンデューロレーサーCRF250Xと同系統デザイン。いかにも戦闘力が高そうな顔つきなのに、リアまわりはスッキリしていて、どこか“ウナギイヌ感”のあるスタイルが実にブリリアントだった。

SL230の後継モデルという立ち位置から分かるように、これもセロー市場をかなり意識したモデルだったと思う。

シート高は800mmで、セロー225WEより指1本分低い。

2005 HONDA XR230
2005 HONDA XR230

さらに面白いのが発売タイミングだ。

XR230はセロー225シリーズと同じ223ccで、2005年3月25日に発売。そして約1週間後の4月1日、セローは250cc化される。

当時は「一歩先を行かれたなぁ……」なんて思ったものだけれど、今振り返ると、そこまで単純な話でもなかった気がする。

ちなみに価格は、セロー250より約5万円安かった。

なかなか魅力的だったんだけどねぇ。

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