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古代集落の暮らしを再解釈。建築ユニット「アアティズモ」が手掛けた鎌倉の家

  • 2026.5.20
Hirotaka Hashimoto

建築家夫妻が陶芸家である両親と暮らすために設計した「ハニヤスの家」。創作と制作を共にする空間のイメージ源となったのは、いにしえの集落の暮らしだった。『エル・デコ』4月号より。

Hirotaka Hashimoto

時にこもり、時に集う。ライフスタイルに合う家に

建築家の桝永絵理子さん、海老塚啓太さんと工業デザイナーの中森大樹さんによるアアティズモは、プロダクト、建築、アートといった分野の垣根を越えた活動で注目を集めるデザインユニットだ。海老塚さんはユニット名の由来をこう語る。

「Art And Technologyの頭文字を取って名付けました。今でこそアートとテクノロジーは真逆のものに感じると思うんですけど、実は古代ギリシャ語のTechné(テクネ、技術知)が古代ローマ時代にラテン語へ翻訳された際にars(アルス)となったもので、本来同じ言葉を指していた。僕らはその2つの単語が一緒だった時のように物事を考えたい」。彼らの思いは今回の「ハニヤスの家」にも反映されている。

<写真>かまくらの壁は、敷地の土と父親の作陶作業で余った土を混ぜ、左官で仕上げた。鉄や銅の金属粉を混ぜたものを幾層にも流し掛け錆化させることで焼き物のような表情に。

Hirotaka Hashimoto

住み手は桝永さんと海老塚さん夫婦と、桝永さんの両親の4人。建物は陶芸家である両親が暮らしていた築58年の木造平屋だ。状態は悪くなかったが細かく壁で仕切られ部屋に光があまり届かず、また一部傷みが激しい部分もあり、耐震面の補強も必要だと感じていた。加えてポイントとなったのは家族の制作スタイルだ。

<写真>玄関側から見た室内。既存の壁や天井をなくし、大きな開口部を設けることで、自然光に満ちた開放感あふれる空間になっている。

Hirotaka Hashimoto

「両親も私たちも部屋にこもって集中して作業する仕事なので、自分の世界に没頭できる個室と、集まって話せる共有スペースの両方があるのがいい。創作と生活が分け隔てなく共にあった昔の集落のような住まいが思い浮かびました」と桝永さん。

そこで既存の壁や天井を取り払ってオープンな一室空間をつくり、四隅に個室を増築。個室は崖に囲まれた山ひだ状の場所に立つ敷地環境から地面が隆起したような印象的な表情に仕上げた。まるで焼き物のような独特な見た目に思わず目がいくが、建物の構造を強化するという建築的な役割も果たしている。

<写真>仕事場を兼ねた桝永さん、海老塚さんの個室。

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「建築だけど、建築だけじゃない。工芸やプロダクトデザインといった多様な要素を盛り込みたいと思った」と海老塚さん。照明スイッチを組み込んだ靴箱を造作したり、穴が大きくて市場に出せない大谷石の穴を色のついた樹脂で埋め玄関の床材に使ったり。独創性あふれるディテールが家の魅力を高めている。「時代を経ても残り続けるものの美しさやその理由を探りたい」と桝永さんは話す。

どんなに時代が変わっても、人の手が何かを生み出し続けることに変わりはない。創作と生活が等しくあるこの家には「住まうこと」の原風景と、豊かさのヒントが詰まっている。

<写真>キッチンを見る。ダイニング上の照明は彼らがミラノサローネで発表し、ルミナ社から製品化された。

Hirotaka Hashimoto

<写真>住み手の桝永絵理子さんと海老塚啓太さん、愛犬ネロ。中森大樹さんと3人でアアティズモを共同主宰する。

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<写真>周囲の環境に美しく溶け込む建物外観。裏手に父親の陶芸小屋がある。

【建築データ】
設計/アアティズモ
桝永絵理子+海老塚啓太+中森大樹
敷地面積/544.80㎡
構造/木造
延床面積/132.07㎡
家族構成/夫婦+親世帯夫婦



Hearst Owned

『エル・デコ』2026年4月号



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